44.本音の衝突
街灯の下、互いに立ち尽くす。
ぎこちない沈黙が、思った以上に重く心にのしかかってくる。
「……偶然だな。」
翔汰の声は低く、抑えているのに震えが混じっていた。
「……うん。」
私は小さく答えたけれど、それ以上言葉が続かなかった。
けれど、次の瞬間。その沈黙を翔汰が切り裂いた。
「俺、もう限界かもしれない。」
「え……?」
思わず息が止まる。
その言葉が何を意味しているのか、理解するよりも先に胸がざわついた。
「最近さ……お前と話してても、本当の気持ちが見えないんだ。」
翔汰の声は真っ直ぐだった。
「俺のことを気遣ってるのは分かる。
けど、そればっかりで……お前が本当にどうしたいのか、俺には伝わってこない。」
「……私は、翔汰に迷惑かけたくないだけだよ。」
気づけば声が震えていた。
「私のせいで、翔汰の夢が壊れるのは嫌なの。
だから……」
「だから、俺を遠ざけようとしたんだろ。」
彼の言葉は鋭くて、でも泣き出しそうなほど必死だった。
「違う!私は……私は翔汰を守りたくて……」
「守りたいなら、俺に背を向けるなよ!」
声が響いた。
街灯に照らされた彼の目には、怒りよりも痛みの色が宿っていた。
「俺は……お前と一緒にいたいんだよ。」
翔汰の声が少し掠れる。
「夢がどうとか、将来がどうとか……全部大事だけど、それより一番大事なのはお前なんだ。
お前がいない未来なんて、考えられない。」
涙が視界を滲ませ、言葉が喉に詰まった。
「……でも、私……」
「いい加減にしてくれ!」
翔汰が一歩踏み出す。
その距離が一気に縮まって、私は息を呑んだ。
「お前が勝手に決めるなよ。
俺の人生に“お前が必要かどうか”を決めるのは俺だ。」
心が揺れる。翔汰の言葉が、痛いくらいに真っ直ぐ届く。
「……ごめん。」
小さく呟くと、涙が頬を伝った。
翔汰はその涙を見ても、手を伸ばすことなく、ただ強く見つめていた。
その目に宿るのは、迷いを吹き飛ばした決意の色。
そして私もまた、その視線から逃げることができなかった。
――ここから逃げたら、もう二度と本音を伝えられない。
そう悟った瞬間、心の奥から言葉がこぼれ落ちた。
「私も……翔汰と一緒にいたい。」
その声は涙に震えていたけれど、確かに本音だった。
街灯の下で二人の心がぶつかり合った衝突の先に、ようやく「同じ未来を望んでいる」という一点が見えた。
けれど、それは同時に新しい試練への始まりでもあった。




