第一章 はじまりの光
光が揺れていた。
それが、ぼくの最初の記憶だった。
どこまでも白い世界。
上も下もわからない。
風もない。
音もない。
ただ静かな光だけが漂っている。
その光が少しずつ集まっていた。
小さな粒が集まり、
やがて一つの形になる。
ぼくはその光の中にいた。
温かかった。
まるで何かに包まれているような、
やさしい温度だった。
光はゆっくりと形を作っていく。
小さな手。
小さな足。
小さな身体。
そして最後に。
小さな命。
ほわりと。
ぼくは空中に浮かんだ。
重力というものを知らないぼくは、
ただ静かにそこにいた。
けれど次の瞬間。
光がほどける。
ぼくの身体がゆっくり傾いた。
落ちる。
その意味もわからないまま。
ぼくは下へ向かった。
その時だった。
誰かが両手を差し出した。
ぼくの身体はその腕の中へ収まる。
温かくも冷たくもない。
不思議な感触だった。
ぼくはゆっくり目を開く。
そこにいたのは、
白い髪の人だった。
人、と呼んでいいのかもわからない。
けれど。
ぼくを見つめるその瞳は、
どこか穏やかだった。
その人は静かに言う。
「生命活動、正常」
意味はわからなかった。
けれど不思議と怖くなかった。
その人は続ける。
「誕生を確認しました」
ぼくはその声を聞きながら、
ぼんやりとその顔を見つめる。
きれいだと思った。
なぜそう思ったのかはわからない。
ただ、
そう思った。
ぼくは小さく手を動かした。
偶然だった。
指先がその人の手に触れる。
すると。
その人の指が少しだけ止まった。
ぼくはなんとなく気になって、
その指を握る。
小さな手で。
ぎゅっと。
その人は動かなかった。
しばらくの沈黙のあと。
やがて。
「記録します」
そう呟いた。
ぼくは意味がわからず、
ただその声を聞いていた。
静かな世界だった。
音もない。
風もない。
光だけの世界。
けれど。
なぜだろう。
その腕の中は少しだけ安心した。
その人はぼくを見つめる。
長い時間だったのか。
短い時間だったのか。
ぼくにはわからない。
やがてその人は口を開いた。
「ようこそ」
その言葉の意味も知らない。
けれど。
その声はやさしかった。
だからぼくは。
理由もなく笑った。
光の世界で。
初めて。
小さく。




