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03 5月5日 ジュディス・ガードナーよりアルヴァ・ガードナーへ

 第四信

     ジュディス・ガードナーよりアルヴァ・ガードナーへ

                        五月五日






 お義兄様、お体の調子はどうでしょうか?


 今日は興味深いお話を聞きましたので、記憶が薄れない内に手紙を認めたいと思います。

 なんでもベケット男爵の元へ官憲が幾人も訪れたようです。

 と、言ってもベケット男爵が何かをしたわけではありません。

 ……いえ、私達に行ったようにどこか別の家で詐欺まがいの事をしているかもしれませんが、取り敢えずは関係ないのです。

 以前のお手紙で、ベケット男爵のお子様が新しくベケット男爵夫人になられた方に反発して家を飛び出した、というような事を書いたと思います。

 そのお子様が、なにか官憲の手を煩わすような事件を起こしたようなのです。

 そして、一度は捕まりかけましたが、結局のところ、見事に逃げ出して、姿をくらませたとの事。

 その関係で、その官憲達はベケット男爵の元を訪れて、色々と話を聞いたり、調べたりしたと聞きました。


 それを聞いて私はそのベケット男爵よりもそのお子様が可愛そうに思いました。

 本来であれば事件とは無関係なベケット男爵の方が可哀想なのですが、生憎とそちらの方はちっとも可愛そうに思えませんでした。

 長年、父親であるベケット男爵にはほっておかれた挙句、自身の生みの母が亡くなられた瞬間、良くない噂の経つ方が新しい母親になったのですから。

 きっと新しくベケット男爵夫人になった方から色々と嫌な事をされていたに違いありません。

 たしか、ベケット男爵のお子様はお義兄様をご年齢が近いと聞いた事があります。

 もしかしたらお義兄様はその方と面識があるのかもしれませんね。


 ベケット男爵といえば、あの後も何度かお尋ねになりましたが、お祖母様の命でスグに追い返すようにしました。

 なので近頃は姿を見せる事はありません。

 やっぱり、あのような不誠実な人に対する最適解は相手にしない事なんですね。

 お祖母様が生きておられるうちに学ぶことは沢山ありそうです。


 ベケット男爵については以上なのですが、次に違う話を書こうと思います。

 我が家で管理してる狩猟場がありますよね。

 そうです、まだお父様やドナルドお義兄様が家にいらしたころ、良くカモ撃ちにいったあの狩猟場です。

 お義兄様はあまり狩り自体がお好きでは無かったので、狩りは二人に任せて待っている間、森の中でいろいろな事をお喋りしましたね。

 あの時間、お義兄様とふたり切りなのに、何時間でも喋ってられました。

 ……ほんの数年前の事なのに、とてもとても遠い昔に思えてなりません。

 もし、あの時の幸せな時間に戻せたなら……などと考えてもしょうがない事を考えたりしてしまいます。


 また、筆がそれてしまいました。

 どうやら、その狩猟場で密猟があるらしいのです。

 いくらお父様が無くなり、ドナルドお義兄様は異国の地で、お義兄様が療養所にいて、我が家の誰も狩りをしない状況でも、あの場所はウチの狩猟場であることに違いありません。

 どうして、悪さをする方がいるのでしょうか?

 私には理解できません。


 狩猟場の話は以上で、次のお話しです。

 お義兄様はコーンウェル家のレオ様を覚えていらっしゃいますか?

 そうです、親戚のレオ様です。

 その方が婚約したらしいのですが、なんとどなただと思いますか?

 私、お相手を初めて聞いた時、とてもとてもビックリしてしまいました。

 お義兄様もお聞きになればきっと驚くと思います。

 その方はなんと、サビナ様なのです。

 そうです、去年亡くなられたレオ様のお兄様のご夫人だった方です。

 義理とは言え、ご姉弟でご婚約なさるなんて。

 私がなぜビックリしたのか、お義兄さまにも納得できると思います。

 この話を私に伝えてくれたのはお祖母様なのですが、この話にはさらに続きがあるのです。

 お祖母様はこの話を私に伝えた後、私と二人っきりになられたときにこうおっしゃられたのです。


「アルヴァは……今は二十六だったか」


「アルヴァお義兄様の年齢ですか?それで合っていると思います」


「そうか……じゃヒラリーは今幾つかジュディスは知っているかい?」


「お義姉様ですか?お義姉様は確か……二十三か四だったと思います」


「じゃ、歳も近いし、お似合いかも知れないね」


 そんな事を言うと、今の話は絶対に他人は言わないように、そう言って私を追い出すように部屋へと帰らせたのです。

 お祖母様は絶対他人に言うなと言われましたが、元々私は秘密を抱えておくのが得意な方ではありません。

 それにお義兄様は家族です。

 決して他人なんじゃじゃないですよね?

 それに言われたのは「言わないように」であって、文字に書くな、と言われたわけではありません。

 なのでお祖母様の言われたことを破ってはいないし、告解の意味で手紙に書かせて頂きました。

 お祖母様は一体どういう意味でこのような事を言われたのでしょうか?

 私にはお祖母様のお考えがさっぱり分かりません。

 お義兄様にはお判りでしょうか?






 お義兄様のご健康を祈って。

 貴方の義妹、ジュディス・ガードナー。

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