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その日の夕方、ブランシュが立案し、国王と王妃が承認した。
ノワールを毒殺する為だけの夕食会は、慎ましやかに実行された。
その場には、ノワールの周囲に密偵を潜り込ませていたアンブルと、
密偵とアンブルの会話を耳にして、参加を申し出たセイブルが、
有無を言わさず席に着き。一人で抱えきれなくなったアシエが、
フォルマに話を持って行き、耳にする事になったエルステが、
変装し、強引に警備兵として潜り込んでいる。
国王や王妃は勿論、ブランシュにとっても、想定外な事だろう。
ノワールは、派手過ぎず、みすぼらしくも無いドレス姿で現れ、
自然で不快感を与えない挨拶をして、表情少なく、
王と王妃とブランシュが望んだ。一番下座の席に座った。
密かに潜り込んだエルステが見守る中、アンブルとセイブルと言う。
ブランシュの計画には無い部外者を迎えた夕食会は、
一皿目、二皿目と運ばれ、コース料理が順序良く配膳され
食事が進んで行くが、国王と王妃、ブランシュの表情には、
苛立ちが浮かび上がり始める。
ノワールは料理を口にしながら、
『不作法ながら、失礼します。ブランシュ姫、
気になるなら、私が食べている料理を食べてみますか?』と、
微笑を浮かべた。
ブランシュの表情が一瞬、硬直する。
それを確認したノワールは、ブランシュを見下した様に微笑みながら、
『貴女様の指示した通りのモノは、ちゃんと料理されて、
私の皿の上にありますよ?それなのに、お気に召しませんか?』と、
赤い実をホークに突き刺して、ブランシュに見せ、
『これ、王宮の生薬畑にあるマンドレイク、だったりして?』と、
意味深に明るく笑う。
そして、ノワールは平気で、それを食べて見せてから、
『お忘れかもしれませんが、私ってば、薬科系のプロなんですよね、
侮辱するにも、程がありますし、
美味しくも無い物を食べさせられる私の身にもなって下さいよ』と、
王妃に『いい加減に知ってましたよね?王妃は』と同意を求め、
『あぁ~それと、ブランシュ様、計画を内密にしたいなら、
下書きの命令書は、最低でも、文字のある方を内側に折るか、
丸めるかして、ゴミ箱に入れてしまうね、
できるなら、御自分で燃やすなりして、隠して下さい。
部屋に誰も立ち入らないように制限しても、
窓を開け放った部屋に放置するとか、駄目ですよ?
落ちていたのを拾って読んでしまったじゃないですか……。
色々な意味で、本当に残念で仕方がありません。』と言って、
ブランシュを責める。
戦慄く王妃とブランシュを見て、
「毒」という単語を出さない毒のある会話に男性陣が閉口する。
それでも、ノワールは攻める事を止めず。
『それ以前に私、
どんなのを口にしても、大丈夫な生まれなんですよ?
御存じありませんでしたっけ?』と伝える。
ブランシュは頬を染め、不安そうにセイブルを盗み見ていた。
ノワールはブランシュに対し、残念そうに溜息を吐き、
『それと、もう、
他の兵士も口にする食べ物に、悪戯するのは止めて下さいね。
今日、お付き合いしたんだから、そろそろ理解してやって下さい。
御理解いただけますよね?』と言って立ち上がると、
『国王!今回の事におきましては、
洗い清める為の御見舞金が必要かと思います。
被害状況に関する証拠と書類を明日にでも提出しますので、
もう帰っても良ろしいですか?』と答えを待ち、王が頷くのを待って、
ノワールはその場を立ち去った。
ノワールが立ち去った後も、食事は続き、その食事会が終わった後。
確認の為、ノワールが食べた皿の料理の痕跡に舌を這わせ、
数人の毒見役が命を落としたのは後日談。
今回、結果的に、被害は毒見役数人だけで済み。
ノワールが、潜入していたエルステの力を借り、意表を突いて、
その日の内に、自らの手で提出した物理的証拠と書類。
ノワールが同伴させた過去を見せる魔術師の能力が示した証拠で、
ノワールが国王を地味に脅し、王妃とブランシュの行動に制限を掛け、
今回は、
王妃とブランシュに、ノワールが恨まれるだけで事無きを得た。
今までとの違いは、
ノワールが同伴させたスラム出身の魔導師が密かに、
出征を偽り、国王直属の者になった事以外では、何事も無く。
ノワールは翌日からも、通常運転で仕事をこなす事になる。
その間にアンブルとセイブルは、先王様の権限を借りて、
今回の毒物事件の事を調べ、
それが昨日、提出された事に驚きながらも証拠を閲覧、
過去を見せる魔術師の水晶球の方も、
力を増大させる魔法を使うノワールが不在な為、
国王が見たモノより不鮮明なモノではあるが、それ映像を閲覧して、
心を沈ませ冷たく冷やす。
今朝の朝食の席で、珍しく早起きした王妃とブランシュが2人に、
昨晩の夕食会での事を取り繕おうとしていた光景が、
今回、今となっては、逆効果となっていた。
そうとは知らない王妃とブランシュは、
アンブルとセイブルと会う度に、その後も逆効果となる会話を続け、
心証を悪くし続ける。
国王は、何が原因なのか?その現場に居合わせても、物思いに耽り、
その事を王妃とブランシュに伝える事は無く。
社交の席で、嘘を触れ回る王妃とブランシュを止める事も無く。
弱々しく老け込んだ表情で、溜息を吐く事しかしなくなった。
それから数日が過ぎ、
アンブルとセイブルの冷たい反応に業を煮やした王妃とブランシュは、
存在しない罪をノワールに着せ、断罪して排除する事に徹する。
ブランシュを筆頭に、王妃も一緒になってが流した噂は、
貴族達を通し、使用人を通じ、国民に流れ、
アンブルやセイブルの耳にも届いた。
それは、ブランシュが立案し、
国王と王妃が承認したノワールを毒殺する為だけの夕食会での事。
それが、何時の間にか、
「ノワールが王族を毒殺しようとした事」になって、
周囲に伝わっていたのだ。
アンブルは、それを良しとしなかった。
セイブルも勿論、それを良しとしなかった。
怒った2人は、国王にその事を伝え、軽く流され、憤り、
先王様の手を借りて、
現在の国王共々、王妃とブランシュを断罪する事にする。
「ノワールを守る」と、
一致団結したアンブルとセイブルの意思は固く。
先王様の暗い表情に、2人は少しも気付く事は無かった。
ノワールとノワールと近しい者達の不在も、
先王の手に寄るモノと勝手に思い込み。信じて疑わず。
アンブルとセイブルは色々勘違いしたまま、断罪の場を設け、
アンブルは王となり、セイブルはその証人となった。
その断罪の準備がされていた頃、ノワールは、国王から直々に……。
『仮面を被る事も、黒い服を着る事も2度としなくて良い』と、
白っぽい衣装を大量に贈られ困惑し、
長期休暇を貰ったフォルマとエルステ、アシエの一家と共に、
保養地に出掛け、その時、国内に起きている事態に、
気付く事は無かったのだ。




