色紙をうめる文字
宿直室のちゃぶ台に置かれた、和菓子とティーパックの紅茶を飲みながら。スタッフからの今後の予定や企画意地かどうかの報告を聞いていた。
「企画自体は続行ですか」
「それで放送日はまだ未定と」
「そうらしい、まぁ打ち切りにならずよかったとも言えるけどな」
スタッフからの定期連絡はいつもどおり、企画は続けるけれど、放送はまだ未定という話だった、子供の侵入に関しては、今回は特に問題視はしないような事を言っていた。
「もういっその事さ、神頼みしたほうがいいんじゃない?」
「それ悪魔のアミさんが言って大丈夫なんですか」
「私が頼むわけじゃないし」
「あぁそうですか」
そもそも私もそういえば、神さま殴っちゃった事あるから人の事は神頼みしてもいいんでしょうか、まぁ神さまに頼んでも叶えてくれるとは限らないし、頼むだけなら別にいいのかもしれないです。
「まぁ頼むなら、ナナさんが適任ですかね」
「そうね天使だし」
「神頼みする前に、きちんとこなしてからやっていくのが正しい」
「あぁうんそうですね」
「そういってもねぇ、手ごたえというものがないなら、やる気も続かないわ」
「アミさん、やる気あったんですねぇ」
「あんた、本当に失礼よね」
軽く、足をつねられ、危うく飲み物をこぼしてしまうところだった。
そんな私達をみて何をやっているんだと、少々呆れた顔をするナナさんは話を切り替える。
「そういえば、先程和菓子を置いていってくれたスズキユウナちゃんからこんなもの預かっている」
「へー」
ナナさんの手には、すでにナナさんのサインが書かれている色紙があった。
先日忍び込んだスズキユウナちゃんとそのお母さんが、朝訪れて、ジョギング中のナナさんに、和菓子を渡したとは聞いていたが色紙まで渡していたのか。
「サイン欲しいそうだこの色紙に書いてくれといっていたので、サインしておけよ」
「へー物好きね」
「活動らしい活動してないんですけどねぇ、ミケらんのサインって事ですかね」
子供達にも人気のミケらんのサインなら欲しいでしょうが、私たち、とりわけ一人だけアイドルなのかと言われた、私のサインが欲しいと言ってくれるなんて、ありえないと疑ってしまう。
「マイナスに捕らえるな、ちゃんと私達のサインだし、夕方に取りに来てくれるそうだ」
「へーなんででしょうね、アイドルに会えた記念とかですかね?」
「記念になるような面子でもないと思うけどね」
「ミケらんさん以外そうですね、アミさんなんて気絶させた張本人ですし」
「いや、あんたアイドルなのって言われたでしょうが」
「そうですね、やっぱり何かの間違いじゃないですか?」
「お前ら、マイナスに捕らえるなといったばかりだろうが、はやく書け」
真っ白い色紙の3分の一のところに綺麗なナナさんのサインが先に記載されている、そのまた横の3分の一のスペースに、サインを書いていく。
ほいと渡されたサインペンと色紙をうけとり、残るスペースに私がサインをいれると、不思議とアイドルのサインに見えてくるから、不思議なものだとおもってしまう。
そして、夕方とりにきたスズキユウナちゃんに、サイン色紙を渡すと喜んで帰ってくれた。
疑ったりした事が恥ずかしくなるぐらいのものだ。
「これも活動の手応えという事だ」
「そうですね」
「まぁ明日一日は頑張れる気がするわ」




