No.242:どーしたら越えられますかね。
カキィィィーーーッッーーッンッ!!
《打ったぁぁーーっっ!!これは右中間を真っ二つに破った!!二塁ランナー島谷倫暁はホームイン!!先程グランドスラムの鬼頭博行、弟の鬼頭天からタイムリースリーベースヒット!!!!これで8対5!!》
鬼頭天(…。クソ兄貴ィ!!この野郎…!)
苑子『あなた。見ないの?博行、また天から打ったわよ。あの子達がせっかくこの大舞台で最高の勝負をしてるのよ。』
丈陽『天の気持ちを…考えたら…辛くなっちまってよ…。』
苑子『天、きっと嬉しいんじゃない?本当は。』
丈陽『あいつは野球から離れた博行に失望したんだ。俺の責任だ…。』
苑子『天と…昨日電話したのよ。』
丈陽『?』
苑子『そのとき言ってたの。‘クソ兄貴をぶっ倒すためにアメリカまで行ったんだ。絶対に負けたくない。’って。』
丈陽『天も慣れない地でよく頑張ってたな…。』
苑子『天が一年生のとき、博行は怪我したじゃない?でも天は三年生までずっとアメリカで頑張ってたのよ。お兄ちゃんに酷いこと言われて、ショックだったんだと思うわ。その事をいっておきながら今野球をまたやり始めた博行が憎いっていってた。あの子…結構根に持つタイプだし。だけどあの子…博行が野球をやめてからも、ずっと頭の中にある博行の野球姿を追ってきたの。それなのに…あの子が…嬉しくないわけないじゃない。』
博行『球が高いんだよ。だから俺に打たれんのさ。』
天『このォ…。』
…
ズッバァァァーーッッーーーッンッッ!!!
《6番、氷室は空振りの三振で後続続かず。しかし邦南高校、ツーアウト二塁から鬼頭博行のタイムリースリーベースで1点を追加して8対5としています。》
ザーザー…
大場『すげー雨だな。結構強くなってきた。』
ビュゴゥゥゥッッッッ!!!
大場『しまっ…』
西口『ど真ん中!』
カキィィィーーーッッーーッンッ!!
《打ったぁぁ!!大きい!!打球はセンターの頭の上を越えるぞ!!ツーベースヒット!!8回の表、楽秦工業、先頭の3番、奥田セペスのツーベースでノーアウトランナー二塁!初回以来のランナーが出た!!》
大場『手が滑っちまった…。』
『4番、ピッチャー、鬼頭くん。』
ザーザー!!
《おっと?これは選手を引き揚げさせますね。どうやら雨により中断の模様です。ゲームは現在8回の表、楽秦工業の攻撃。このままだと7回の攻防を終了していますので降雨コールドゲームが成立します。さあ天気はどうなるでしょうか。》
増田『おい。天。エースが体冷やすな。そんなところで雨に打たれてねえで戻ってこい。』
天『はい。』
増田(妙に素直だな…。なんか変な感じがする。)
天『重五郎さん。』
増田『なんだ?』
天『俺は、どーしたら兄貴を越えられますかね。』
増田『は?』