アイドルとはたくましく生き抜く
「えっととですねぇ、ドッキリ大成功?ってなんですかにゃん」
「こっちが聞きたいわよ、ナナ何か聞いていないの?」
「これが私達に仕掛けたドッキリなら、私にも知らせないと思うが?」
「それもそうようねぇ」
アミさんも、ヒナさんも突如のことで、戸惑どっているし、読み上げたままの紙を閉じようともせず、ただただ、この後どうすればいいのかと、おろおろしている。
放送室のドアがあきスタッフが2名入ってきた、くすくすと笑っているスタッフの後ろで、大きな声で笑っている、太い太いオッサンが腹やほほを揺らしながら、大きなプラカードを持ってやってきた。
プラカードにはデカデカとドッキリ大成功と書いてある。
「いやぁいい表情だよ」
「実はこのラジオ企画、テレビ放送することないんだよ」
「いやぁ、でもいつ気づくかなぁって思っていたよ」
「それにしてもさすがですねぇ」
スタッフが勝手なことをいいながら、放送室に入ってきたおっさんをもみ手をしそうな勢いで褒めたたえる。
「社長どういうことですかにゃん」
「うん、だからドッキリだよドッキリ、ミケらんも中々良い表情だったよ」
太い太いオッサンは、元事務所の社長。
相変わらず腹や頬を揺らしている、ニタニタと笑っている。
「つまり最初っからこの企画は、私たちを騙すためにあったわけね」
「ずいぶんとお金をかけたものだな」
数ヶ月かけた仕事がドッキリのこの瞬間のためだけだというのは、本当に呆れるほどお金をかけたものです。
仕事、ドッキリであればこの仕打ちもしょうがない事だ。
「この色紙も返しとくねファンじゃないアイドルの色紙なんていらないだろ」
「あぁそれも仕込みでしたか」
以前アイドルとして、やっていけると思った3人のサインが書かれた色紙が渡される。
私の言葉に太い、太いオッサンはニタニタしながら、笑っている。
あのときの気持ちも弄んでいるということになるのだろうか。
アミさんも、ナナさんも何も言わずに、その色紙を見つめていた。
「当たり前だろ、売れていないアイドルのサインなんて、誰が欲しがると思うんだよ」
「そうですよねぇ」
泣きそうなのか、笑いそうなのか分からない声がでた。
「いや、でもそのリアクション、前よりは良くなったんじゃない?」
アイドルとして、やってはいけない事がある。
前もコレでクビになった。
「ドッキリですからねぇ、驚きですよねぇ、驚きすぎて錯乱していますねぇ」
それでも身体は止まってくれない。
思いっきり飛び掛り、グーで社長の顔を殴っていた。
「ちょっとお前ふつう殴るか」
「普通のアイドルだったら、こんな事しないでしょうね」
普通のアイドルじゃなくて、売れないアイドルだ。
ドッキリだと騙されて笑って済ませるということもできないといけないのだろう。
それができないから、私は売れないアイドルなのだろう。
「神さま殴るか、普通」
倒れている元社長の神さまを殴るために、追い撃ちをかけるために、私の気分を晴れやかにするために殴りにいく。
「キミやめなさい、殴るのをやめなさい」
スタッフの二人が慌てて止めようと駆け寄ってくる、、面倒だし、この際一緒になって、殴っても問題ないような気がするので、スタッフを殴り飛ばし、打ち所が悪かったのか、スタッフ二人は気絶したようだ。
元社長の神さま、いや太いだけのオッサンを殴るためにさらに、殴りにいこうとしたところで、このオッサンは、タライを落としてきたので、それを受け止めて、スタッフやオッサンに向かって、投げ返していると、ナナさんから制止の声がかかる。
「ヒナ、そこまでにしろ」
「でも私は、殴りたいんです」
「いや、それはどうなのよ」
呆れたアミさんの、発言にこくこくと、うなずくミケらん。
「だがお前の気持ちは分かる」
「それで、どうする気なのヒナは」
「この件は、学級裁判だな」
「あぁつるし上げね、了解、了解」
「アミの新企画だから、アミが仕切ると言い」
「肝心なところ丸投げしたわね、えーとじゃあそこのブタの神は何?」
「うちの社長ですにゃん」
「じゃあミケらんがそっちがわね」
「とばっちりですにゃん」
「まずは、どちらが悪いかだな」
「殴った事については、アイドルとして失格よね、ヒナ」
「ドッキリです、サプライズです」
「それではすまないと思うのにゃん」
「ちょっと待て、話を勝手に進めるな」
「ブタは黙ってね、私もムカついているからさ」
「認めよう、ブタ社長の代弁者はミケらんとする」
「さっきから社長の扱いがひどいにゃん」
「まず殴った理由から聞こう」
「向こうが、先にドッキリで、こちらを傷つけるような事をしてきました」
「確かに、悪質だったわよね」
「しかし向こうは仕事で仕方なくという点もあるかもしれないな、その点についてはミケらんどうなんだ」
「わかりませんにゃん」
「楽しんでやっていたと思います」
「確かに笑いながら、入ってきたわよね」
「ふむ、悪意があってやったと言う事になるな」
「でも、殴るか普通」
「ブタのような社長、黙れ」
「ブタのような神さまは少し黙っていてください、今重要な学級裁判の最中です」
「社長、とりあえず黙秘をつかうのですにゃん」
「それ、遠まわしに黙っていろっていっているのと同じよね」
「違うですにゃん」
「ドッキリだって言えば、全て許されるわけではない、そのところはヒナ分かっているな」
「はい」
「反省しているならいい、スタッフの怪我、そこのブタ社長を殴ったと言う事実を認めろ」
「はい、スイマセン」
「まぁそれで、ブタのような社長はどうするの?」
「うむ、ヒナの一件である程度は相殺し、あと数発ブタ社長を殴る事で一件落着としよう」
「そうね」
「お前ら、それでもアイドルか暴力とか最低だぞ」
「アイドルじゃなくても最低よね」
「失敗してもやり直せる、もう一度皆で頑張っていくことにしよう」
「良い話風だけどやっている事最低にゃん」
「ミケらんもこの社長の片を持つというこてゃ仲間ですか」
「仲間なら同罪ですよね」
「力及ばない、ミケらんを許してほしいにゃん、社長」
「アイドルは笑顔が素敵なんだぞ、暴力とかそういうものをしちゃいけないんだぞ」
「大丈夫です、殴ったらものすごい良い笑顔でラジオの最後締めくくります」
「本当に一発ずつなぐるとは思いませんでしたにゃん」
「すっきりしたわね」
「さて、ヒナ50回目のラジオの最後一言頼む」
「また次回」
「絶対に次回は無いけどね」
「そうだな、多分これで最終回だな」
最後のラジオの収録はハプニングはあったものの、なんとか終えることができた。
安堵とやってしまったなぁという後悔も多少浮かんだ。
目をさめたスタッフ達から、本気で怒られたが、こちらも本気で怒った。
数時間の冷却を置き、スタッフ達と話あった。
まぁドッキリとはいえ、スタッフ側もやりすぎたという反省の元に、この放送は流さず、水に流すと言う事で落ち着いた。
流石に後日、事務所に滅茶苦茶に怒られましたが、クビという最悪の自体は免れました。
とりあえず向こうも一回は様子を見てくれるという
「まぁアンタ、似合っているんじゃない」
「売れるためのキャラ付けですよ、キャラ付け」
「スケバンアイドルっていつの時代のセンスなんだろうな」
暴力的なアイドルというイメージ戦略がヒットすることは無いだろうけれど、ちょくちょくイベントに呼ばれるようになってきているのは、時代って何がヒットするか分からないなと思う。
きっかけになったブタのような元社長には感謝はしていないが、あった瞬間飛び掛るというような愚行はせずにすんでいるぐらいには、気持ちは落ち着いている。
そのうち、ドッキリではなくまともなラジオ番組ができるほどの、有名なアイドルグループになれば、前編お蔵入りになった、あのラジオもいつか流せる機会がくるかもしれない。
それを夢みながら、意地とその他もろもろで、私はアイドルを目指している。




