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30/60

30.踏み込めない葛藤

翔汰は布団に横たわりながら、真っ暗な天井をじっと見ていた。

眠気なんてとうの昔に消えていて、ただ考えることをやめられない。


枕元に置いたスマホが小さく光っている。

新しい通知は来ていない。

それでも無意識に手を伸ばし、画面を開いてしまう。


メッセージ欄には、何度も書いては消した言葉が並んでいた。

「会いたい」

「声が聞きたい」

「大丈夫?」

結局、どれも送れなかった。


あの日、事故のあとで彼女の前に立ち続けると決めたのに。

なのに、どうして俺は、ただの一言すら届けられないんだろう。

陽咲の気持ちを思えば思うほど、軽々しく踏み込めない。

彼女の苦しみも、痛みも、全部分かってやれるはずなのに。

いや、分かった気になってるだけで、結局は俺も臆病なんだ。


深いため息をひとつ吐いて、スマホを抱きしめる。

すると、不思議なことに少しだけ彼女が近くにいる気がした。

「……おやすみ。」

暗闇に溶けていく声は、届かないと分かっている。

それでも、言わずにはいられなかった。


同じ夜空の下で、彼女も同じように眠れずにいるんじゃないか――そんな淡い期待に縋りながら、俺はまた目を閉じた。

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