第1話:砂漠の暴君との邂逅
い煙と灰が空を覆っていた。
壊れた馬車の上には死体が横たわり、流れ出た赤い血が砂を染めた。
生き残った人々の慟哭と死にゆく人々の呻き声が入り混じっていた。恐ろしい音だ。
エスターはすすり泣きながら息を潜めて体を縮めた。
彼女は運よく生き残った人たちの一人だった。それも怪我一つなかったが、まだ何が起こるか分からなかった。
状況はあまりにも絶望的で、何をすべきか全く分からなかった。心臓がどんどんと鳴り続けた。
エスターがこうして生き残れたのは全て父親のおかげだった。
襲撃を受けるとすぐに、エスターの父親は彼女を価値のない物が詰まった馬車に押し込み、カーペットの間に隠れてそこから絶対に動かないようにと言った。
声も出さず、盗賊が去るまで待てと言った。
エスターが目を三回瞬きする間もなく、父親はそのまま馬車の扉を閉じてしまった。
残されたエスターは恐怖に怯えて父親を呼んだが、外は既に悲鳴と戦う音で満ちていた。
父親はどうなったのだろうか。亡くなってしまったのではないだろうか。ひどく傷を負っているかもしれない。
エスターは負傷者の呻き声がまるで父親のもののように感じ、胸が痛んだ。
彼女が今すぐにも馬車の外に出て父親を探そうと決心したとき、外から歓声が聞こえた。
エスターの一行を襲い、虐殺した盗賊の歓声だ。エスターは怯え、さらに体を縮めた。
「カールツェン様! 我らの主君!」
盗賊が首領を称賛する声だった。
盗賊が自分たちの首領を主君と呼ぶのは奇妙なことだが、エスターにはそんなことを気にする余裕はなかった。
彼女は両手を合わせて神に切実に祈った。
どうかこの盗賊たちが自分を見つけずに去り、外に出たときに父親が生きているようにと切に願った。
その時、神がエスターの祈りを聞き入れたのか、盗賊たちが去る準備をしているようだった。
馬の嘶き声と馬車が動く音が聞こえ、エスターは安堵の息をついた。早くこの瞬間が過ぎ去ってほしいと彼女は涙を拭った。
「おい、この馬車は何だ?」
「ああ、それか? 召使いの物を入れている馬車らしいが、見たところ特に価値のない物ばかりだ」
「そうか?」
馬車の中を見た盗賊が再び馬車の扉を閉めたとき、エスターは希望を抱いた。
このまま彼らが去れば父親を探そう。負傷者たちを手当てしよう。父親は医者だから何とかしてくれるはずだ。
そして故郷に帰ろう。
しかし、その後に聞こえた声にその希望も打ち砕かれてしまった。
「ところでさ、たまにこういう場所にはネズミのようなものが隠れていることがあるんだよな」
「し、主君?」
「ほら、やっぱりな」
エスターの心臓がドキッと止まった。
すぐに誰かが馬車の中に入り、物を壊して投げ始めた。陶器が割れ、木箱が壊れた。
すぐ後ろのカーペットの下に隠れていたエスターが震えた。
神は彼女の祈りを無視した。
身を隠していたカーペットが無残に剥がされ、影が彼女に覆いかぶさった。
エスターは震えながら視線を上げた。
「ほら、俺の言った通りだろ?」
若い男が彼女を見てにっこりと笑っていた。




