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No.211:センセイショナリズム

『1番、ピッチャー、小宮くん。』




赤嶋(今日お前らの夏は終わる。それはなぜか、無論俺ら美鶴学舎に敗れるからだ。)



ビュゥゥッッ!


ズバァァーッーッーン!





『ボール!』




赤嶋(今日の先発が小宮ということは完全に調査通り。邦南も我々の調査能力を警戒して二回戦まで彼を使ってこなかった。そして地方大会でも一試合しか登板していない、情報量の少ない彼をぶつけようと思った。この程度のことなら応用心理学の序章でクリアできる。まあ得策だ。スタミナがまだ完全ではない鬼頭、比較的攻略しやすい、安定感にイマイチ欠けるエース大場、そしてこの密かな好投手、小宮。まあ小宮で妥当だ。しかしあなた方は重大なミスを3つ犯している。)




ビュゥゥッッ!





『ボール!』



赤嶋(1つ。それは先発投手である小宮を1番打者として置いたこと。2つ。4番に鬼頭を起用したこと。3つ。チャンスに強く打力がある氷室を2試合結果が出なかっただけでベンチスタートにしたこと。今まで打ち勝ってきたチームだ。先発を比較的珍しい小宮にしたことで、守備のリズムが少し変わってしまうのは若干やむを得ない。その分打撃のリズムは変えたくなかったんだろう。だから1番ピッチャー小宮。そういう意図でまず間違いない。だが打撃のリズムを変えたくなかったのなら、なぜ甲子園では結果が出ていないにしろ、地方大会で勝ち上がる原動力となったといっても過言ではない氷室をスタメンから外した?それこそ不自然であって打撃のリズムが変わる。やっていることが滅茶苦茶だ。可哀想に。あなたたちは無能な監督の采配でさらに負けやすい環境を作り出し出している。)



『フォアボール!!』



《初回先頭の小宮にフォアボール!!邦南高校、一回の裏、まずランナーが出ました!一方で美鶴学舎エースのさかえはイマイチ調子が上がらないか!?》





赤嶋(これでいい。小宮がピッチャーの間、こいつの打席は全て歩かせる。なーに。心配することはない。邦南の打者は確かにいい打者が揃っている。しかし全国区で大きな目で見てやれば、ヒロ以外は栄の投球で十分おさえられる。ヒロを4番に置いてポイントゲッターにしようとしているが、それは無理だ。なぜなら…)




《一塁牽制球!》




『セーフ!!』



赤嶋(今日ヒロは、この俺がいる限り、満足できる打撃は出来ない。)





《また牽制球!》




大場『出たよ美鶴学舎の常套手段…。』


西口『どのチームにも徹底してやがる…。』


鬼頭『投手は基本塁に出して…ランナーとしていたぶって次のイニング以降の投球に影響を与える…。』






副島『やってくれんじゃん。一年坊相手に。』


赤嶋『怒るなよ。別にルール違反をしているわけでもないし、怪我させようとしているわけでもない。むしろこっちからランナー与えてんだ。悔しいならご自慢の打線でランナー返せばいいだろ?』




ビュゥゥッッ!



カキィーーッッーーッン!




《痛烈な打球!!》



副島『よし!抜けた!』



赤嶋『うちの選手こそ、ここの能力は決して高くない。しかし、考えて野球をやれば、その実力は二倍にも、三倍にも、いくらにもなるのだ。』




《しかしセカンドの伏見ふしみ、素晴らしいポジショニング!セカンドベースのほぼ真後ろに守備位置をとっていた!これはゲッツーコース!》



副島『なんでそんなところに守ってるんだよ!?』


赤嶋(選手個々の能力を信じた強攻策。裏目に出たようだが…小宮哲都君。そう簡単にベンチには帰らせないよ。)




小宮『!?!?』



松坂『なに!?』



《おーっと、これは完全なゲッツーコースだったが、セカンドの伏見はそのまま一塁へスロー!ワンナウトランナー二塁です!》



大場『そんなに俺たちに打たれない自信があるってか。』


鬼頭『上等だぜ…。頭也…。』





赤嶋『かかってこい。大場翔真。まずは君からだ。』



『3番、ファースト、大場くん。』




赤嶋『そんなにお気に召さない?我々のやり方は。』



大場『別に。ルールに乗っ取ったやり方だ。文句は言わねえ。だけどよ…なめるんじゃねえぞ。』


赤嶋『君の方こそ俺をなめない方がいい。君たちの全ての打者のタイプ、待球の仕方、狙い球の傾向、苦手コース、性格など、細かく分析しているからね。』



大場『ご勝手に。どうぞ!』



ブン!




《初球は空振り!!》





ビュッ!



《また牽制球!ランナーの動きを警戒します!》



ビュゥゥッッ!





ブン!




《さあ2球で追い込んだ!そしてキャッチャー、強肩の赤嶋から二塁へ牽制リターン!気が抜けません二塁ランナーの小宮!》




大場『このやろう…。待ってろ哲都…。俺が返してやるからな!』



赤嶋『それは無理だ。』






ズバァァーッーッーン!






大場『この程度のピッチャーのストレートに…反応できなかった…?』



≪133km/h≫



『ストライーク!バッターアウト!』









鬼頭『赤嶋の自然感覚麻痺センセイショナリズム…。それは相手の性格や…手の内を完璧に読み、その情報を基に口車に乗せ、相手の感覚を麻痺させ…相手の感情を一時的に赤嶋の狙う方向に行かせないようにすること…。あいつにしかできない心理術…。そしてそれは…その情報量に比例して効果はより絶大に…。つまりこの試合…俺は赤嶋の術中に間違いなくハマる…。元チームメイト、そして幼なじみという間柄…、そして元バッテリー…。赤嶋に渡っている俺の情報量は莫大…。この試合…俺は赤嶋のてのひらで転がる…。まず間違いない…。』




『4番、セカンド、鬼頭くん。』




鬼頭(この試合…壁が厚い…。赤嶋のリードはあの野村さんのささやき戦術をも凌駕する…センセイショナリズム…。くそ…。)








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