第44話 チェックインとカス子の回収
半日弱の空の旅を満喫し、和樹の乗る飛行機はドバイへと降り立った。
入国審査を抜け、航空会社の送迎ハイヤーに乗り込む。
(わぁ流石ドバイ、配車アプリ乗り場のレ〇サスとB〇Wとかじゃん。すげえな)
日本でもたまに見かけはするが、空港エントランスの配車アプリ専用レーンに並ぶタクシーの高級車比率の高さを見ながら和樹はそんな感想を抱く。
空港を出発したタクシーの窓の外からは、着陸直前に感じた砂漠っぽい見た目のに反し、ただっぴろい道路、白を基調とした街並み、そして空港のすぐそばにあるクソデカ高層ビル群という光景が目に入ってくる。
「なんとなく都市開発シミュレーションゲームで作ったみたいな街並みだなぁ。石油王ともなるとリアルでシティーズ〇カイラインやるのか、すげえな」
何とも言えない感想を抱きながらぼーっと街並みを和樹が眺めていると、やがてタクシーは木の形をした人工島の枝っぽい部分にある高級ホテルへとたどり着く。
ドバイでも最高ランクのラグジュアリーホテルであるそこは水上コテージも併設するまさにドバイのゴージャスイメージそのままのホテル。
和樹が予約していたのは、プライベートビーチにそのままアクセスできるヴィラタイプの部屋。
海もあるのにプライべートプールもついているという一室は一泊するだけで和樹の社会人時代の月給数か月分が吹き飛ぶお値段。
チェックインを済ませると、敷地が広いからかゴルフカートのような小回りの利く乗り物に載せられ、そのまま部屋まで案内される。
「【こちらがお部屋になりますわ】」
「【わぁ、すごいですわね】」
部屋の前でボーイが荷物を持って進むのについて付いて良き、部屋に入った和樹は息をのんだ。
白を基調としつつも、窓枠や天井をダークブラウンでそろえた部屋はどこかエキゾチックな雰囲気も放っている。
大人三人が寝てもまだ余裕がありそうなベッドの横にあるテーブルには色とりどりのウェルカムフルーツ。
奥の部屋にはそこだけでゆったり寝転がれそうなソファーが置かれたリビングと、大きな窓の外には10人くらいが遊べそうなプライべートプール。
和樹がカス子と昨日まで楽しんでいたラブホがゴージャスレベル10だとすると、ここはゴージャスレベル99くらいと言って過言ではない。
「こりゃカス子が見たらめっちゃテンション上げ上げになること間違いなしだな……よし。まずはカス子を回収するか」
ボーイが退出したのを確認すると、和樹はドアロックをかけた上でサニタリースペース(ここだけでも和樹の家くらいの広さがある)の壁に異世界ドアを出現させた。
ガチャリ、と扉を開け、ニューモンの薄暗い路地裏を抜けてギルドに入る。
「クラリスさん~預けていた金貨と、後ついでにカス子をひきとりにきました~」
「あぁカズキさん。少し早かったですね。ではこちらに」
クラリスに案内されるまま受付を通り抜けて裏の部屋に入ると、カス子の姿。
「大丈夫、大丈夫や、うちみたいな美少女そんなポイポイ捨てるわけあらへんもん……最後の夜だってあれだけしつこくせめてきたんやし、うちの身体は惜しいはず、大丈夫や……カズキはんは基本下半身で行動しとるし大丈夫や……」
カス子は死んだ目でブツブツと呟きながら帳簿をつけていた。
「あ――」
そして部屋に入ってきた和樹と目があう。
「カズキさん、こちらがお預かりしていたチーレム金貨になります。枚数のチェックに当ギルドの者はお使いになりますか?」
和樹もカス子に声をかけようとしたが、それに差し込むようにクラリスが和樹に声をかける。
抱えているのは和樹の主目的であるドバイで売り払う予定の大量のチーレム金貨。
「いや、何枚か見るだけでいいです……」
「よろしいのですか?」
「ギルドを信用してるので。うん、ちゃんとチーレム金貨のままですね。じゃあ俺はこれで――」
なんか面白そうなので和樹は預けていたチーレム金貨だけ受け取ってそのまま帰るふりをする。
「か、カズキはんっ!! ご主人様ぁぁぁ!!」
和樹がそのまま踵を返すなり、帳簿を放り投げて和樹に縋りつくカス子。
「冗談でもそういうのやめーや!? 不安で不安で……あカズキはんを信用してないわけやないけど、あのリチャードのおっさんが『あと〇日来なかったら引き渡しだなぁ』とか囁いて来てほんま心細かったんよ!?」
どうやら日が経つうちに、だいぶ不安に駆られていたようだった。
(ヤバイ、これいいな。何かに目覚めそう)
一方でそんな涙目のカス子を見て和樹は言い知れない快感を感じていた。




