No.96:あとひとり。そして違和感
『1番根本のセンターへのタイムリーで12-10!!!!!!点差は僅かに2点!!!!!シングルヒット一本で同点!!!!!』
『2番、セカンド、長沢くんに代わりまして、代打、平野くん。』
西口(コイツに関しては今大会初打席だな。いつも通りのピッチングで十分通用する相手。ワンナウトフルベース。コイツで絶対にツーアウトにしないとこっちが今度は追い込まれる。それだけは絶対に避けたい。)
ビュウッ!!
『ストライク!!!!!』
《 141km/h 》
西口(まだなんとか140km/h台前半を出す体力は残っているか…。あとアウト二つです。翔真先輩。)
バン!
『ボール!!』
《 141km/h 》
バン!
『ボール!』
《 140km/h 》
バン!
『ボール!』
《139km/h》
『さあカウントを悪くしてしまった!!邦南バッテリー、かなり苦しいか!?!?これで1ストライク3ボール!!!!!』
大場『うぐぐ…。』
西口(翔真先輩!!)
大場『おい…。ここはどこだよ…。こんなバテたの…生まれてはじめて…。だ…。』
西口(まずいぞ!!根本にタイムリー打たれたあと急速に球威が落ちてきてる!!)
『さあセットポジションから代打の平野に対しての第5球!!投げる!!』
ビュウッ!!
大場『ぬあぁっ!!』
西口(どまん…なか…?え…。まずくね…。せめてここまで、このミットまで届いてくれ!!)
平野『ど真中!!!!!!』
ブン!
『ファールボール!!』
平野『くそぉ。』
大場『た…たすか…っ…た…。』
西口(コイツじゃなきゃ…やられていたな。間違いなく今の球がスタメン級の打者だったら外野の頭の上を越されていた。)
大場『はぁはぁはぁ…。はぁ…はぁ…。ん…。はぁ…。はぁ…はぁ…はぁはぁ…。』
桜沢『見てて痛いな。あの邦南のエースのやつ。』
余語『見るからにスタミナ切れだ。今の球もあのバッターじゃなかったらやられていた可能性が高い。まあ要するに結果オーライだ。』
勾城『翔真先輩…。』
キーン!
『ファール!!』
…
……
………
キーン!
『ファールボール!!』
《 134km/h 》
『これもファールで先程からカウント変わらずフルカウントのまま!!フルカウントになってからもう既に5球!!さあ次が11球目!!!!!!!』
大場『し、しつけえ…。』
西口(直球しかもうストライクに入れる手段はない!!)
ビュウッ!!
キーン!!
『これもファール!!平野も必死についていきます!!』
西口(そろそろ前に飛ばせよ…。コイツは決して打力のあるバッターではない…。なぜなら5球目の球威のないど真ん中のあの直球を捉えられないんだからな…。ストレートで押します。)
大場(いや。違う。)
大場は首を振った。
西口(じゃあ…これですか?)
西口はカーブのサインを出したが、これも首を振った。
西口(まさか…下村フォーク!?!?)
大場は頷いてセットポジションに入る。
西口(嘘でしょ…?もう下村フォークなんか投げれる体力じゃ…。)
大場(コイツは直球で押してもこすってファールにするだけだ…。なら早いうちに三振にきってとる。最悪チェンジアップ的な効果で打たれてもいい。コイツは俺からヒットは打てない。)
西口(ミットまでそのボール、届けてくださいね。)
大場(腹くくるぞ。体に力が入らないが…ここで残り少ない体力を削ってでもアウトを取らなくちゃならねえんだ…。)
『さあ足をあげた!!!』
『自然体に…自然体に…球持ちよく…最後の最後…指先だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
ビュウッッッッッ!!!!!!!!
平野『ど真ん中!!今度こそ!!!!』
スッッットォーーッッッン!!!
平野『え…。』
西口(翔真先輩…本当にあなたは色々と、偉大な先輩です…。)
『空振りの三振!!!!!!!!!!!代打の2年生平野、粘りましたが軍配は邦南のエース、同じ2年生の大場翔真に上がりました!!!!』
西口(ここにきて今日最高の下村フォークが来るなんて…。)
『ワンナウトフルベースから代打の平野は空振り三振!!!これでツーアウトフルベース!!!!!点差は2点!!!!!邦南高校、決勝進出まであとアウトひとつ!!!!!!!』
西口(ナイスピッチ!!こりゃあもう少し下村フォークが使えると思う!!)
『3番、ピッチャー、芝田くん。』
西口が下村フォークのサインを出す。
大場(ダメだ琢磨…。)
大場は首を振った。
西口(え…。なんで…。じゃあ何でいけばいいんだ…?)
大場(今のフォークで…)
西口が苦し紛れにカーブのサインを出す。しかしこれも大場は首をふり、ストレートのサインに頷いた。
(今のフォークで…肘が…。)