燃えろよ燃えろ
文頭の会話はなんでしょう。
あまり気にしないでください。
人の世は平和を謳歌しています。
きちんと備えをしてくれているらしいです。たぶん大丈夫。
『予言どおりに、竜帝ゴウコウと獣王フェンリアースは滅びた。』
『滅が起こる、備えねばならぬ』
『戦が起こる、備えねばならぬ』
ぼくは目の前に置かれた小皿から眼を離し視線を感じたほうを見る。
女子生徒があわてて前を見る。
別にもてているのではない。
反対のほうをいきなりさっと見る。
ほら男子があわてて前を見る。
ふぅ、目の前の小皿のおがくずは全く変化が無い。
じっと見つめても変化が無い。
より眼をしても、
「ぐふふっ」
「そこふざけないっ!」
や~い先生にしかられた。
と、遊んでちゃだめだ。まじめにやらなくっちゃ。
魔力を集めるイメージをして、燃え盛る炎をイメージして、エイッ!
それでも、ぼくの小皿だけ火が付かない。
守護が水でもこれくらいは出来る、だって?
ふぇ~ん。なんで出来ないんだ。
これが火薬で出来ていたら、へっと火を付けたら、
《《《《ボンッ!》》》》
「ぅわっち、あち!」
ザバッ!
隣の女の子が水を掛けてくれた。
「ありがとう、助かったよ。」
「どういたしまして、ついでだから。」
パチンと指を鳴らすと風が吹いてぬれた服がすっと乾いた。
「ほんとにありがとう。」
「シェリー、わたしからもお礼を言うわありがとう。」
いつの間にか前に来たロイテル先生が彼女にお礼を言ってから、ぼくに言った。
「クリス君、復習して出来るようになっておいてね。」
「はぃ。」
授業が終わり、先生が出ていくとシェリーを代表に女の子達が話しかけてきた。
「ねぇクリス、あなたの予定表見せて。」
「ぅわ~めいっぱい初級授業が月曜から金曜日まで。」
「仕方ないよ、これから始めるところだから。」
「全く経験無いの?」
「ないよ、シェリーこそあれだけ魔法が使えてなんで初級魔法実習に出てるの?」
「水かけたのは精霊魔法だから、ふつうのはこれから覚えるところ。」
「そうなんだ、精霊ってもしかしてこれ?」
彼女の肩に乗っている小人みたいなのをつつくと、がしっと噛まれた。
「ぅわっち。」
「そればっかりね。」
「ははははぁ~」
ぼくは精霊というものはだれでも見ることができるものだと思っていた。
サマンサは頭が痛かった。
どうやったらおがくずを残して、お皿を燃やすなんて器用なことが出来るんだろうか?
シェリー・リーン
妖精族エルフ 金髪碧眼
サマンサ・デ・ロイテルです。先生は一人です。
おがくず:木の粉 火が付きやすい
お皿 :粘土を焼いて作ってある陶器のお皿