No.286:絶対ダブルプレーエリア
《1点を追う延長12回の裏、先頭の副島が初球をうまく打ってヒット!ノーアウトのランナーが出てクリーンナップを迎えます!!》
夏井(外のボールからストライクになるアウトフリップのカーブをうまく流したな。ノーアウトランナー、一塁。別に同点になってもこっちがヤバイって訳でもない。けどめんどくせぇ。)
“ギアをMAXで行くぞ。青馬。”
青馬(もちろん。シバきあげてやるよ。)
『3番、ピッチャー、大場くん。』
余語『邦南は絶対に1点を取らなければいけない。逆転を考える前に、まず同点。』
桜沢『3番の大場だが…バントもあるか?』
余語『もちろん。むしろその可能性が高い。相手投手は青馬だしな。そうそう連打が出るものでもない。青馬お得意の打たせてとるモードでゲッツー、なんて最悪だしな。ましてや次の打者は鬼頭。』
夏井(十中八九バントだ。でも簡単にやらせはしねぇ。)
川越『青馬は投球の能力はもちろん、フィールディング、牽制など、投げること以外の投手として必要な能力もかなり優れている。さらにこの場面、簡単にやらせないためにも際どいコースを突いてくるだろう。』
野中『バントもバントでなかなか簡単じゃねえんだよなこれが…。』
《さあ初球!!!》
ビュウゥゥーーーッッッ!!!
スッ…
夏井(やはりバント!!!)
ヒュッ
ズッッバァァァァーーーーッッンッッ!!
《バントの構え!!しかし引いた!!》
『ストライク!!』
夏井(邦南も揺さぶりをかけてるつもりか。ただそれは自分たちの首を絞めることになるぞ。)
《牽制!!!しかしセーフ!!!》
副島(こりゃぁ…いい牽制やな…。少しでも気を抜いたらやられる…。無理にスチールしかけるのは得策じゃないな…。)
夏井(お前はそこでじっとしてろ。)
(((さて…バッターをどう料理するかな。)))
ビュゴォォウゥッッッーーッッ!!!!
《またバントの構え!!!》
カァァクゥゥッッッ!!!!
大場(な!?)
ズッッバァァァァーーーーッッンッッ!!
《2球目の縦スライダーは空振り!!バントでも当てることが出来ません!!この切れ味!!!》
夏井(このまま1球目のストレートをやっときゃよかった、なんてことにならないよーにな。邦南さん。)
青馬(これでもう…どーすることもできないべ。)
夏井(今の空振りをみてバント継続なんて無茶なことをすることは無いだろう。まして青馬がフィールディング得意な情報も持っているだろう。)
片野(バントは無理か…。こーなったら…ヒッティングしか…。)
夏井(ここでお前の腕の見せ所だ。青馬。)
(絶対にダブルプレーを取るぞ。)
青馬(当然だよ。日向。)
大場(サインはエンドラン。)
夏井(エンドランの可能性も高い。強い打球を野手の正面へ打たせる。)
《さあ第三球!!》
ビュゴォォウゥッッッーーッッ!!!!
《ランナー走った!!!》
夏井(やはりエンドラン!!しかしこのボール!!お前の運命は決まっている!!)
大場(やはり空振りを取るつもりはないな!)
夏井(インコース低めへのストレート。今日お前ら左打者はさんざんインコースへのカットボールで詰まらせて内野ゴロを打たせてきた。その残像は今日決して消えることはない。そしてまたそのカットボールと同じコースへのストレート。否応なしに体はさっきのカットボールの残像で反応してしまう。そう…詰まりたくないと。すると肩の開きが早くなり引っ張り指向が非常に強くなり、打球は右方向へ飛ぶ。しかしこの低めをすくい上げることはかなり難しい。ならば一二塁間を抜くしかない、が、しかし、)
(ショートを二塁ベースの真後ろへ、セカンドも絶対に一二塁間を抜かれない位置へ、ファーストは絶対に一塁線を抜かれない位置へ。)
(それはつまりこれが完成したことになる。)
“絶対ダブルプレーエリア。”
赤嶋『まずいぞ!!これは!!』
余語『ここでのダブルプレーは…試合の負けに等しい…。』