フェイクとダウト【お題×2】(ジャンル:恋愛?)
私を見つけないで
そんなメールが届いたから、 僕は出かける準備をした。
君がよく行く喫茶店を訪れた。店内を見渡して、君らしき人がいないことを確認し、店員の一人に声をかけた。
「髪の長い小さな女性、来ませんでしたか?」
「……あぁ、来ましたよ。 窓際の席でホットケーキと紅茶を美味しそうに食べていました」
「そうですか。彼女のこと、よく見てるんですね」
「え……」
彼女はここではオムライスしか食べないんだよ。 それに窓際は外の人に見られるから嫌いだと言っていた。 僕は店員の嘘を聞いて店を出た。
君が何を考えてるかは分かってる。 君が今、どんな気持ちか分かってる。 だから探し出してみせる、君に言いたいことがあるから。
君とよく来る公園、桜はもう色づいている。君の好きな色、好きな景色。 きっとここだ、直感的にそう思う。
「おにーちゃん」
桜の木を見上げている僕の腕を引っ張る少年。
「うん? どうしたの?」
「あのね、おにーちゃんね、おねーちゃん、探してる?」
「探していないよ」
そう答えると、少年は泣きそうな顔をした。やれやれ、君はこんな子にまで……
「あ、の…… さ、探して? 探して、くれないと……」
「……ふぅ。 じゃあ探してみようかな。 そのお姉さんはどこに行ったかな?」
僕がそう言うと、少年は顔を明るくした。 本当純粋だな。 だからこそ……
「あのね、おねーちゃんね、あっち行ったよ!!」
嘘をつかせた君の心は、どうなってるやら。
「ありがとう」
僕は少年の頭を撫で、指差す方向とは逆に歩き出した。
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「……見つけないでって、言ったのに」
「見つけたんじゃない。 見かけたんだよ」
この町を一望出来る高台。 君が来るところなんて、後はここくらいしか思い当たらないからね。
「さ、帰ろうか?」
僕はそう言って手を差し伸べる。 君はその手を見て、いきなり怒鳴り始めた。
「私! 見つけないでって、言ったじゃん! 保護者みたいなこと、しないで! 寂しくなんかないし! 一人でも生きていけるし! わ、わ、私だって大人なんだし!」
……はぁ。 まったく……… 君って人は、本当に不器用だ。
僕は黙って君に近づき、優しく抱きしめた。
「ちょ、離し、て!」
「ダウト。 まったく…… 子供にまで嘘を付かせて」
僕の言葉に、君の抵抗する力が弱くなる。やれやれ、やっと観念したか。
世界が嘘を許す日。 真面目な君は、それを変な風に受け止めたんだね。 嘘が許されることを、嘘をつかなければならないと思ったんだろう。
嘘が大嫌いで、小心者のくせにね。 君にしてはとても頑張ったと思うけれど。
「ごめ、んなさい。 でも、今日、嘘…… ついて」
「そうだねぇ。 嘘つきはいけないねぇ」
「……嫌い、なら、ならないでくださぃ」
「どうかなぁ。 嘘つく人はちょっとなぁ」
僕の言葉に、君は目を潤ませて顔を上げる。……反応がいちいち可愛いから、いじめたくなる。 なんて本音は今日は言えないか。 嘘だと思われたくないしね。
泣きそうな君にゆっくりとキスをした。
「……これも嘘ですか?」
「あのねぇ、好意は素直に受け取りなさいよ」
「で、でもでも。 今日、エイプリルフール……」
あー、もう。 可愛いなぁ、本当に。 僕は君を強く抱きしめる。
小さな君を抱きしめる。 この温もりは、たとえ世界が嘘を許しても。 嘘には出来ない、現実だ。




