No.234:甲子園で駄々を捏ねるな
ザーザー…
《少し天気も悪くなってきました。ここ阪神甲子園球場。これから5回の裏、邦南高校の攻撃。5点ビハインドです。》
増田(まさかとは思うが…あいつらほんとに守備やんない気じゃ…。)
鬼頭天(うぜぇ…うぜぇ…。ぶっ殺してえ…。)
ビュゴゥゥゥッッッ!!
西口『うおっ!?』
ガツーーッーンッッ!!
《デッドボール!!先頭の西口が出ました!!》
鬼頭天(手が滑っちまった…。)
『6番、ファースト、氷室くん。』
片野『ここはまず一点。確実に取りに行くぞ。あの二遊間がいる中、そうそうヒットは出ない。』
《さあバッター氷室はバントの構え!》
ビュゴゥゥゥッッッ!!
コン!
増田『ピッチャー!!ファースト!!』
武田『!!』
増田『はぁ!?』
《あーっとこれは!?一塁ベースカバーがいないぞ!!》
増田『なにやってる!破刃!!』
氷室『ラッキー!』
《一塁は当然セーフ!!送りバントが内野安打となりました!!ノーアウトランナー一二塁!!》
増田『タイムお願いします!』
『タイム!』
内野陣がマウンドに集まる。
増田『おい!集まれ!』
鳴島破『なんでぇ?』
増田『いいから集まれ!わがまま言うな!』
鳴島破『やだぁ~。』
松坂『なんかゴタゴタしてね?』
鬼頭博『これは来たかもな。』
松坂『え?』
鬼頭博『後先考えないあいつらの悪い癖。自滅癖だ。』
《これは…なにか揉めてますかね?》
増田『お前ら!!いい加減にしろ!!剣刃!!破刃!!負けるぞ!?』
鳴島剣『いいんじゃね?負けてもどーせプロ行けるし。俺ら。』
鳴島破『重五郎はあれか!将来が不安だから大学から野球推薦貰うために勝ちたいのか!』
鳴島剣『自分の未来のために俺らを利用しようとしてるのか!』
増田『んな餓鬼みたいなこといってられる場合か!?』
鳴島剣『だって餓鬼だしぃ。』
鳴島破『まっとうに世の中生きていこうなんて思ってないしぃ。』
鳴島剣『犯罪だって重罪じゃなきゃやるし。また少年院はまっぴらごめんだけど、万引きくらいなら全然やるしぃ。』
来馬『お前なに言って…』
鳴島破『大丈夫大丈夫。バレないようにするから。』
増田『そーゆー問題じゃない!』
鳴島剣『なにいい子ぶってんの?お前も俺らと同じ落ちこぼれだろ?』
増田『何が言いたいんだ。さっきから…』
鬼頭天『ほっとけばいいんじゃないすか?こんなやつらの戯れ言。』
鳴島剣『殺す。』
鳴島破『調子に乗りすぎやな。』
主審『コラ!長いぞ!早くしなさい!』
増田『なあ剣刃、破刃。もう一回こっち向いてくんねえか?』
鳴島剣『やだ。』
鳴島破『断固拒否。』
武田(あーキャプテンじゃなくてよかった…。俺が重五郎の立場だったら泣いて逃げてるよ…。)
増田『仕方ない…下がれ。剣刃、破刃。』
鳴島破『は?』
増田『交代だ。お前らは邪魔でしかない。』
鳴島剣『それはウザい。』
鳴島破『プライドが許さない。』
増田『ダメだ。交代だ。』
鳴島剣『なんでぇー!!』
鳴島破『嫌だよー!』
増田『甲子園でだだをこねるな!』
武田(笑)
来馬(笑)
鳴島剣『わかった、守備するから交代だけはやめてくれ!』
鳴島破『ちぇー!』
増田『わかればオーケーだ。』
鬼頭天『…。』
増田『天。悔しいのはわかる。だが今はマウンドだ。投手としてするべきことを考えろ。』
鬼頭天『…。わかってますよ。』
武田(重五郎は、相手の選手を潰すと決めたら容赦ねえし怖いけど、ほんとに頼りになる男なんだよな。)
来馬『なあ龍一。キャプテンじゃなくてよかったよな。俺ら。』
武田『俺も心からそう思うわ。』
《さあ長いタイムが終わりました。ノーアウトランナー一二塁。打席には7番の松坂。》