売れるために契約してみると悪魔は言った。
私にとって、あざとい、かわいいのミーちゃんずが、テレビに出ていた。
にゃん、にゃん、にゃんと相変わらずの語尾に、猫耳をつけたあざとさだ。
天使かわいい、猫かわいい、ちょーあざといと三拍子揃ったアイドル達が、皆に笑顔を振りまきながら仕事をしている。
テレビ画面のチャンネルを変えたとしても、私が買ってきた週間の漫画雑誌の表紙にも、その写真がでかでかと載っている。
「写真集とかの売り上げ凄いらしいわよ」
「そうでしょうね」
さすがに、もう同期で入ったという過去の事すら忘れてしまいたいぐらいの活躍ぶりである。
片や人気街道を乗っているアイドル。
片や、学校に寝泊りしているアイドル。
とんでもない差が出ている気がする。
今度テレビでラジオを放送される一回放送されたぐらいじゃあ縮まりそうもないぐらいの差だ。
「どこで差がついたんですかねぇ」
「生まれじゃない?」
それを言われたら、どうしよもうない答えをさらりと返してくるアミさんは、人が、苦労して買って来た週刊誌を断りもせずに、読み始めた。
「アミさんは、焦りとかなさそうですよね」
「まぁ焦って、売れるなら、みな焦っているわよ」
「それもそうなんですがね」
「そうだ、焦っても良い事はないぞ」
夕食の支度を終えた、ナナさんがアミさんと同じ様なことを言ってくる。
「ヒナが、どうしても売れたいなら魂をかけて私と契約する?」
「それでどれぐらい売れるんですか」
「3日」
「短いですねぇ」
「まぁでも苦労しても報われない世界よ、苦労した数年にくらべて売れるのは数ヶ月ってのはいいほでしょ、苦労しないで3日も売れるなら、万々歳じゃない?」
もともと、アミさんと契約する気もなかったが、流石に3日というのはどうなんだろうか。
呆れているのを、考え込んでいると思ったのか、ナナさんは、アミさんだけじゃなくこちらも睨んできた。
「いや、そもそも悪魔と契約するな、アミも勧誘するな」
「しませんよ、アミさんと契約して三日なら、自力でがんばって3年ですかね」
「それはどういう意味よ」
「アミさんの腕を信用するより、自分を信用したほうが、マシということですかね」
「後で泣き言いっても、絶対契約してあげないからね」
「はいはい」
「アイドルになりたいという強い気持ちで頑張りつづける信念が、いつかヒナを光らせるさ」
「また、そんな綺麗事を、現実はそう簡単に甘くないんだから、前言撤回するなら今のうちよ」
冗談交じりで、もう一度勧誘してくるアミさん。
そんなアミさんの言葉を無視するかのように、ナナさんは、週刊誌の表紙を指さした。
そこには、ミケらんが良い笑顔で笑っている。
「まぁ頑張る事だな」




