吉田さんは箒をもって学校の屋上にいた
魔女が好きなので魔女をテーマに文章を書いてみました。
完結までお付き合いください。
7月中旬、第二中学校屋上。校長先生の育てている夏野菜のトマトとナスがもうすぐ収穫できる状態になっていた。じょろっと赤い像さんの鼻からそれらに水を与える。
佐藤たかしの最近の趣味は、野菜の成長を見届けることだった。
そのために早朝7時に学校に登校して、屋上にいた。
「夏野菜カレーってのは、うまいのだろうか」
中学1年生の同級生たちは、みんなはスマホや流行りの携帯ゲームの話題でいっぱいだ。
残念ながら佐藤家は、スマホや流行りのゲーム機がない。両親はインターネットという言葉とは縁がないらしい。父親は古文書の研究、母親はよくわからない本を読んでいる。
そんな自分は家にいるよりも学校で野菜に水をやり運動するほうが楽しいのだ。
そしてもう一つこの学校での楽しみがある。
吉田きょうかである。
僕は彼女が魔女かもしれないと思っている。
ここ数か月、彼女と出会う度その疑惑が確信に変わりつつある。
「うひゃあああああ」
背中から突風と声が聞こえてきた。
当然声の主は、魔女の容疑者、吉田きょうか(名前の漢字は知らない)だ。
振り返ると登校用の荷物を背負い、竹ぼうきを背負っている吉田さんがいた。
「おはよう! 吉田さん」
「おはよ! えーっと佐藤君!」
元気な挨拶が返ってきた。
名前を覚えてもらえたようだ。嬉しい。
吉田さんは明るくてリアクションが面白くて楽しい。
「なんでほうき持ってるの?」
僕の質問を受けて、驚きの表情とともに固まる吉田さん。
数秒の沈黙。吉田さんは困っている表情になっていた。
僕はこの変な空気感にも慣れてきた。そしていつものセリフを言ってみる。
「あ~、まじょ」
「魔女!?」
「まあ女子だから箒で屋上をきれいにしたかったんだね」
「え? …うん」
「今魔女って言った?」
「いや! 言ってないよ! 気のせい!」
「な~んだ気のせいか」
そんな変なやり取りで今日も一日が始まる。
本物でも本物じゃなくてもいいや。
僕は思う。
吉田さんは魔女かもしれない
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