表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『伯爵家次男に転生した俺は、前世の知識で世界を変えていく』  作者: バモス
第一章 幼少期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/62

第44話 家族との休日

 初夏のある朝。


 雲一つない青空が広がり、心地よい風がシュゲール伯爵家の庭を吹き抜けていた。


 いつもなら朝食の後は勉強や剣術の稽古が始まる。


 しかし、この日は少し違っていた。


「アルス。」


 父カインが穏やかに微笑む。


「今日は勉強も剣術もお休みにしよう。」


 アルスは目を丸くした。


「お休み?」


「ああ。」


「今日は家族みんなで出掛けよう。」


「本当ですか!」


 アルスは思わず立ち上がる。


 その様子を見て、母エリザが優しく笑った。


「ふふっ、そんなに嬉しいのですね。」


「はい!」


     ◇◇◇


 準備を終えた一家は、屋敷から少し離れた湖のほとりへ馬車で向かった。


 湖面は太陽の光を受けてきらきらと輝き、風が吹くたびに小さな波紋が広がる。


「きれい……。」


 アルスは思わず見入ってしまう。


「ここは私も子どもの頃によく遊びに来た場所なんだ。」


 父が懐かしそうに話した。


「今日は仕事のことは忘れて、ゆっくり過ごそう。」


     ◇◇◇


 使用人たちが大きな布を広げ、昼食の準備を始める。


 焼きたてのパン。


 串焼きの肉。


 新鮮な果物。


 母エリザが作ったサンドイッチ。


 そして果実ジュース。


「いただきます!」


 家族全員で声を合わせる。


「おいしい!」


 アルスは笑顔いっぱいでパンを頬張った。


「たくさん食べてくださいね。」


 母が優しく果物を取り分ける。


「はい、お母様。」


     ◇◇◇


 昼食を終えると、エルゼが元気よく立ち上がった。


「アルス!」


「競争しよう!」


「どこまで?」


「あの大きな木まで!」


 アルスは父を見る。


 父は笑いながら頷いた。


「転ばないようにな。」


「はい!」


「よーい……」


「どん!」


 二人は草原を駆け出した。


 もちろんアルスは全力では走らない。


 三歳らしい速度で、一生懸命に足を動かす。


「待って、お姉様!」


「ふふっ、頑張れ!」


 エルゼは少し速度を落とし、アルスが追いつけるように走ってくれた。


 その優しさが嬉しかった。


     ◇◇◇


 一方、湖畔ではアレックスが父と木剣を手に立っていた。


「父上、お願いします。」


「よし。」


 二人は軽く木剣を合わせる。


 カン。


 静かな音が湖畔へ響く。


 アルスは走るのをやめ、その様子を見つめた。


「兄様、かっこいい。」


 アレックスは照れくさそうに笑う。


「ありがとう。」


「でも、まだまだ父上には敵わないよ。」


 父は笑って首を横に振る。


「私も若い頃は何度も負けた。」


「努力を続ければ、いつか追い越せる日も来る。」


 その言葉に、アレックスは力強く頷いた。


     ◇◇◇


 午後。


 家族みんなで湖の周りを散歩する。


 野花が咲き、小さな蝶が舞っている。


 アルスは一輪の青い花を見つけた。


「きれい。」


「これは『青星花』ですよ。」


 母が教えてくれる。


「毎年この季節だけ咲く花なんです。」


 アルスはそっと花を眺めた。


 前世では見たことのない花。


 異世界セレンならではの景色だった。


     ◇◇◇


 帰る前。


 父が家族へ話しかけた。


「今日はどうだった?」


「楽しかった!」


 エルゼが真っ先に答える。


「また来たい!」


 アレックスも笑顔で頷く。


「たまには、こういう日もいいですね。」


 母も穏やかに微笑む。


「アルスは?」


 父に尋ねられたアルスは、少し考えてから答えた。


「ぼく……。」


「みんなといっしょが、いちばん好き。」


 一瞬、静けさが流れる。


 そして。


「まあ……。」


 母は目を潤ませた。


「アルスったら……。」


 エルゼは勢いよく抱きつく。


「お姉ちゃんも大好き!」


 アレックスも優しく頭を撫でた。


「僕もだよ。」


 父は照れくさそうに笑いながらも、アルスの肩へ手を置いた。


「ありがとう。」


「父さんも同じ気持ちだ。」


     ◇◇◇


 夜。


 屋敷へ戻ったアルスは、いつものように魔力操作を終えると、手帳を開いた。


 今日書いた言葉は、とても短かった。


 『かぞくは たからもの』


 その文字を見つめながら、アルスは静かに微笑む。


 前世では、病気と闘う日々が長かった。


 だからこそ、こうして家族と笑い合える時間が、どれほど幸せなのかよく分かる。


(この笑顔を守りたい。)


 家族の笑顔。


 領民の笑顔。


 仲間たちの笑顔。


 そのすべてを守れるような人になろう。


 その決意を胸に、アルスは穏やかな眠りについた。


 湖畔で過ごした温かな一日は、少年の心へ「家族」という何よりも大切な宝物を、改めて刻み込んだのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ