勘違い
「Dくんが賄賂疑惑を追いかけていたジャーナリストだって知ってましたね。いや、むしろ援助してたというべきか。あなたがたの黒い噂にしても、どうも出どころがはっきりしない。」
火蔵がオーナーを問いただす。
「ばれちゃまったか。」
オーナーは薄笑いをしながら、あきらめたように椅子に腰掛けて話し始めた。
「わしは本当にA5ランクのメニューを作ったんじゃ。しかし、実際とは違うというたれこみがDくんからあってな。彼は最初わしが首班だとおもったらしい。それで、手の込んだメッセージを送ってきたわけじゃ。わしは、彼に内偵を頼んだ。犯人はわかった。そいつは白状したよ。だけど、まあ経営のことを考えてのことじゃ。今回は大目にみるということにした。この店でそんなことのできるやつは、言わなくてもわかるじゃろ。」
「Cくんは監視というわけですか?」
火蔵が質問する。
「ああ、そうじゃ。」
それなら、僕が拉致される理由が無い。
「死んだバイト君は不運だった。特殊詐欺のグループの客が、サギソウとユスリカの話を聞いて、利用しようとバイト君を連れ去ってしまった。が、そこはジャの道は蛇。逃走屋に探してもらった。もともとわしと組長は冤罪被害者を救うために逃走屋に協力しておったからな。彼を見つけたときは、すでに記憶喪失だったそうだ。あとは、知ってのとおり。いずれにしても、死体遺棄の犯罪を言い訳する気は無いよ。まさか、箱の中で死んでるとは思わんかったから手遅れになってしもうた。命に重さをつけるつもりはないが、死者よりも生者である依頼者の保護が最優先だったからね。」
関係者が死ねばVDで真実を知ることもできるが、今は立証のしようがない。すでに容疑者は死体遺棄で処罰されてしまった。
「わしらのような裏の仕事をしていると、悪い噂とういものは必ず出る。組長も現役のころから、反社会的行動は一切してなかった。商売をしていればいろんなもめ事が起こる。だから、あいつみたいな仲裁屋が必要なんじゃ。それに組員にしてもそうじゃ。仕事も無く犯罪に走るよりはと、役割を与えていた。その見返りといっちゃなんだが、店側も食事程度は提供した。新規で参入した連中はそんなWINWINの関係を知らないから、へんな噂をたてるんじゃ。どこの系列にも属してなかったから、それを気に入らない連中もおったようじゃ。」
にわかには信じがたかったが、僕の眠っていた三年間に火蔵が集めた情報と基本は一致していた。どうやら彼等の行動が気に入らないお上の連中が、反社会的印象をあたようとしていたようだ。この店がブラックだったのはオーナーのせいではなく、すべてあいつのせいだったのか。僕はいまさらながらに自分の不運を嘆いた。そいつも、今じゃ改心して、タバコもやめ、真面目に働いているそうだ。




