No.244:前だけを向いて…
《さあここで打席には4番の鬼頭天!!第一打席はバックスクリーンへのグランドスラムを放ちましたが第二第三打席は三振を喫しています!さあこの打席はどうなるか!?》
ビュゴゥゥゥゥッッッ!!!
カーン!!
『ファールボール!!』
大場『当てたか…。』
西口(シャープに振ってきた…。長打は捨てて繋ぐことを意識してきたか…?)
天(まだ振り遅れ…。これでもダメか…。)
西口(こいつ…バットを短く…。)
武田『おい!天が…!バットを…!』
下川『あのプライドだけは無駄に高い天が…』
増田『うぅ…目が痛い…。』
西口(だったらフォークで届かない場所まで落としてやるよ!)
ビュゴゥゥゥゥッッッ!!!
スットォォーーーッッーーーッンッッ!!!
天『ふんがっ!』
カーン!!
《これもファール!また二球で追い込んだ!》
西口(今のフォークについてきた…!?柔軟だな…。だがということは翔真先輩のフォークを相当意識しているってこと。だったらストレートで三振だ!)
ビュゴゥゥゥゥッッッ!!!
《内角高めのストレート!!》
カーン!!
『ファールボール!』
西口(当てた…だと!?)
天『負けられないんだよ…。この試合だけは…。俺が打ち取られたらおわっちまうも同然なんだよ…。』
博行『天のやつ…。』
大場『臨むところだ…!鬼頭天!』
天『オラ!来いや!』
大場『力ずくでねじ伏せて…』
“息の根止めてやらぁーっ!”
ビュワァァァッッッッッッッ!!!!
鬼頭天『デカイのは要らない!コイツらに勝つには…みんなの力を合わせなきゃいけねぇんだ!!!』
《痛烈ーーっ!センター前抜けた!!二塁ランナーは返ってくるか!?》
慶野『おっけぇ!』
大場『!?』
鬼頭博『は!?』
慶野『え!?まずい!!』
《これは…後逸した!!!雨で濡れてあまり跳ねない天然芝のここ甲子園球場!!鬼頭天の打球はセンター慶野のグラブの下!!!これは長打は避けられない!!!》
副島『嘘だろ…。』
松坂『まずいぞ!』
“カバーが間に合わん!”
《バッターランナー鬼頭天は俊足!驚異の身体能力!さあ速いぞ速いぞ!もう三塁!!回るか回るか!?!?》
副島『中継してくれ!』
鬼頭博『俺に任せろ!ここまで届かせろ!』
副島『おうよ!』
《さあ中継の鬼頭博行は深い位置!もう一枚中継がいる!しかし鬼頭天はもう三塁を回る!》
鬼頭博『中継なんて使ってたら…かえっちまうだろ!!!!』
ビュワァァァッッッッッッッ!!!!
《これは…大遠投だ!!!!》
鬼頭天『兄貴のことだ…!俺を刺しに来る!!!』
《さあライナー返球!!!なんとあの距離から、ストライク返球だ!!!タイミングは微妙!!》
ズザザザザザ…!!
『アウトォォーッッ!!!!』
鬼頭天『クソ…。』
慶野『助かった…』
副島『ナイスプレイ。ヒロ。』
鬼頭博『いっちょ上がりだぜ。』
鬼頭天『兄貴ィ…。ちくしょう…。』
吉川『ナイバッチ。』
鬼頭天『…。すいません…。一人でホームまで突っ込んだあげく…アウトになってしまって…。』
吉川『は?バカじゃねーの?あんなの鬼頭の返球がよかっただけだ。しかし今のバッティング。バットを長く持ってたら三振だったろうな。それに、お前が長打を狙ってたら、押し負けて外野フライだっただろうな。』
鬼頭天『すいません。ただのセンター前で。』
吉川『あほか。誉めてんだよ。バーカ。』
鬼頭天『?』
吉川『お前いま、楽しいだろ?野球。』
鬼頭天『…。』
吉川『俺もさ。この打席、最高に楽しみだ。なんたって…』
“やっとみんなが前だけを見て勝とうとしてるからな!”
『5番、ライト、吉川くん。』