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001 Prologue

創世記に出てくる。カインとアベルの様に、

兄である自分より、愛される弟を持った国王様がいた。

その王様の子供も、「嫡男」より「次男」の方が皆に愛されていた。


国王様は、自らが抱えた亡き弟への葛藤や嫉妬心に従い。

自分の分身であるかの様に、嫡男を必要以上に甘やかす。


毒親になった国王様に、誇張無しに甘やかされ育った嫡男は、

善悪の区別が自己流で、自分にとっての正義以外を認めなかった。

そして、次男と三男を虐げる事が常識で、

虐げる事で、喜びを感じるタイプの大人に育った。


だが、しかし……。

誰かを虐げる事で、喜びを感じる人間に対して、

誰も、無条件で褒め称える事は無かった。


嫡男は大人になってから、

誰からでも褒め称えられる「次男」に、強い嫉妬心を抱く。

嫡男は、次男に対し、

自分より格下である次男の立ち位置と言うモノを教えてやり、

自らの自己顕示欲を満たしたいと思う様になった。


そこで嫡男は、

次男と愛し合っていた「次男の婚約者」を取り上げる事を考える。


嫡男は、悪びれる事も無く、当たり前の様に、

国王様から与えられていた権力を駆使し、強引に、執拗に追立て、

悪質な方法で「次男」から「恋人」を奪い取る。


嫡男の力を誇示する材料として、「次男から奪われた恋人」は、

心から愛していた「恋人」と「両親」を盾に取られ、

自己犠牲を強要され、嫡男への元への嫁入りを余儀なくされた。


幼い頃からずっと、嫡男から嫌がらせを受け続けていた「次男」は、

自らの愛を貫く為に、周囲に自分達の純愛を訴え続け、

嫡男が今までやってきた非道徳的な行いをも、周囲に告白して回る。


国王様は、それを良しとせずに、理由も聞かずに怒鳴り付け、

嫡流継承の話を持ち出し、『後継ぎでは無いのだから』と、

次男に対し、他国の姫との縁談を命じた。

次男は、それを受け入れる事を一度もしなかった。


そうして迎えた。兄と、兄に奪い取られた恋人の婚礼の日。

結婚式への出席を強要された次男は、

国王様と神官の目の前で、己が抱えた狂気を曝け出して見せ、

自分が二度と、誰とも縁談が結べぬ様に、その場で自らを去勢する。


次男が願うのは、「兄に奪われた恋人」彼女専属の宦官になる事。

だが、それは、国王の考える世間体から外れる為に、却下される。


その願いすらも断られた次男は、

『「この顔が目立つ」と言うのなら、この顔を捨てましょう』と、

松明で自分で顔面すらも、焼き捨ててしまう。


そうやって、出血多量と、火傷で、命を落とし掛けてやっと次男は、

国王の言う「我儘」と言うモノを通し、

「兄に奪われた恋人」を遠くからでも見守れる場所に辿り着いた。



その頃、恋人との幸せを奪った。憎き相手の嫁にされてしまった娘は、

夫を愛する事ができる筈も無く、嫡男を殺したい程に憎んでいた。


恋人と両親を人質に取られ、恋人と両親への愛の為に我慢し、

嫌いな夫との夫婦生活の苦痛に涙を飲み込み、耐え続けていた娘は、

何時しか、精神障害を患ってしまう。


それに気付いた彼の人は、国王様と神官達に通達し、

本物の医者を手配して貰い。

日常生活をも普通に送れなくなっていた娘を嫡男が通う後宮から出し、

病気療養を盾に、嫡男と会わなくて良い様に神官達に護って貰った。


彼の人は、その日から、

愛しき娘に見付からない様に気を付けながらも、

毎日、身体に良い食べ物を持って来ては、離宮に入り込み。

持ち合わせた知識で薬を調合し、秘密裏に娘を労っていた。


そんなある日、

娘は、自分を心配し、自分の様子を見に来ていた最愛の人と再会する。

醜く変貌した最愛の人。娘は、その顔の火傷の痕に恐れ戦く。


彼の人は、娘の様子を見て、焼け崩れた顔で悲しげに微笑み。

『この顔が恐ろしいなら、近くには行かない。

こんな私の思いを受け入れてくれなくても良い。

兄の所為で不幸にされた貴女が、少しでも幸せな気持ちになれる様に、

何か、私にできる事は無いだろうか?』と、言う。


自分と同じくらい、もしかしたら、もっと……。

きっと、ずっと凄く辛い思いをしたであろう最愛の人からの言葉。

娘は、自分を愛し続ける為にすべてを捨てた恋人に癒され、

2人は、互いの状況を受け入れて、愛し合う様になった。



それからの彼女は、盾に取られていた両親を救う為に、

秘密の恋人の支えで、義務を果たし、夫との子供を孕む。


妊娠中、精神的に不安定になった彼女を支えたのも、

秘密の恋人である「彼」だった。

その結果、誰が見ても、親密過ぎる2人に悪い噂が持ち上る。

それは、嫡男である次期国王の耳にも届いた。



ある日、虐げられた恋人達は、寄り添い合い。

何をするでもなく、2人で、静かな時間を過ごし、

心だけを結び付け合っていた。


それを見て、次期国王は激怒した。

妻の隣にいた男を殴り飛ばし、続いて妻をも拳で殴り。

妻の腹を蹴ろうとした所で、その男に邪魔される。


それが醜く変わり果ててはいても、自分の弟だと判明するが否や、

切り殺し、殺したり無いのか?

その顔の原型が残らないくらいに、剣で叩き潰してしまう。


それを止めようとした妻は、切り捨てられ、払い除けられて、

硬い地面の上に倒れた。


彼女は、肩から斜め下に向かって、深く切られ、

傷と出血で動けなくなった体で、

愛する者を再度奪われた悲しみと、夫への恨みを叫び、

意図無く、人を集めた。


その事件は、国王様からの緘口令の為に、

国王の次男の死と、

嫡男の複数存在する妻の一人の死と共に葬り去られる。


次期国王は、何の御咎めも無く。それが当り前であるかの如く。

弟を葬り去った勝利の美酒に酔いしれ、

死んだ女の腹から救い出された小さな赤子は、実の父親から、

ファーストネームに異国の言葉で、黒を意味する「ノワール」、

ミドルネームには「姦淫ミスカンダクト」と言う。

不埒な名前を与えられる。


救いの無い出生を背負って生まれた娘を不憫に思った神官達と、

自分の孫のミドルネームが「姦淫」と言う名では、

どう考えても、外聞が悪いと考えた国王様は、

特別、何にもなければ、嫡男は「気付きもしないであろう」と、

MisconductをMisconstrueと書き、

「姦淫」を「誤解ミスカンストゥルー」に変更した。


その後、不幸な女が産んだ国王様の孫の名を紹介する時、

「ノワール・M・グレンデル」と紹介し、

正式な書類と、家系図には、

「ノワール・ミスカンストゥルー・グレンデル」と、

秘密裏に書き込んだのであった。



萎びた古い酒場で話を訊いていた吟遊詩人は、

『あかんやんそれ、純愛かもしれんけど、不倫やん!

そもそもそれ、誰得の話なん?突っ込み所が満載やし!』と笑い。

吟遊詩人に話を故意に尋ねさせた男も笑う。


相手が同意見なのだと、勝手に確信した吟遊詩人は、その後、

拘りを犠牲にすれば、皆を幸せにできた国王様を批判し、

純愛の果てに生み出された不倫の子と疑われている姫に対し、

『そんなんやったら、

産まれる前から母親からも、愛して貰えんかったやろうな……。

大人になったら、政略結婚とかさせられる運命やろうに、

誰からも愛されん姫とか、不幸過ぎるやろ?』と言い。

男にある決意をさせた。


「だから私だけは、何があろうと、あの娘を純粋に愛して、

味方であり見守り続けて、やらなければならないのだよ」と……。

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