No.288:青馬の縦スラ
今回の話、結構好き(笑)
鬼頭(あの頃はまったく眼中にも無かったオマエがな…。)
青馬(こーゆーのも…悪くはねぇな。)
鬼頭(まさか…こんなにも立ち塞がってくるなんてな…。)
《鬼頭は前の打席では外角のボール球のチェンジアップに空振りの三振を喫しています。》
栄『ここ、バントはないの?』
赤嶋『アホか!この場面でバントする監督なんて監督じゃねーよ。』
栄『なんで?』
赤嶋『この場面で4番に託さないでいつ託すんだよ。』
夏井(なんやかんや疲れもたまってきてる頃だとは思うが甘い球なんてもってのほかだ。)
《さあ初球!!!!》
ビュゴォォウゥッッッーーッッ!!!!
鬼頭(安定のアウトロー!!)
夏井(引っ掛かったか!?)
カキィィィーーーッッーッンッッ!!!
『『『ウワァァァァァァァァッッッ!』』』
夏井(な!?)
《流した!!レフトライン際!!フェアか!?ファールか!?》
『ファール!!ファール!!!』
夏井(ツーシームの小さな変化についていって真芯かよ。ツーシームにはアジャストしてきたか。)
鬼頭(ツーシームはいける。カットボールも以前の打席でヒットを打っている。)
夏井(でもまだいくらでも攻める方法はある。)
鬼頭(となると…あとは縦スライダーとチェンジアップ。こいつらを打てるかどうか…。)
ビュゴォォウゥッッッーーッッ!!!!
夏井(ナイスボール。)
カクゥゥッッ!!
鬼頭(カーブ!充の時と同じアウトフリップ!!)
カキィィィーーーン!
ズキィィィ!!
鬼頭(うっ!!)
《これも流し打ったがファール!!》
鬼頭(右肘のことは勝ってから考えればいい。今はこの勝負に全力を注ぐ。)
夏井(今のはボールからストライクのアウトフリップに見せかけて、ボールからぎりぎりボールのただの見せ球だ。打ってもファールにしかならない。)
赤嶋(ヒロは打てると思った球は全部打つ気だな。らしくねぇ。ちょっといつもとは違うな。)
夏井(とりあえず理想通り2球で追い込んだ。)
青馬(焦るなよ。日向。)
夏井(当たり前だ。俺を誰だと思ってる。この場面じっくりいくぞ。)
ズバァァーーーッッーーッンッッ!!!
『ボール!!』
《外角へのストレート。1球外にはずして様子を見てきました。北頼バッテリー。》
鬼頭(次はどうくる?3球続けて外角。もう1つ外に来るか、はたまた内角で決めに来るか。)
ビュゴォォウゥッッッーーッッ!!!!
夏井(今度もアウトフリップに見せかけての実はただの見せ球。カットボール版だ。)
ズバァァーーーッッーーッンッッ!!!
『ボール!!!』
鬼頭(まあそう何度も同じ攻めに引っ掛かってたら進歩ねえ。)
赤嶋(ちょっと冷静になったな。ヒロ。)
夏井(今度は見るか。じゃあ今度はいくよ。)
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────2年前の春
青馬『ねえ。そこの君。』
夏井『お?どーした?シニアで優勝したチームのエースの青馬くんだろ?話しかけてくれて光栄だ。』
青馬『あ、それはどーも。ところでさ、君、防具つけてるってことは、キャッチャー?』
夏井『もちろん。I LOVE キャッチャーだよ。』
…
夏井『へー。打倒、S・7の鬼頭ねぇ。具体的に課題は決まってんの?』
青馬『それが…正直わかんねえんだ。なにから始めたらいいのか…。』
夏井『とりあえず、青馬の球受けさせてよ。それでなんか感じることあったら、言うね。』
青馬『おっ、ナイスアイディア!』
ズバァァーーーッッーーッンッッ!!!
夏井(ストレートは130km/hくらいかな。まあ入学したての1年的には速い方。特別速いってわけでもないけど。)
ズバァァーーーッッーーッンッッ!!!
ズバァァーーーッッーーッンッッ!!!
ズバァァーーーッッーーッンッッ!!!
夏井(それにしてもコントロールはいいな。7割は構えたところだよ…。)
青馬(どやどや?俺の球は。だてにシニアで全国制覇してねえぜ?)
夏井『次!変化球いこう!なに持ってる?』
青馬『チェンジアップとカーブ!チェンジアップは俺のウイニングショットだぜ!』
夏井『オッケー!んじゃまずチェンジアップから!』
ビュウゥゥーーーッッッ!!!
スッッ…
ズバーーーーッッーーッンッ!!
夏井(うんうん。チェンジアップはまあまあかな。腕の振りもあんま変わんないし。でもガチでものすごいかっていうと…うーん…。)
ズバーーーーッッーーッンッ!!
夏井『次!カーブいこう!』
ビュウゥゥーーーッッッ!!!
カクッッ!!
ズバーーーーッッーーッンッ!!
夏井(あー、これは微妙。実に微妙。こんくらいのカーブなら結構投げる人いるね。)
…
青馬『どや?俺の球は?』
夏井『コントロールはいい。めっちゃいい。』
青馬『そんだけ?』
夏井『チェンジアップもまあいい方。ストレートも走ってたよ。』
青馬『鬼頭倒せそうかな!?なあ?なにから始めよう?』
夏井『でも…鬼頭はちょっとね…。今のままじゃ…。』
青馬『そりゃ今のままで越えられたら練習する意味無いじゃんかよ!』
夏井『コントロール以外に…なんか武器がほしいよね。それもものすごい、なんていうか、青馬っていったらこれだ!ってのが足りない…かも。』
青馬『例えば?』
夏井『ストレートが150km/h出ます、とか?この変化球だけは誰にも打たれたことがありません、みたいな?』
青馬『なるほどなるほど。参考になる。ちなみに夏井くんはなにがいいと思う?』
夏井『正直ストレートの威力は天性の部分の割合も少なくないから…』
青馬『よし!変化球!決定!なんかすっげー変化球覚える!』
夏井(短絡的だな…。ほんとに大丈夫なのか…?)
青馬『あ!!!!』
夏井『なに。』
青馬『でも…何にしよう。ねぇ!なにがいい?』
夏井『え。自分で研究しろよ。変化球なんて。受けるだけなら俺がいつでも受けてやるから。』
青馬『夏井くんはシニア?』
夏井『まぁな。大阪の百舌鳥ジャイアントベアーズだよ。最後の大会は全国には行ってない。俺が打たれちまってな。』
青馬『え?ピッチャーもやってたの?』
夏井『まあ。本職はキャッチャーだけど。うちのチーム、エースのやつ以外にまともに投げれるやついなくてさ。肩には自信あったからストレートでグイグイ推す派だったな。』
青馬『へー。んじゃあ、決め球とか無かったの?』
夏井『決め球はストレートな。』
青馬『あ、変化球は?』
夏井『変化球は…縦スラ。でもまあノーコンでさ。全然思ったところにいかなくて暴れ馬だったよ。俺の縦スラは。他には…シニアのエースのやつが今どき流行りのツーシーム使ってたからツーシームもちょっとコツ知ってるくらい。あとカットボールも。握りと感覚くらいなら語れる。曲がるかは別としてね。シニアのエースのやつが毎晩自分の感覚について熱く語ってきたから俺も無駄に感覚だけなら語れるぞ。あんま投げれないけど。』
青馬『縦スラ、ツーシーム、カットボールかぁ。かっけぇな。でもいっぺんには無理だな。まず1つ覚えたいな。』
夏井『そんなそんな本当に鬼頭倒そうとしてんならカットボールとかツーシームみたいな小細工じゃダメでしょ。バットにかすらせない!くらいの心意気でいかないと。』
青馬『んじゃ縦スラ?』
夏井『まあ、やってみる?ダメだと思ったらすぐやめればいいし。握りはね…』
青馬『ほうほう。』
夏井(つっても全国制覇投手だからな。センスはあるはず。)
青馬『縦スラいくよ!』
夏井『おーう。』
ビュゴォォウゥッッッーーッッ!!!!
カァァァクゥゥッ!!!!!
夏井『!!!!!!』
ドーーッッーンッ!!
青馬『お?お?』
夏井『ごめん!捕れんかったわ!』
青馬『い、いまのどーよ!?』
夏井『すげー!!めっっっ、ちゃ曲がった!!!』
青馬『だよな!?おれ、縦スラ結構いけるかも!!!』
夏井『もういっちょ、今の感じでいこう!!今度は捕るから!!』
青馬『エヘヘェ。夏井くんに捕れるのかなぁ?俺の縦スラが。』
夏井『たった1球で調子に乗んな!』
青馬『ハハハハハ!!!』
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夏井(次で決めるぞ。青馬。)
青馬『おっけー。日向。』
夏井(二人で入学してから…ずっとずっと磨いてきた…この縦スラで…。)
青馬(俺の縦スラは…誰にも打たせるつもりはねえ。)
夏井が縦のスライダーのサインを出す。
青馬もそれに頷く。
鬼頭(勝負に来る…。)