No.77:蛹(さなぎ)から蝶へ
結局3回の攻防も得点には関係なく、試合は4回の表、邦南はまた小木曽に三者三振を食らう。
『4回の裏、猪子石高校の攻撃は、3番、サード、芝田くん。』
小木曽『そろそろ目覚めてくれよ…大…。』
芝田(あー、なんかクラクラする…)
渡辺『この打席もまだだメだな。ったく…打線の中心のはずの3番バッターがこれじゃあちょっと不利だぜ。』
ズバーーーッッッーン!
審判の手が上がる。
『ストライク!!バッターアウト!!』
《 148km/h 》
渡辺『相変わらずはえーな…。』
『4番、キャッチャー、渡辺くん。』
大場(カズキ…。)
渡辺(翔真…。)
渡辺(俺は翔真を許す気はねえかんな?)
大場(知ってる。カズキがそーゆーやつだって。)
渡辺(いかにも俺が悪いような言い方だな。)
大場(悪かったな。)
渡辺(てか翔真、ちょっとは敬語使ったらどうなんだ?オレ一応お前より年上だろ?)
大場
渡辺(ふぅ。ささやき戦術には乗らねえか。もうスイッチ入れてきやがった。)
大場(ねじ伏せる!!!!!!!!!)
ズバーーーッッッーン!
《 146km/h 》
渡辺『どーやらあのときの事はもう気にもとめなくなったみてぇだな。』
大場(………。)
渡辺(ふ。いつまでその黙りが続くかな。だったらこっちがお前の口をポカンと開けてやるぜ。)
西口(次も直球!!!!!)
ドガンっ!!!!!
《 147km/h 》
『ストライク!!ツー!!』
渡辺(速いっつっても所詮140km/h台…。このオレからそう何度も直球一本で空振りがとれるとでも…)
カキーン!
渡辺『思うなよ。』
『打球は大きく切れてファール!しかし4番の渡辺、振り遅れましたが少し捉えました。』
渡辺(次は翔真のことだ。直球だな。アイツは昔から直球勝負を好んでいる。もし変化球が来ても翔真レベルの変化球なら狙わなくても対応できる。)
西口(コイツ。打ち気がバンバン伝わってくる。素直なバッターだな。次は直球に絞ってるだろ。だったら…)
西口がサインを出す。
翔真は一瞬ひるんだが、頷いた。
大場(まだ下村程の精度じゃねえが…この場面、ワンナウトランナー無し。失投でも高めにいかなけりゃリスクは低い。自信持っていくぞ…。)
大場が振りかぶる。
『身体脱力…力は要らない…。低めのミット目掛けて、思いっきり…』
『『『指先!!!!!一点大集中!!!!!!!』』』
『いっけぇーっ!!!!!!!!!!!!!!!』
西口『大峰明館戦とは違う。絶対に止めてやる!!!!!』
ビュッ!
渡辺『やはり思った通り!!ストレー…!?』
カクウッッッッッーッッ!!!!!!!
渡辺『お、お、おい!』
ズバーーーーーッッッッッーッン!!
『ストライク!!バッターアウト!!』
『空振り三振!!!!!!!!4番渡辺は大場の伝家の宝刀フォークボールで空振三振だ!!!!!!!!!!』
大場『しゃああああああああ!!!!!!!!!』
渡辺『聞いてねえぜ。こんなフォークボール…。』
下村健太『さすが大場だな。オレのフォークをもうここまでマスターしてきたか。』
長岡『お前よりスゴいんじゃね?』
下村健太『それはない。』
ズバーーーーーッッッッッーッン!!
《 149km/h 》
『空振り三振!!5番坂本成生も三振でこの回も三者三振に斬った!!!!!!!!!』
川越『おいおい…これじゃ…』
野中『間違いない…。今のアイツ…間違いなく…サナギから…』
『サナギから蝶に羽ばたこうとしている!!』