使者の理由、嵐を呼ぶ発言
式典に列席したグレンジャー・ユスラエル公爵目線ですが、あまりそれを気にしないでください。
赤い旗の式典はつつがなく終わった。
それが古からの決まりだ。
しかし誰も退出するものはいなかった。
王妃様の手は真っ白くなるまでに強く握り締められ、豪胆な陛下でさえも王笏を持つ手が震えている。
沈黙に耐えかねてブレーゼス公国の使者が口火を切った。
「ノルトでクリス王子の御名を始めてお聞きしましたが、いかなるお方なんでしょうか?」
タルタイル王国の使者もそれに続いた。
「王族はその名を全て公にすること。協約の基本をお忘れでは無いでしょうな。」
陛下は声を上げそうになった我らを制しておっしゃられた。
「クリスはマレリウスの双子の兄として生はうけたが、王家の証である聖痕が無かった。よって王家から追放したものである。そのような者の扱いも協約に明記されてある。逆に問いたい。いかなる故あってクリスを望むのか?」
ドルマン帝国の使者が答えた。
「見者ロアンの見立てなれば。」
見者ロアンは全てのものを見て常人の理解できない正解に到達する。
だからそう言われればそういうものかと誰もが納得してしまう力を持つ。
しかし皇国の使者の回答は嵐を含んだ。
「魔法学院の生徒で最優秀のものを調べましたところ、ここの王子とわかりましたので。」
怒号が飛び交い王妃は失神した。
聖痕が無ければ魔法が使えないのが常識