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黒狼の航路(ブラックルート) ― 魔王戦記  作者: 一場れい
第1部勇者動乱編

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9/100

間話 静かな策謀

 黒は、広い。だがまだ、足りない。


 黒耀城、最上層。


 戦の喧騒も、怒号も、血の匂いも──すべてが一段、下にある。


 空間に、光が浮かぶ。


 魔界全土を模した戦況図。


 地形と勢力を抽象化した”盤面”だった。


 黒は広がり、

 金は消え、

 赤は──まだ燃えている。


 レイゼンは玉座に座らない。

 盤面の前に立つ。


 指先が宙をなぞる。


 赤の領域。


 ゆっくりと、黒の縁へ触れる。


「……急がぬ」


 赤は叛いている。

 だが滅ぼす必要はない。


 怒りも義も、まだ熱を持っている。


 削るのではなく、飲み込む。


 そのほうが残る。


 盤面の一角が、静かに色を変えた。


 黒に近づく。


 勝敗ではない。

 移動だ。


「順調だ」


 独り言。


 視線が端へ流れる。


 蒼。

 紫。


 まだ動かぬ点。


 触れない。


 今は見るだけでいい。


 そして──


 盤面のさらに外。


 名もない、小さな揺らぎ。


 印も色も、まだない。


 レイゼンは、それを見ない。


 見ていないから、干渉しない。


 干渉しないから、育つ。


「……よい」


 短く息を吐く。


 指を引くと、盤面は静止した。


 世界は、予定通りに動いている。


 まだ──語る段階ではない。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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