No.210:赤嶋の野球論
《さあここで打席には今大会注目の、S・9の一人、南阪の扇の要、赤嶋 頭也!さあ今大会驚異の打率.875という数字を叩き出しています!》
鬼頭(ツーアウトランナーなしで赤嶋か…。これは助かったな…。)
赤嶋『西口君。君は何故キャッチャーをやっている?』
西口『そりゃ、たのしいからですよ。ピッチャーの球種、配球、調子を操る応用力。打者を抑えた時の快感がたまらないんで。』
赤嶋『随分と抽象的だな。野球の本質を見定めていないように感じるのだが。』
西口『?』
赤嶋『野球において何が重要か考えたことがあるか?』
西口『練習ですか?』
赤嶋『かすっているが違う。別に俺が野球の定義、本質を造り出した訳ではない。しかし人類が過去から現在まで造り上げてきた、野球というスポーツには、当然、一つ一つの重要性が関与している。』
西口『具体的すぎてわかんないですよ。』
赤嶋『野球において重要なのは、‘確率’だ。』
西口『…。』
赤嶋『効率の良い、無駄の無い、理想的な打撃フォームで打てば、理想的な打球が打てる確率が上がる。無駄のあるフォームでは常に理想的なフォームで打つことは出来ない。どんな球が、どんなタイミングで、どこに来ても対応できるミートスポット、スイングの軌道は常に一定。それこそが理想。そのフォームこそ、より良い打球を生み出すための確率上昇に直結する。野球とはすべてにおいて確率。ある意味運のスポーツだ。そのスポーツにおいて勝ち上がるには何が必要か、それは良い方向にはたらく確率を上げること。無駄が少しでもあるにつれ、その確率は比例して減少する。それはつまり、勝つ確率も減少しているということ。無駄は無くせ。森羅万象において可能性を100%にすることは出来ない。ただ、無駄は0%にできる。それで勝つんだ。そしてその、確率を100%に近づけるためにするのが練習。そーゆーわけだ。』
ビュゥゥッッ!
ギュルギュルルル!!
赤嶋『俺の打撃フォームは無駄が無い。だからどの球をが来ても対応できる確率が高い。どんな球も俺の前では…』
カキーーッン!
西口(哲都の四段ドロップを初見で!?)
赤嶋『ただの‘球’でしかない。』
《打ったぁーっ!!》
パシィィッ!
小宮『トモアキ先輩!』
《しかしショートの島谷倫暁のダイビングキャッチ!スリーアウトチェンジ!》
赤嶋『理想的な打球を放っても、必ず結果が実るとは限らない。良い結果にならないのもまた、確率だ。』
小宮(三人で仕留めたのに…なんかすごい神経を削られたな…。)
鬼頭(赤嶋…アイツの本職は打撃ではない…。ここからが本当に恐ろしい…本気のアイツだ…。)
『1番、ピッチャー、小宮くん。』