第47話 ドバイでの商談③
「【え? それはどういう……もっとどんどん、毎月これくらいの金なら用意できますことよ?】」
「【……カズキ。それはやめておきなさい。貴方、破滅したいんですの?】』
「【え?】」
アフマドの目線は既に厳しいものになり、異世界スキルの関係でお嬢様言葉で翻訳されてしまうアラビア語をもってしてもなお迫力のある言葉の圧に和樹は背筋が少し寒くなった。
「【ドバイは金の取引に寛容ですが、それはあくまで『限度』があるからですわ。今回の様な単発の取引ならば、まだごまかしは効きますけど、毎月十キロもの純金を持ち込んで売るなんて真似は難しいんですの。しかもUAEは厳罰主義。この額の非正規取引は財産没収の上で一発実刑になりますわよ?】」
(マジか! それじゃあ日本よりリスクが高いじゃねえかよ!)
アフマドの言葉に、和樹は一瞬で血の気が引く。
「【じゃあ、どれくらいなら大丈夫なんですの】」
「【だから今回で終わりに……と言いたいところですが、そうですわね……安全圏を考慮すれば、あと一回くらいが精々ですわ。それ以上は私もリスクがあるから協力はできませんわよ】』
(あと一回!? 少なすぎる!!)
今回の取引で目の前に札束が躍るのを和樹は経験してしまった。到底許容できることではない。
アフマドはそんな和樹の不満げな表情を見て、深いため息をついた後、悪魔の囁きのような提案をしてきた。
「【……まあ、私も何人か伝手はありますので、そっちを当たってみましょうか? 東南アジアの国なら、何人か伝手がありますの。それならあと一回が、あと数回には増えますけれど】」
「【ぜひおねがいしますわ!】」
アフマドの提案に一も二もなく飛びつく和樹。
確かに東南アジアなど、日本とは比較にならないほど実質的な金の売買規制が緩い国はいくらでも存在する。
しかしそれらの国はいずれも厳罰主義。
数年レベルの禁固刑では済まないのだが和樹は知る由もない。
「【商談成立ですわね。では、詳細はまた後日。ドバイでのバカンスを、存分にお楽しみなさいな】』
アフマドはそのまま和樹の部屋から退出する。
ドアの前までアフマドを送った和樹は、踵を返してリビングに戻りソファーにドカっと座ると、静かに舌打ちをした。
「くそっ! これで毎月億り人コースかと思ったのになかなかうまくいかねぇな……だが後数回1億程度の取引ができるなら全体で数億は積み上げれるな……これをベースにしてほかの交易ネタを探すしかねぇか……」
キャッシュレス決済が進んでいるとはいえ、まだまだ日本は現金社会。
来る時に用意していたようにこまごまとした決済はプリペイドクレカを使えば当局も補足できまいと和樹は踏んでいた。
「それに、初回の儲けとしては上々だ。ホテル暮らしをしたとしても数年は何とかなるだろう」
直近の主な支出となるホテル代は、前払いで現金で支払ってしまえばよい。
そう和樹は考えなおし、和樹はリビングの前にあるプライベートプールの方へと足を進める。
「あ、ご主人様。おかえりぃ」
そこにはさっきリビングを通り過ぎた時には着ていたはずの水着を脱ぎ捨てたカス子が、ぷかぷかと大の字になって気持ちよさそうに浮かんでいた。
色々と丸見え状態である。
「全裸、だと!?」
「あ~あんしんしぃ。ちゃあんと今脱いだばっかやで?」
イタズラ気な表情を浮かべながら和樹の方を見て言い放つカス子。
アサヒが反射するプールのタイルに照らされた琥珀色の肌。
水面に浮かぶ豊満なおっぱい。引き締まった下腹部。
「うっひょ~~!」
異世界を使って次の金策についてどうするかを考えていた和樹の思考は完全にシャットダウンし、『今日はカス子とどういうプレイをするか?』に思考が切り替わる。
「カズキはんも一緒に泳ごや~? ほら、ぎゅってしたるさかい」
「泳ぐ泳ぐ!! 俺も全裸で泳ぐゥ!!」
和樹は着ていた服を雑に脱ぎ捨て、そのままプールへとダイブした。
「ひゃぁ~カズキはんのそういうノリ好きやで♪」
水しぶきと、カス子の甘い声がプールに消えていく。
欲望渦巻く金融都市で日本円にして1億超えの商談を済ませ、ラグジュアリーな高級ホテルのムーディーなプールで目の前には美少女奴隷。
(まあ細かいことは後でいいか)
和樹が低IQモードになるには十分な条件だった。




