誰か
誰かがこの痛みを分かち合ってくれたなら。
閉じていた瞳を開けて、あたりを見回す。当たり前だけれど誰もおらず、部屋の中は静まり返っている。明るさに目が慣れてきたところで体を起こした。今日は第四王子のところへいくことになっている。
第四王子のテセト王子に関しては王太子殿下もギリウス王子も詳しい内容は教えてくれなかった。言いにくそうに口を閉ざしている二人に、私もなんとなく聞きづらかった。
リャト王子が楽の内容を決めてくれて、楽譜まで用意してくれた。ぜひご一緒したいです、と言っていたけれど、今度の旅にリャト王子は同行させないことに決めたらしい。第一から第四王子まで全ての王子が王宮から出てしまうのは流石に王陛下も頷くことはできなかったみたいだ。
背伸びをして服に着替える。目を擦っていると、部屋の扉が静かにノックされた。はい、と返事をすると入って来たのはお母さんだった。
「王太子殿下が一緒に朝食を、と」
「王太子殿下が?」
不思議に思いながらも頷くと、お母さんはサロンへいらっしゃい、と言って部屋から出ていった。王太子殿下が朝から私に声をかけるのは珍しい。
「なんだろう」
廊下を歩きながら思い当たる節を考えてみても何もない。本当になんだろう、と思いながらサロンの扉を開くと、王太子殿下が椅子に座っていた。
「おはよう」
「おはようございます」
挨拶をして私も王太子殿下の向かいの椅子に座った。テーブルにはもうすでに朝食が用意されている。ニールが入れてくれる紅茶を眺めていると、王太子殿下がわざとらしく咳払いをした。
「ギリウスと食事をしたそうだな」
「食事というか、お茶をしました」
そのことか、と合点がいった。先日ギリウス王子と二人でお茶をした。会話は盛り上がらなかったけれど、なんとなく楽しいお茶会だった。ポツポツと思いついたことを話すだけでも楽しいものだな、と感じることのできるお茶会だった。
「その」
その、の後の言葉を待っていても王太子殿下は何も言わない。首を傾げて見せると、王太子殿下がため息をついた。
「ギリウスとは仲がいいのか」
「いいわけではないと思います。でも前よりはいいです」
正直にそう答えると、王太子殿下がそうか、と頷いた。カップを手に取って紅茶を一口飲むと、ホッとする味だった。
「俺ともお茶をしないか」
「王太子殿下とはいつもしていますが」
「・・・そうだな」
王太子殿下がそういってまた黙る。朝食を一緒に摂ろうといったことも変だし、お茶に改めて誘うところも変だ。何かあったのかもしれない、と思いながら注意して王太子殿下を見る。
どこか怪我をしている様子はなさそうだ。首を傾げるしかなかった。




