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46.拒絶の声、揺るがぬ想い

夜の誓いから数日後。

私たちは、翔汰の実家のリビングに並んで座っていた。

テーブル越しに向かい合う両親の視線は重い。

母の眉間には深い皺が刻まれ、父は腕を組んだまま黙り込んでいる。

その沈黙が、かえって胸を締めつけた。


「……本当に、この子と一緒に生きていくつもりなの?」

先に口を開いたのは母だった。

声は震えているが、その目は真剣だった。

「はい。」

翔汰の声は力強い。少しも迷いがなく、はっきりとした響きが部屋を満たした。


――その瞬間。

「冗談じゃない!」

父の声が響き、テーブルが揺れるほどに拳が打ち下ろされた。

「お前は将来有望だって、先生からも期待されてるんだぞ!

 なのに、こんな……事故でまともに生活できるかどうかも分からん子と一緒になってどうする!」

胸を鋭く抉られるような言葉だった。

私は声を失い、視線を落とすしかできなかった。

手が震えて、膝の上でぎゅっと握り締める。

「……それは違う。」

翔汰の低い声が静寂を裂いた。

「彼女は、こんな子なんかじゃない。

 俺にとって一番大切な人だ。

 誰に何を言われても、絶対に離れるつもりはない。」

「翔汰!」

母が慌てて声を上げる。

「分かってるの?

 これから先、どれだけ苦労するか。

 支えるのはあなたなのよ!

 まだ若いあなたが、全部背負うなんて……」

「背負いたいから一緒にいるんだ。」

即座に返すその言葉に、母は息を呑んだ。

私はただ震えていた。

翔汰を巻き込みたくない――その想いと、彼に支えられて生きたいという願いが、胸の中で激しくぶつかり合う。


「……ご両親の言うことは、正しいです。」

気づけば、私は小さく口を開いていた。

翔汰が驚いたようにこちらを見た。

私は唇を噛みしめながら続ける。

「私は、事故のせいで……前みたいに歩けなくなった。

 翔汰くんに迷惑をかける未来しか、想像できなくて……。

 だから、無理に一緒にいる必要なんて――」

「違うだろ!」

翔汰の声が鋭く重なった。

肩を掴まれ、強く揺さぶられる。


「お前は迷惑なんかじゃない!

 俺は自分で選んだんだ!

 一緒にいるって!

 だから勝手に諦めるな!」

熱のこもった声。

その必死さが痛いほど伝わって、胸の奥がぐちゃぐちゃになる。


――けれど、父の声は冷たく響いた。

「翔汰、出ていけ。」

一瞬、時間が止まったように感じた。

「今すぐ出て行け。俺たちはその子を認めない。」

母が「あなた……!」と声を上げるが、父は譲らない。

翔汰の拳が震えていた。


「分かった。」

短く吐き捨てるように言うと、私の手を掴んで立ち上がる。

「行こう。」

その声は強く、迷いがなかった。

ただ私の胸だけが、今にも張り裂けそうに痛んでいた。


――私たちは確かに誓い合った。

けれど、その誓いを守るために背負わされる現実は、想像以上に重く、冷酷だった。

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