No.208:戦力分析~赤嶋 頭也~
栄『で、結論を言うと、どんなんなの?』
赤嶋『邦南の驚異の2番手、鬼頭博行。あいつはお前らも知っての通り俺と同じ南阪中のエースだった男だ。一回戦二回戦を見る限りストレートは最速155km/hだが、もっと出る予兆はある。さらにウイニングショットの150km/h台のストレートとほとんど変わらぬ速度の超高速シュート、切れ味抜群、制球力抜群の実質鬼頭のピッチングを成り立たせているスライダー。カウント球、かつスタミナ温存、さらには下位の打力が劣っている選手を中心に、緩急としても使ってくる高精度のチェンジアップ。この4球種があいつの持ち球だと思っていい。』
今池『それって結構ヤバくね?こいつだけじゃなくエースの大場もいるってんのに。』
赤嶋『黙って聞け。鬼頭は一見超高校級のピッチャーに見えるが弱点も当然ある。僅かだがな。』
塩釜口『なんだよ。それ。』
赤嶋『あいつは長年の怪我の影響でまだ投げるスタミナが完全ではない。事実陽灘学園戦でもリリーフして5イニング目あたりから明らかに制球力やスピード、変化球のキレが落ちてきている。スタミナ切れを狙って粘る。なんてことも考えられる。むしろそれが常套手段だ。だが、』
名古屋『だが?』
赤嶋『そんなのはあいつの球を打席でみていないやつの考え方であって正攻法ではない。』
『断言する!あいつの序盤の球はカットなんてする余裕もないものだと思え!』
多賀谷『じゃぁどーやって打つんですかぁ?』
赤嶋『アイツの癖を言おう。長年あいつを見てきたキャッチャーとしてな。』
亀丸『癖…?』
赤嶋『アイツは基本的に、本気を出したくない投手だ。本能的にアイツには先発完投という文字が備わっている。むしろ完投とはアイツの新陳代謝だ。だからそれを狙う。』
多賀谷『どぉーやって?』
赤嶋『バットを振らなきゃいい。そーすればアイツのことだ。こっちがアイツのスタミナ切れを狙っていると嫌でも気づく。そーすればおのずと本気じゃない球が来る。それを狙え。だが、この一球を確実に仕留めなければいけない。』
栄『ちょっときびしくね?』
赤嶋『別にいい。バレたら作戦を変えればいいだけの話。俺には他にいい案がある。』
名古屋『じゃあ大場はどーすんの。』
赤嶋『あー、アイツはフォークのある低め捨てて高めに集まるストレートを狙えば攻略できる。その程度の投手だ。ノーヒットノーランなんて放っておけ。勝負にそんな敵の実績なんて見たって邪魔だからな。』
…
大場『美鶴学舎、今大会無失点なんですよね。』
鬼頭『ああ。まぁ赤嶋がいるから当然っちゃ当然だけどな。』
…
そして、決戦の時
美鶴学舎vs邦南
《激戦区神奈川を全試合完封で勝ち上がり、この甲子園でも2試合連続完封勝ちの、絶対防御の超進学校、美鶴学舎!!対するはこちらも激戦区、愛知を制した公立の雄、二回戦の陽灘学園戦では奇跡の大逆転勝利を果たした超進学校のミラクル邦南!!ともに進学校の対戦!!》
先攻・美鶴学舎(神奈川)
1:右:亀丸 健太
2:遊:多賀谷 広大
3:捕:赤嶋 頭也
4:中:名古屋 勇馬
5:三:塩釜口 大護
6:一:今池 誠
7:左:金山 猛雄
8:二:伏見 暁
9:投:栄 清二郎
後攻・邦南(愛知)
1:投:小宮 哲都
2:右:副島 充
3:一:大場 翔真
4:二:鬼頭 博行
5:捕:西口 拓磨
6:三:松坂 健祐
7:遊:島谷 倫暁
8:中:慶野 文哉
9:左:藤武 将希
野中『邦南はだいぶオーダーをいじってきたな。』
川越『先発が小宮…、そして一回戦二回戦と全くいいところのない氷室がベンチスタートか…。思いきってきたな…。』
野中『はまれば効果は絶大。すでに相手も意表をつかれただろう。が、リスクも高い。』
川越『この試合、序盤からいきなり見物だな。』
金山『は?それで意表をついたつもりかよ。』
名古屋『おれたちの情報量をなめんなよ?』
赤嶋『ここまではプラン通り。さぁ、いこうか。』
『1番、ライト、亀丸くん。』
『プレイッ!!』