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黒狼の航路(ブラックルート) ― 魔王戦記  作者: 一場れい
第1部勇者動乱編

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間話 双子

 ヴァーレス家屋敷


 薄暗い石造りの廊。


 幼い二人は、向かい合っていた。


 黒髪。

 金の瞳。

 天を衝く黒の角。


 鏡だ。


 だが、空気は真逆。


 レイゼンが先に口を開いた。


「私の方が先に生まれた」


 淡々と。


「ゆえに兄だ」


 一拍。


「兄と呼べ」


 ヴァイレンの眉が吊り上がる。


「はぁー!?」


「むかつく!」


 殴りかかる。


 迷いのない直線。


 拳は速い。


 だが──


 空を切る。


 足元が払われる。


 視界が回る。


 石床。


「……!?」


 何が起きたか分からない。


 レイゼンは見下ろしていた。


「弱いやつほど、よく吠える」


 静かに。


「怖いんだ」


「違う!」


 ヴァイレンが跳ね起きる。


 拳を握る。


 悔しさが喉まで上がる。


 レイゼンは目を細める。


 その目は、嘲りではなかった。


 観察だ。


「お前は、暴れているだけだ」


「居場所がないからな」


 ヴァイレンが一瞬だけ止まる。


 言い返せない。


 図星だった。


 レイゼンは背を向ける。


「ついてこい」


「お前が、お前らしくいられる場所を作る」


 歩き出す。


 迷いのない足取り。


 ヴァイレンは歯を食いしばる。


「待てよ!」


 立ち上がる。


 走る。


 横に並ぶ。


 言っていることは分からない。


 だが。


 殴られなかった。


 見下されなかった。


 ──こいつは味方だ。


 他人の形をした、自分だ。


 裏切らない。





 不思議な感覚だった。


 他人だ。


 だが


 背中合わせの、自分のような存在。


 レイゼンは横目で見る。


 思う。


(生まれた順が逆なら)


(あれは、私だ)


 双子とは思えぬ扱い。


 見窄らしい服。


 痩せた体。


 育ちが違うだけで、ここまで変わる。


 腹の奥に、わずかな苛立ちが生まれる。


 自分への扱いが悪いような気分。


「遅れるな」


 ヴァイレンが鼻を鳴らす。


「置いてくなよ」


 二人は並ぶ。


 まだぎこちない。


 だが歩幅は、同じだった




最後まで読んでくださりありがとうございます。

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