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 今宵も宴は開かれている。

 初日と比べてリャーナは少しだけ、来客と話をするようになった。

 といっても、気を使いまくった、雑談というにもそっけないものばかりだったが。隣にアリスがいてくれるから、リャーナは何とかがんばれた。がんばれたと思う。


 それに――彼がいた。

 シオンという名前の青年。


 昨日も、その前の日も、彼はやってきた。リャーナを見つけて、話をしてくれた。少し前までリャーナが生きる世界だった場所の話。城では聞くこともできない、人々の話をたくさん。


 その中で、リャーナが育ったあの教会の話があった。

 生まれて間もないリャーナだけを抱いて城を追い出された母が、ふらふらになりながら流れ着いて娘を託した場所。母のように慕ったシスター。兄弟姉妹同然に育った、他の孤児達。

 みんな、元気なようだった。


 ろくにお別れも言えないままだったから、ずっと心配で。アリスは落ち着いたら、何かしらの理由をつけて教会にいけるといってくれたけれど、リャーナはそうは思えないでいる。

 普通、王族などが行くのは、町の中にあるとても大きな大聖堂。

 あんな下町の、庶民のための教会に――いくら故郷であっても行けるはずがない。その程度ぐらいならリャーナでもわかる。だって、貴族らしき来客なんて、一度も見たことなかった。

 あれはアリスの優しさなんだろう。

 わかるから、怒らない。

 はっきり言わせない自分の方にこそ、怒りを覚える。


「……前は、きっと怒っただろうな」


 鏡の中の自分は、あの頃よりずっと大人の顔をしている。

 まだ、そう日数がたったわけではないのに。年齢だって十歳のまま。だけど、いろんなものを我慢できるようになった気がする。アリスに言わせれば、それは『諦め』だそうだが。

 少なくとも、望んでも得られないものがあることを、リャーナは知っている。

 その一つがシオンとの時間だった。


 彼は庶民に、リャーナが接してきた人々に近い感覚を持っている。アリスもそうだ。しかしどちらもずっと一緒にいてくれるわけではない。いつか、リャーナのそばからいなくなる。

 だから、二人とずっと一緒にすごすことを、リャーナは諦めた。

 変わりに一緒にいる時間を、少しでも大切にすることにした。

 もっとも……アリスはともかく、シオンの方はどうなるかわからないのだが。招待客でしかない彼は、別にリャーナに会わなくてもいい身分でもある。昨日のさよならが永遠かも。


 ――また彼に、会えるだろうか。

 明日でも、明後日でも。


 悩んでも仕方がないから、今日も明日も会えると考える。

 考え、自分なりに見栄えをよくしようと努力する。

 彼に会えるならリャーナは何でもできた。そんなに真剣ではなかったダンスの練習も、かわいらしく見える仕草も。選ぶのも面倒なほど膨大なアクセサリーやドレスとの戦いだって。


「こんな感じ、かな……」


 鏡の前で念入りにチェックし、リャーナはまた華やかな場所に向かった。

 毎日欠かさず来ている彼が、また来ているといいなと思いながら。

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