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5 そして、ヴァイレンが面倒見役にされる(不本意)
「ヴァイレン」
名を呼ばれ、肩越しに振り返る。
「……あ?」
「そやつを――食客として迎え入れよ」
一瞬、思考が止まった。
「……は?」
レイゼンは淡々と続ける。
「黒で身柄を預かる。女性武官の宿舎へ案内しろ」
「……おい」
眉間に皺が寄る。
「信用できんのかよ」
「問題ない」
即答だった。
「勇者は裏切れぬ」
「はぁ……?」
意味が分からない、という顔のまま、ヴァイレンは頭を掻いた。
沈黙が落ちる。
「……で」
低く問う。
「なんで俺が面倒見る役なんだ」
レイゼンは迷わない。
「お前は」
一拍。
「優しいからだ」
「は?」
思わず声が跳ねた。
「殺さぬ。だが甘やかさぬ。最適だ」
ヴァイレンは額を押さえる。
「……ふざけんな」
小さく息を吐く。
「女勇者の世話なんて聞いてねぇぞ……」
レイゼンはすでに書類へ視線を戻していた。
決定は、覆らない。
ヴァイレンはしばらくその背を睨み――
やがて、諦めたように肩を落とす。
黒の武官としてではなく、
兄に押し付けられた弟としての顔で。




