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45.重なった心、試される未来

涙を拭う暇もなく、ただ互いの言葉に縋るように見つめ合っていた。

街灯の下、夜風は少し冷たいはずなのに、胸の奥が熱くて仕方ない。

「……本当に、そう思ってくれてるの?」

私の声はまだ震えていた。

「当たり前だろ。」

翔汰は迷いなく答えた。

「俺はずっと、お前と一緒に歩きたいって思ってる。だから――逃げんなよ。」


その一言で、また涙がこぼれる。

けれど今度の涙は、後ろめたさや恐怖だけじゃなかった。

心の奥にずっと押し込めていた願いが、ようやく許された気がして……。

「……ありがとう。」

声にならない声で呟く。

翔汰は深く息を吐いて、少しだけ肩の力を抜いた。


「……やっと言ってくれたな。」

照れ隠しのように笑うその顔を見て、胸の奥がじんと温かくなる。

しばらくの間、互いに言葉を探すように沈黙が流れた。

けれど、その静けさが妙に心地よかった。


――だけど。

ふいに胸の奥に影が差す。

私たちは確かに想いを確かめ合った。

でも、現実が急に優しくなるわけじゃない。

「翔汰……私たち、このままでいいのかな。」

口にした瞬間、彼の表情が一瞬だけ強張った。

「……このままって?」

「だって、きっと……周りは簡単に許してくれないよ。

 私のことも、翔汰のことも……。

 二人でいること自体、反対されるかもしれない。」

声に出すと、改めてその不安が自分自身を締めつけていく。

両親の顔。世間の目。未来への不安。

全部が重くのしかかってきて、息苦しくなる。


翔汰は黙って私を見ていた。

その沈黙が怖くて、思わず視線を逸らそうとした時。

「……だからこそ、一緒にいるんだろ。」

不意に返ってきた言葉に、心が震えた。

翔汰は真剣な目で続ける。

「周りが何を言っても関係ない。俺たちが決めるんだ。

 俺はお前と歩くって。

 たとえ誰が反対したって、俺は絶対に離れない。」


強い声。それは約束なんて軽い言葉じゃなく、誓いそのものだった。

胸の奥がぎゅっと締めつけられ、同時に温かさで満たされていく。

こんなにも真っ直ぐに、強く想ってくれる人が隣にいる。

その事実が、何よりも救いだった。


「……分かった。」

涙声で頷きながら、微笑む。

「じゃあ、私も絶対に逃げない。翔汰と一緒にいる」

翔汰の表情が緩み、次の瞬間、ふっと笑った。

それは少し子どもみたいに不器用で、でも心の底から安堵している笑顔だった。


――本音をぶつけ合った夜。

私たちはようやく同じ未来を見つめ始めた。

けれど、その未来はまだ険しい道の先にある。

家族の理解も、周りの視線も、乗り越えなければならない壁は数え切れない。

その夜、二人の心に宿った決意だけは確かだった。


「一緒に、乗り越えよう。」

言葉にしなくても、互いにそう誓い合っていた。

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