間話 双子
ヴァーレス家屋敷
薄暗い石造りの廊。
幼い二人は、向かい合っていた。
黒髪。
金の瞳。
天を衝く黒の角。
鏡だ。
だが、空気は真逆。
レイゼンが先に口を開いた。
「私の方が先に生まれた」
淡々と。
「ゆえに兄だ」
一拍。
「兄と呼べ」
ヴァイレンの眉が吊り上がる。
「はぁー!?」
「むかつく!」
殴りかかる。
迷いのない直線。
拳は速い。
だが──
空を切る。
足元が払われる。
視界が回る。
石床。
「……!?」
何が起きたか分からない。
レイゼンは見下ろしていた。
「弱いやつほど、よく吠える」
静かに。
「怖いんだ」
「違う!」
ヴァイレンが跳ね起きる。
拳を握る。
悔しさが喉まで上がる。
レイゼンは目を細める。
その目は、嘲りではなかった。
観察だ。
「お前は、暴れているだけだ」
「居場所がないからな」
ヴァイレンが一瞬だけ止まる。
言い返せない。
図星だった。
レイゼンは背を向ける。
「ついてこい」
「お前が、お前らしくいられる場所を作る」
歩き出す。
迷いのない足取り。
ヴァイレンは歯を食いしばる。
「待てよ!」
立ち上がる。
走る。
横に並ぶ。
言っていることは分からない。
だが。
殴られなかった。
見下されなかった。
──こいつは味方だ。
他人の形をした、自分だ。
裏切らない。
不思議な感覚だった。
他人だ。
だが
背中合わせの、自分のような存在。
レイゼンは横目で見る。
思う。
(生まれた順が逆なら)
(あれは、私だ)
双子とは思えぬ扱い。
見窄らしい服。
痩せた体。
育ちが違うだけで、ここまで変わる。
腹の奥に、わずかな苛立ちが生まれる。
自分への扱いが悪いような気分。
「遅れるな」
ヴァイレンが鼻を鳴らす。
「置いてくなよ」
二人は並ぶ。
まだぎこちない。
だが歩幅は、同じだった
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