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俺の異世界交易FIRE計画を役所が邪魔する  作者: 九束


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第9話 案内人リチャード

(うっひょほほほぃ♪ 半日もせずに480万、480万円ゾ!? 時給いくら? いくらよぉうひひひあへぇ)


(たった一回の往復で、新卒のボーナス数回分か。これ、マジで数回繰り返せばFIRE達成できるんじゃね?)


和樹の脳内には日本での夢のFIREが目の前に迫っているように感じられた。


異世界で冒険? チートで活躍でちやのほや?


そんなものに和樹は興味は一切なかった。


彼は小市民なのだ。


切った張ったは他人でお願いしますの精神だった。


「よし、とりあえず今日はもう帰ろう。あんまり長居してボロが出ても困るしな」


そういうと和樹は小躍りしながらジャージのチャック付きポケットに金貨を放り込み、しかしその金色の魔力を確認するかのように1枚だけ取り出してうっとりと眺めながら、軽やかに階段を降りる。


「いやー、それにしてもチョロかったな、異世界。カサンドラちゃん、顔も胸も最高だったけど、商人としてはまだまだ甘いんじゃないの?」


そんな舐め腐った感想をつぶやきながら最後の階段を一段飛ばしで降りる。


一階のホールは、相変わらず商人たちがあちらこちらで商談中のようだった。


と言ってももう手持ちは現地人カサンドラをして不味いといわしめた某スーパーのPBウイスキーもどきのみ。


そんなものを売っても二束三文にしかならない。それならその辺に捨てて推しの配信を見る方が万倍有意義とばかりに和樹は出口へと足を進める。


「よう、あんちゃん。商談は終わったようだな。ちょっとツラ貸してくれねえか?」


そんな和樹を引き留める声が、受付から近い位置のテーブルから聞こえてきた。


「……え?」


和樹が声の主の方向を見ると、そこにはガラの悪そうなおっさん。


年齢は五十代後半くらいだろうか。


無精髭を生やしているものの、着ている服はそこそこ上質な布地っぽいし、多少厳つい体格ではあるものの全体的には清潔感を感じる。


が、なぜだろうか。全体的な雰囲気がこう、ガラが悪いのだ。


現代で例えるならばオラオラ系の、ワックスで頭をガチガチに固めた体育会系営業マンのような、和樹の苦手な人種の匂いがプンプンしていた。


「さっきカサンドラって商人と商談してたろ? で、俺はお前の顔を見たことがねぇ。つまり新入りって訳だ。で、俺は新規取引の貿易商連中の案内人みてぇなことしてるリチャードって者(もん)だ」


「えっと……もう商品のうちでいいものは全部カサンドラさんに売っちゃってまして」


「あぁ勘違いすんな。商品の商談をしてぇって訳じゃねえし、何か巻き上げようって訳でもねえよ。……まあ結果的にそうなることもあるが無理強いはしねえ」


「はぁ……」


和樹は気の抜けた返事をしつつ、受付の方をちらりと見る。


視線を向けられた受付嬢は少し困った顔でこちらに微妙な営業スマイルを返してきた。


「……どうも。和樹と言います」


その反応にとりあえず危険はなさそうだと判断した和樹は椅子を引いてリチャードと名乗ったガラの悪いおっさんと同じテーブル席に座る。


「よろしくな。で、カズキさんつったか。さっそく本題だが、今手に持ってるドンターロ金貨。代金全部それか?」


「え? 多分……」


「商品は胡椒と石鹸か?」


「なんでわかるんです?」


「俺は鼻がいいからな。お前のリュックから胡椒の匂いがするし、さっきカサンドラが通り過ぎた時にはムスクの匂いがしたからな。ムスクは暗黒大陸産の高級石鹸によく使われている匂いだ」


「はぇー」


そういうので商品が分かるんだと感心する和樹。


「で? あたりか?」


「そうですけど……」


「あぁー…………あのド三流のバカ女ぁー……ついにそっちの貿易商ボりやがったぁ……これだからダークエルフは……いやまだ今回はボってな……いやドンターロ金貨の時点で確定だよなぁ」


一方のリチャードは片手で頭を抱えてからそのまま肘をテーブルに着く。


「クラリスちゃーん。高級品の基準価格表持ってきてー」


「はーい」


リチャードに声をかけられたクラリスと呼ばれた受付嬢はそのままカウンターの後ろから一冊の本を取り出すとぱたぱたと小走りでリチャードにその本を渡してくる。


「あの?」


「これはな、一般品質の高級品が大体どういう価格かの基準が書かれた物価書だ。大体は新入りがギルドに入ってきたら一回読ませるんだが、お前さんは俺のいない時にカサンドラと商談に入っちまったからなあ」


そう和樹に説明しつつ、ぱらぱらとページをめくって、あるページを突き出してくるリチャード。


そこには『ドンイ地域産品基準価格』という物だった。


それによると、胡椒はキロあたりチーレム金貨1枚、石鹸は並品質で100グラム当たりチーレム金貨1枚とあった。


「新入り、お前さん、この価格より安く価格を提示されなかったか?」

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