間話 静かな策謀
黒は、広い。だがまだ、足りない。
黒耀城、最上層。
戦の喧騒も、怒号も、血の匂いも──すべてが一段、下にある。
空間に、光が浮かぶ。
魔界全土を模した戦況図。
地形と勢力を抽象化した”盤面”だった。
黒は広がり、
金は消え、
赤は──まだ燃えている。
レイゼンは玉座に座らない。
盤面の前に立つ。
指先が宙をなぞる。
赤の領域。
ゆっくりと、黒の縁へ触れる。
「……急がぬ」
赤は叛いている。
だが滅ぼす必要はない。
怒りも義も、まだ熱を持っている。
削るのではなく、飲み込む。
そのほうが残る。
盤面の一角が、静かに色を変えた。
黒に近づく。
勝敗ではない。
移動だ。
「順調だ」
独り言。
視線が端へ流れる。
蒼。
紫。
まだ動かぬ点。
触れない。
今は見るだけでいい。
そして──
盤面のさらに外。
名もない、小さな揺らぎ。
印も色も、まだない。
レイゼンは、それを見ない。
見ていないから、干渉しない。
干渉しないから、育つ。
「……よい」
短く息を吐く。
指を引くと、盤面は静止した。
世界は、予定通りに動いている。
まだ──語る段階ではない。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
面白い、続きが気になると思われた方は、ぜひ下にある【☆☆☆☆☆】評価&ブックマークで応援をしていただけると嬉しいです。
感想もお待ちしております!




