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29.届かない気持ち
ベッドに横たわり、真っ暗な天井をぼんやりと見つめる。
窓の外からは夜風に揺れる木々のざわめきがかすかに届くけれど、それすら遠い。
私はゆっくりとスマホを手に取り、画面を点けた。
ほんの一瞬だけ、明かりが部屋を照らす。
その小さな光に胸の奥が締めつけられる。
翔汰の名前が並んだメッセージアプリの通知欄。
けれど、そこには「既読」が並ぶだけ。
送られた短い文を読み返すたび、息が詰まる。
本当は私からだって言葉を届けたいのに。
会いたいのに。
声が聞きたいのに。
――どうして、できないんだろう。
スマホを抱きしめると、胸の奥に空洞が広がっていく。
あの日、事故のあとで彼の前に立てなくなった自分。
弱さを隠すために「平気なふり」を選んでしまった自分。
その全てが、翔汰との距離を広げてしまった。
もし彼が今も私を待ってくれているなら――。
もしまだ、同じ未来を見てくれているなら――。
答えは怖いほど単純なのに、言葉にはできなかった。
スマホの画面が暗転し、闇が戻る。
その一瞬で、胸の中の切なさがさらに濃くなった。
「……おやすみ。」
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からない声が漏れた。
それでも私は、明日もまた同じように翔汰を思いながら夜を越えていく。
もちろん、届かない気持ちを胸に抱いたままで。




