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彼岸まで  作者: 若松ユウ
五両目「強欲と貪欲の国~A country of avarice~」
20/33

#019「リスニング」

@香澳島中央駅

中狼「五号線に停車してる恵比寿号に乗って、あの目の覚めるような青色の東橋を渡った先にあるのが、目的地の華国。ゴブリンが描かれた国章や、狐、針鼠、烏が描かれた国旗が目印。そこのゼフェリンって場所で、ジェームズって人を訪ねて、この缶いっぱいに烏龍茶の茶葉を貰ってくるのが、今回の使命。救恤を重んじる国柄でって。オイ、聴いてるのか、小小」

小華「何か言ったかのぉ、ミドルくん。ホホッ。近頃は、すっかり耳が遠くなったものじゃわい」

中狼「老師の真似をするな。しっかり聞こえてるんだろう、小小?」

小華「そうよ。分かってるなら、確認しなくて良いじゃない」

駅員「まもなく、五号線の列車が発車いたします。ご乗車のお客様は、お急ぎください」

  *

@華国中央駅

中狼「不動産、金融、法律相談、生涯学習、講演会」

小華「車内は、広告でいっぱいだったわね。活字の海に溺れそうだったわ」

中狼「中でも、華国厚生省認定の健康食品は、一際目立ってたな」

小華「一日三錠で、いきいきした毎日を。白衣を着たおじさんが、片手に錠剤の瓶を持って微笑んでる広告だったわよね」

中狼「そうそう。――今回は、出迎えは居ないようだな」

小華「そうみたいね。吉国のときと同じように、駅員さんに目的地までの行きかたを訊いてみましょう」

  *

@ゼフェリン

中狼「ここが、手紙の宛て先にある街らしいんだけど」

小華「大きな建物が犇めいてる割りには、ヒトの気配が稀薄ね」

中狼「そうだな。誰かに尋ねようにも、尋ねる相手が居ない」

小華「早く訪ねたいところなのに。あんまり遅くに伺うと、ジェームズさんに失礼だわ」

中狼「それに、今にも降り出しそうな曇り空だからな」

小華「濡れ鼠になるのは、ごめんだわ。――あっ、向こうに誰か居るわ」

中狼「あっ、本当だ」

小華「すみませぇん。ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけ、ど?」

中狼「何か様子がおかしくないか?」

小華「ウン。わたしたちの言うことが聞こえてないみたいね」

青年、懐からナイフを取り出し、刃先を胸に向け、構える。

中狼「オイオイ、何をやらかす気だ? ――ちょっと待ったっ」

小華「早まっちゃ駄目っ」

中狼・小華、青年の方へ走り、体当たり。

  *

青年「オォ、痛かった。危ないじゃないか、君たち」

小華「ごめんなさいね、乱暴なことをして」

中狼「どう見てもタダゴトでないと思ったんで、つい」

青年「短絡的過ぎるよ。もっと、よく考えてから行動しなさい」

中狼「すみません。でも、他に止める手立てが浮かばなかったもので」

青年「まぁ、その熱量を持った感情は、羨ましい限りだけどね。――そろそろ、ナイフを返してくれないか?」

小華「その前に、どうしてあんなことをしたのか教えてください」

青年「行動の動機、か。説明する前に言っておくけど、このことは他言無用だから。口は堅いほうかい?」

中狼「俺は、秘密は絶対守るぜ。小小は知らないけど」

小華「失礼ね。わたしだって、言って良いことと悪いことの区別くらい付くわよ」

青年「そうか。それじゃあ、話そうかな」

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