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13.選択の扉

進路指導室の前に立つと、翔汰の胸の奥に重たい塊が沈んでいた。

ドアを開ければ、先生から「将来どうするんだ?」と問われるのはわかっている。

その答えを、自分自身がまだ持てていないことが苦しかった。

「どうだった?」

放課後、校門で待っていた陽咲が駆け寄ってきた。

「うーん……。」

翔汰は曖昧に笑う。

「プログラミング系の専門学校か、介護福祉士のコースかって、先生に言われた。」

自分でも驚くくらい、声が小さかった。

陽咲はしばらく黙り込んで、それから柔らかく口を開いた。

「どっちを選んでも、翔汰が翔汰であることには変わりないよ。」

その言葉は優しい。けれど、心の奥に残る迷いを消すには十分ではなかった。


その夜、机に向かっても、参考書の文字は頭に入ってこない。

パソコンの画面に映るプログラムのコードを眺めていると、心は昔の夢へと引き戻される。

「やっぱり俺は、これが好きなんだよな……。」

だが、その直後、脳裏をよぎるのは陽咲の姿だった。

事故の後、懸命にリハビリに励む彼女。

「支えになりたい」と思ったあの日の気持ちが、夢と同じくらい強く存在している。

「……どうすりゃいいんだよ。」

翔汰は頭を抱え、深いため息をついた。


一方、陽咲もまた揺れていた。

自分の存在が翔汰の夢を変えてしまうのではないか。

それは喜びであると同時に、重荷のようでもあった。

「もし私のせいで、翔汰が本当にやりたかったことを諦めるなら……。」

そう思うと、胸の奥が痛んだ。


――私は彼の未来を奪いたいんじゃない。

ただ、一緒に歩みたいだけなのに。


数日後、二人は近所の公園のベンチに並んで座っていた。

春の風が柔らかく頬を撫でる。

沈黙を破ったのは翔汰だった。

「なぁ……もし俺がプログラマーの道を選んだら、どう思う?」

陽咲は少し驚いた顔をしたが、すぐに目を伏せて笑った。

「嬉しいよ。それが翔汰の本当の気持ちなら。」

「でも、俺は……陽咲のそばにいたいんだ。」

そう続けた声は震えていた。

「そばにいる方法なんて、プログラマーでも介護士でも、きっとあるよ。」

陽咲はそう言い切った。


翔汰はしばらく彼女を見つめ、それから小さくうなずいた。

進路という扉の前で、まだ答えは出ない。

けれど、その扉を一人で開くわけじゃない。

隣に彼女がいる――その確信だけが、翔汰の心を支えていた。

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