表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/60

49.交錯する想い

胸の奥に渦巻く感情を、もう押し殺せなかった。

翌日、翔汰はいつもより早く家を飛び出し、昨日陽咲を見かけた公園へと足を向けた。


――きっと、また来るはずだ。

そう確信していた。根拠なんてなかった。ただ、あのときの陽咲の顔が、まだ頭から離れなかったのだ。

不安げで、でもどこか救われたような笑顔。

自分には見せてくれなかったその表情を思い出すだけで、心臓が張り裂けそうになる。


昼下がりの公園のベンチに腰掛ける陽咲の姿があった。やはり、隣にはあの男――施設関係者らしき人物がいる。

翔汰の足は自然と駆け出していた。

「陽咲!」

突然の声に、二人が同時に振り返る。

陽咲の目が大きく揺れた。

「翔汰……どうしてここに。」

「どうしても、話さなきゃいけないと思った。」

声は震えていたが、視線だけは逸らさなかった。


男が静かに立ち上がる。

「彼が……翔汰くん、かな?」

落ち着いた声音に一瞬たじろぐが、翔汰は負けじと口を開いた。

「すみません。でも、これは俺と陽咲の問題です。」

その一言に、陽咲の肩がびくりと震えた。


「昨日、見たんだ。」

翔汰は息を整えながら続ける。

「……あの人と話してる陽咲を。

 正直、すごく怖かった。

 俺じゃなくても、陽咲を支えられるんじゃないかって。」

吐き出すように言葉が溢れる。

陽咲は唇を噛み、目を逸らした。


「翔汰、違うの。私はただ……」

「分かってる。リハビリが必要なのも、今のままじゃ未来が描けないのも。」

翔汰の声が強くなる。

「でも、だからって俺を置いて行こうとするな!」

その叫びに、陽咲の瞳から涙が零れ落ちた。


「私は……翔汰に迷惑をかけたくないの。」

「迷惑?そんなもんじゃない!」

翔汰は一歩踏み出し、震える陽咲の手を掴んだ。

「一緒に生きたいんだ。

 どんな不安も、痛みも、全部背負ってでも。」


沈黙を破ったのは、男のため息だった。

「……なるほど。二人の覚悟は、本物のようだね。」

静かに鞄を持ち上げ、翔汰に視線を向ける。

「彼女を支えるのは、君の役目だろう。

 私はただ、選択肢を示しただけだ。」

そう言い残して、男は去っていった。


二人きりになった公園で、陽咲は震える声を漏らす。

「どうして……そこまで。」

翔汰は強く手を握り返した。

「決まってる。俺の未来には、陽咲がいるからだ。」

涙に濡れた瞳が、初めて真正面から翔汰を見た。

揺れる想いが、ようやく重なり合う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ