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30.踏み込めない葛藤
翔汰は布団に横たわりながら、真っ暗な天井をじっと見ていた。
眠気なんてとうの昔に消えていて、ただ考えることをやめられない。
枕元に置いたスマホが小さく光っている。
新しい通知は来ていない。
それでも無意識に手を伸ばし、画面を開いてしまう。
メッセージ欄には、何度も書いては消した言葉が並んでいた。
「会いたい」
「声が聞きたい」
「大丈夫?」
結局、どれも送れなかった。
あの日、事故のあとで彼女の前に立ち続けると決めたのに。
なのに、どうして俺は、ただの一言すら届けられないんだろう。
陽咲の気持ちを思えば思うほど、軽々しく踏み込めない。
彼女の苦しみも、痛みも、全部分かってやれるはずなのに。
いや、分かった気になってるだけで、結局は俺も臆病なんだ。
深いため息をひとつ吐いて、スマホを抱きしめる。
すると、不思議なことに少しだけ彼女が近くにいる気がした。
「……おやすみ。」
暗闇に溶けていく声は、届かないと分かっている。
それでも、言わずにはいられなかった。
同じ夜空の下で、彼女も同じように眠れずにいるんじゃないか――そんな淡い期待に縋りながら、俺はまた目を閉じた。




