021
最近、ノワールが人生の大半の期間、欲し続けていた事柄が手に入り。
それが思っていたモノとは違って、喜ばしい事ではなかった事。
誤解が解けた相手との和解ができても、罪悪感に苛まれる相手からは、
こちらが欲している気持ちや態度、
親しい関係性は貰えないと言う事実をノワールは知る事となる。
そして、自分に対し、
上から目線で命令ばかりしてきて、振り回してくれていた相手。
何時の間にか失っていたその相手との関係性の終了の仕方に涙し、
失う事しかできなくて、良い事が無さ過ぎて現実逃避をするのは、
ノワールではなく、ノワールの中のノワだった。
そんなこんなで今回もまた、心の底に閉じ籠ったノワ。
今回は、その影響と、ノワールの中の住人の裏切り。
周囲の人間達の配慮で、
ノワールは、国内情勢に気付く事が出来なくなっている。
ノワールの中に存在する者達は、
事前に全て、実の父親と祖父である者達から、今後の予定を話され、
ノワールの中で、ノワールに干渉する事無く、過ごしていた。
ノアは、虚ろな瞳のビスクドールのノルに、
『そんな事をしても、ノワールは喜んだりしないのにね』と、
静かに語り掛け、
『ブランシュや継母の心も欲しがっていた強欲なノワはきっと、
後になってから「もう手に入らない」って、泣くのでしょうね、
面倒臭いわ』と、憂鬱そうに溜息を吐く。
ノールは『それにしても、気ぃ~悪いよなぁ~』と、
大きなソファーに寝転がり、
『蚊帳の外に出されるとか、おもんないし!
やられたんウチ等やのに、
王妃とブランシュに反撃させてくれへんとか、無いわ!』と、
憤りを抱え、ふてくされている。
ワールはいつも通り、殻に閉じ籠ったノワの上にテーブルを作り。
飲み物や食べ物を準備しながら、
『腐るなよノール、エルス兄さんからの御願いだぞ?
フォルマ爺さんもアシエも、
ちゃんと私等にお願いして来たんだ、従ってやるのが筋だろ?』と、
静かに笑い。2人から『『買収された癖に』』と言われ、
頬を赤く染めて俯き、黙り込んだ。
『ワールは色欲担当のなのに、暫くの間、私達全員が黙って静かに、
ノワールの中に引き籠る取引条件が「エルステからのキス」で、
それも、強欲担当のノワの力を借りれなくて、
額に軽くされただけで納得させられてしまうだなんて、
ちょっと駄目過ぎでしょ?どうよ?馬鹿なの?
もっと欲を出して、大きく出られなかったの?』
『そうやで、どうせなら兄さんに「抱いて下さい」くらい言いいや』と、
ノアとノールに言われ、ワールは耳まで真っ赤になってそっぽ向く。
ノアは、そのワールの様子を見ながら、
『え?でも、それもどうなの?
「抱いて下さい」って、ワールがエルステ兄さんに言えたとしても、
ワールの事だからきっと、軽く抱き締められて、耳元で、
「お前は、ホンマ良い子やな」とか、
「こんなんで、頼み事聞いてくれるとか、ありがた過ぎるわ、
今度、一緒にゴハン食べ行こうな?高いの奢ったるで?」とか、
エルステ兄さんに笑顔で言われて、丸め込まれて、
目尻に涙を溜めながら、何も言えなくなるのが落ちでしょ?』と、
冷静な目で見た見解を述べる。
ノールは苦笑いし、『そやな、兄さん、こっちの意図に気付いても、
受け入れては、くれへんやろうしな』と言って吐息を吐き、
『ノールもワールも、本当に愚か者ね!』とノアは笑う。
『後悔するくらいなら、
エルステ兄さんと、アシエの娘オランジュさんの恋を実らせる為に、
虚飾のノルの力を借りなきゃ良かったのよ……。
未練残して、「最後に一度だけ」って思って、勇気出して、
今回みたいにスルーされても、逆に受け入れられたとしても、
虚しいだけでしょ?馬鹿なんじゃないの?
そんな事して、兄さんの恋を破局させる事になったらどうするの?
アナタ達の事だから、もっとずっと後悔する事になるわよ!』と、
ノアは眉間に皺を寄せながら不機嫌に言う。
ノールは舌打ちし、
ワールは黙って、返事をする事も出来ず、皆に食事を配膳した。
ビスクドールのノルは、
ノアの腕の中で、儚げな静かな微笑を湛えているだけだった。
そんな、今日この時、ノワールは、国王であった実の父親と、
継母、腹違いの姉であるブランシュをも失う事になっていた。
国王は表向きに、『死者を弔う為に出家する!』と宣言して、
王の座をアンブルに譲り渡す形で、その日、自ら旅立ってしまった。
王妃とブランシュは、秘密裏に、
その王の最後の命令で、終身刑の者が入る修道院に入れられ、
そこに入らぬ限り、会う事が出来ない存在になってしまっていた。
そんな、国王の交代劇は、
先先代の王となった先代の王の力で大きく取り立たされ、
大きなお祭り騒ぎになったのだが、大きな難点を残す事になる。
以前、
ノワールが一人で罪を被ったブランシュ主催の夜会での事件の事。
ノワールを排除する為、ブランシュと元王妃が広めた嘘も、
ノワールを殺す為の火種となって、
アンブルの前に持ち出されてしまったのだ。
ノワールを罰する事を拒否すれば、国が揺らいでしまう程の火種は、
王位を継いだアンブルへの悪意。
アンブルが存在しなければ、王位に付けた筈の、
王位の継承権がある親戚。身内の者達からの嫌がらせである。
先々代になってしまった先王様の元で、ノワールは「その事」を知り。
先王となった父親から、最後に貰ったプレゼントの中で一番、
ノワールが嫌う。ブランシュが好む様な、
華美なデザインの服を選び。それに身を包んで、
誰に知られる事も無く、王の為の部屋に忍び込み、
アンブルの前に姿を現した。
人形の様に表情を崩さないノワールは、ノル。
アンブルは疲労困憊の状態で、目の前のノワールをノルと認識し、
『もしかして、「須らく物事を受け入れて、実行しろ」って、
言いに来たのか?』と、そんな「ノルの来訪」を受け入れる。
『理解しているのなら、明日にでも、実行すると良い。
ノワールを含めたノワールの中の住人を全て飲み込んで、
私が処刑台の上に立ってやろう。私なら、抵抗はしない。
それが一番、この国と、貴方の為になる筈だ』と、
ノルは部屋の扉が閉まるなり、自分の意見を伝え、
アンブルの部屋のベットの上に腰かける。
アンブルは『俺の気持ちを知っていて、それを言うのか?』と、
『出会った頃、父上の暴力から、
お前を救い出せなかった俺への当て付けか?』と、苦しそうに言う。
ノルは表情を変えず、
『世間体と、近親相姦である事を気にして、ノワールに手を出せない、
兄と言う生き物をいじめに来た訳ではない。』と言い。
アンブルが表情を崩してしまう程、心底驚いたのを見て、
ノルは「本当に、そっち系の人だったんだな」と、
ある意味でアンブルに対し、残念に思いながら、
『今回は、エルステが「虚飾」に奉げた心を他者に移したから、
貴方だけに選択肢を持参してきただけだ。』と言い、
『まず、1つ目は、
私が処刑された振りをして、本体諸共、この国から消える事。
2つ目は、ノワールが、他の誰かのモノになる事も許せないのなら、
殺されてやっても良いだろう。と言う事、……。以上、2つだけだ。
アンブル国王!2択で申し訳ないが、貴方が決めてくれ、
私はそれに従おう。』と、言ったのだった。




