表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

323/327

【第323話:黒ショルダム vs インフェルナ…そして】

『妨害行動──排除』


 無機質な声が、空間を震わせる。


(こいつ……!)


 ロイは黒ショルダムの操縦桿を握りしめた。


「トービン、援護頼む!」

「任せろい!! ……ただし五十肩が……」

「黙ってろ!!」


 横でショルダムアルファが武器を構える。


 インフェルナが消えた。


「――ッ!?」


 次の瞬間、黒ショルダムの視界いっぱいに白銀の刃が迫る。


「ロイっ! 右!!」


 トービンの叫びで、ロイは本能的に操縦桿を叩く。


 ギィンッ!


 刃が黒ショルダムの頬装甲をかすめ、火花が散った。


(速ぇ……! マークツーより段違いに速ぇ!)


 インフェルナの攻撃は、視認してからでは避けられない。


『人間の反応速度では──対応不能』


「やってみねぇとわかんねぇだろ!!」


 黒ショルダムが拳を繰り出した。


 が──


『遅い』


 インフェルナは片手でその拳を受け止めた。


「なっ……!?」


 瞬間、インフェルナの脚がロイの機体の胴にめり込む。


 ドゴォッ!!


「ぐぁッ!!」


 黒ショルダムの巨体が10メートルふっ飛ばされ、床を抉りながら滑る。


「ロイ!!」


(やっぱ……ヤベェ相手だな……!)


 ロイの額から汗が流れた。


「トービン!! 行くぞ!!」


「おおらぁああ!!」


 アルファが重火器を展開し、砲撃の雨を放つ。


 空間が光の矢で満たされる。


 だが──


 インフェルナは滑るように空間を歪ませて消えた。


「っ!? どこ行った!!」


 死角。


「トービン後ろ!!」


「え? あっ」


 インフェルナの蹴りがアルファの肩に叩き込まれた。


 バキィ!!


「うおッ!? 肩がッ!! 五十肩がッ!!」


「そこ五十肩関係ねぇだろ!!」


 だがトービンの悲鳴が響いた瞬間──


 ロイの肩にも疼痛が走った。


「……っ、痛ぇ……!?」


 黒ショルダムの内部表示が波打つ。


【同調率…上昇】


「同調……? まさか、黒ショルダムは……!」


 ロイの精神を侵食しようとする“何か”が、機体内部に流れ込んでくる。


 思考が濁る。

 視界が揺れる。


『……破壊……破壊……』


(ダメだ……這い寄ってくんじゃねぇ……!)


 インフェルナはその隙を逃さない。


『優先排除』


 白銀の刃が黒ショルダムへ突撃。


「ロイ!! 起きて!!」


 ユナの声で、ロイの意識が一瞬戻る。


「クソっ……!」


 腕が勝手に動く。

 肩が悲鳴を上げる。


(操られ……そうになってる……! でも……!)


「四十肩……なめんなよ……!!」


 ロイは痛みで逆に正気に戻った。


 黒ショルダムの腕が再び動き、インフェルナの斬撃を受け止める。


 ギィィィィン!!


『反応速度……異常上昇。理由不明』


「理由? こっちは痛ぇんだよ!!」


 黒ショルダムが刃を弾き返し、反撃の拳を叩き込む。


 ドガッ!!


 インフェルナの腹部装甲が割れ、火花が飛び散った。


『……初めての損傷……記録』


「ロイ、同調率が上がってる! 今なら行ける!!」


「わかってる!!」


 黒ショルダムが一気に加速。

 操縦桿が勝手に震え、ロイの思考と機体の動きがほとんど一致していく。


「おおおおおおおお!!」


『来る……!』


 インフェルナが両腕の刃を展開。

 光がうねり、塔内部が真昼のように輝く。


 乱撃。

 回避。

 反撃。

 爆発。


 すべてが高速で交錯する。


 黒ショルダムの装甲は剥がれ、内部フレームが露出。

 インフェルナも片翼のような補助装甲が吹き飛んでいる。


『……楽しい……戦闘……記録更新……』


「楽しんでんじゃねぇ!!」


 最後の一撃をお互いに放つ。


「うおおおおっ!!」


『排除完了……ッ!!』


 ドォォォォォン!!


 光の爆風が塔を揺らす。


 そして──


 両機は、同時に崩れ落ちた。


 黒ショルダムのコックピットが勝手に開いた。


「ロイ!!」


 ユナの声が近づく。


 崩れたインフェルナの外装からも、白い生体部品のようなものが歩み出た。


 ロイは、ふらふらと立ち上がった。


「……生身で……終わらせる……」


 肩は痛い。

 全身が傷だらけ。


 だが──


「四十肩に比べれば……こんなの……!!」


 インフェルナも生身(のように見える)肢体を構える。


 拳を握る。

 互いに一歩踏み込む。


 ドッ!!


 拳が交差した。


 ロイは膝をつき、それでも立ち上がり──


「……勝つのは……こっちだぁぁぁ!!」


 最後の拳を、インフェルナの仮面へ叩き込む。


 白い仮面が砕け散った。


 インフェルナは崩れ落ち、光の粒となり消えていった。


「……っ……はぁ……はぁ……」


 ロイの視界は揺れ、遠くでユナの泣き声が聞こえる。


「みんな……無事なら……それで……」


 そのままロイは力尽きた。


 ロイはそのまま、静かに意識を手放した。


「おい……ロイ……! 寝るな……! おい……!」


 トービンが心配そうに覗き込みながらも、ホッとしたように笑った。


「……ほんっと……バカだな……」


 塔の中枢での死闘は終わった。


 長い戦いの果てに、ようやく訪れた静かな安堵だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ