32 神殿の闇
「髪洗いたいんだよね。体も気持ち悪いもの」
ご飯は食べて飲み物も飲んで、しっかり眠っているので体力は回復した。
首の痛みももうない。
でも、内出血みたいなあざは長く残るっていうものね。
「そろそろ、首も鏡で確認したいんだけど無理なのかしら?」
包帯越しに光は感じ始めていた。
ふとした時に、自分が臭う。
最悪だわ。
私ヒロイン的ポジションか悪役令嬢だったわよね?
こんな臭くて、自分の設定忘れそうだわ。
でも......世話してもらうのはもっと最悪。
あのホストみたいな神官たちでしょ。無理無理。
いくら私のものではないキャサリンの体だからって、なかなかいい体してるんだから、出し惜しみたいわよ。
「だから、俺が世話をしようかと言っているのに。俺は小さな時から、初代聖女の世話はしていたから、別にいやらしい意味ではなくちゃんと体や髪を洗ったり、服を着替えさせるぐらいのことは世話をするが......」
私はその言葉を聞いた瞬間、思わず耳を疑い聞き返した。
「はあっ?何ですって!!」
思わず叫び出す。
「そんなことまでさせてたの?初代聖女は!聖女のくせに、ショタ好き!!犯罪なの。あなたにはなくても、向こうにはいやらしい意味があるわよ。初代聖女は変態よ。あんたも疑問に思いなさいよ!」
クルデラは絶句しているが、この段階から疑問に思っていないクルデラの再教育が必要だわ。
「初代聖女は目が見えなかったわけでも、体が動かなかったわけでもないんでしょ?お前の中の初代聖女に、甘えるな!髪や体を洗うぐらい一人でやれといってやりなさいよ」
聞けば聞くほど、碌でもない初代聖女が見えてくる。
どうやらその変態な初代聖女が作り上げたハーレム装置がこの神殿なわけね。
わかったわ。
「クルデラ、私の望むままいうことを聞くのよね。それに近いことを以前、言ってたわよね?」
私は見えないので、クルデラの声の方を向いて来い来いと手招きする。
クルデラも私には遠慮がなくなってきて、「はいはい」と面倒くさそうな声を出してやって来た。
「内容によるかな。今の君からは、いや、そもそも最初から君からの要望に碌な内容はない気がする」
あら、言ってくれるじゃないの。
ショタ好きの初代聖女に初恋していたくせに。
このやろう!
「あなたの困惑した顔が見られないのは残念だわ。でも、ここであなたのお世話を多少なりとも受けて、この神殿はいらないわってことがわかったの。そんなハーレム装置なんて聖女には金輪際不要よ。神殿を解体してくれる?」
「は?」
しばらく沈黙が流れる。
さて、ここで怒りが湧くようなら、まだ初代聖女にクルデラは操られていることになるんだけど、どうかしら?
「もちろん、この神殿が初代聖女のためにあるのだというなら大事に取っておいたらいい。仲良く初代聖女の思い出といつまでも暮らしてちょうだい。私はマグナカルタに帰り、他の犬たちと共にここをぶっ潰す計画を立てるわ。必ず壊すから」
「い、いやいや、待て!」
クルデラが沈黙から慌てた声に変わる。
「へえ、怒り出すかと思ったけど、本当に初代聖女の感情と決別出来ているようね。それなら、何を慌てているの?」
「ここにいる神官たちはどうするんだ?」
慌てているのか、どうやら私のすぐそばに近づいてきて、クルデラのさわやかな香りが鼻に入ってくる。
こっちは臭いんだから近づくなってのよ。
「逆にどうする気か私が聞きたいわ。神官は大量にいるのに神殿の掃除でも延々とさせるの?私は、指一本触れられたくないし、世話される気もないの。あなたにだってよ。目が見えるようになったら自分のことは完全に自分でします。よって、不要です」
「..........」
完全に黙りこくってしまった。
今までどんな人生送ってたのよ?
それに、神官だって聖女の閨のために神官になったわけじゃないでしょうに......
「むしろなんであんなにハーレムを作りたがるのか私には理解できないの。愛がない言葉なんて、虚しいだけよね?
で、どうするの?神殿を解体してくださる?」
そういうと、クルデラはすぐには答えずじっと何かを考えているようだった。
顔が見えない相手に色々いうのは、難しい。
言いすぎているのか、もう一押ししないといけないのかもわからない。
「初代聖女の遺体はどうする?」




