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90話 王都出発直前 -挨拶は基本ですね-

準備を手伝いたくても何をしていいのやら……。

 ドリュグルの街にある亮二の屋敷では慌ただしく出発の準備が行われていた。メルタの指示の下、馬車に荷物が積み込まれており準備をする人々が忙しく行き交っていた。そんな中で亮二とカレナリエンの2人は物理的な邪魔をする事は無かったが、何をする訳でもなく所在なさげにウロウロとしているのは周りの者にとっては気になるらしく、苦情がメルタの元に届いた事で状況に変化が訪れた。


「リョージ様とカレナリエンは邪魔です!出発までは後1時間くらい有りますので街の散策でも行って住人の方達に挨拶でもしてきて下さい」


 さっくりとメルタに屋敷から追い出された亮二とカレナリエンは、ドリュグルの街の商店街エリアに来ると食材や料理を買いながら店主や店子達としばらくの別れの挨拶を行った。魔物肉店の店主は号泣しながら「本当に寂しくなるな。寂しさを紛らわせるためにもう1回出発祝いをしようぜ!」と亮二を抱き締めんばかりの勢いで提案をして来たので慌てて逃げるように挨拶をして別れを告げた。


 商店街から離れコージモの第2工房がある区画を訪れた。元々はコージモの店だったのだが主な取引先が駐屯軍兵士の為に亮二が駐屯地に工房を用意してそこに移り住んでいた。ドリュグルにあった工房は”コージモの剣”の修理専門店としてコージモの弟子たちが運営している。


「あっ!リョージさん。今日出発されるんですよね?王都に行っても頑張ってくださいね。リョージさんはドリュグルの街の希望の星なんですから」


「俺は俺で頑張るからお前らもコージモさんを抜くくらいになっといてくれよ。そしたら俺から個人的に武器の作成依頼をするから」


 亮二の言葉に弟子たちが色めき立った。コージモが弟子として第2工房で働かせているのは10名であり、弟子たちは皆コージモの工房がここまで大きくなったのは亮二が”コージモの剣”と名付けられた属性魔法剣の作成をコージモに依頼したからこそであり、その事によって工房を2つも持つ事が出来たのを知っていたからである。


「じゃあ、俺からの宿題だ。お前たちに銀のインゴットを1人一個渡すから、何か作っといてくれ。別に武器じゃなくても構わないぞ!このインゴットの価値は金貨2枚くらいだ。持ち逃げするもよし、俺を唸らせる何かを作るもよし、好きに使ってくれ。出来のいい作品には俺から賞品を用意するよ」


 亮二にインゴットを渡された弟子達は「持ち逃げするもよし」のところで大笑いすると「そんな事する奴は間違いなくいませんね」と言いながら、さっそく亮二を唸らせる「何か」について考え始めるのだった。


 ◇□◇□◇□


「これはこれは、リョージ様。出発前の貴重なお時間に弊店にお越し頂き有難うございます」


 装飾店にやって来た亮二とカレナリエンは店主に迎え入れられ、亮二がカレナリエンに指輪を渡した席に案内された。


「最近、ここを特別席として作り直しまして、様々な方に利用して頂いております。これもリョージ様のお陰です」


「俺のお陰?ここが特別席?」


「左様です。リョージ様がカレナリエン様へプロポーズされてから『装飾店内で思いを告げると幸せが訪れる』との噂が流れており、当店で婚約指輪をご購入頂いた方には、この特別席で指輪を渡していただくようにしております。今お二人が座られている場所を”プロポーズされた特別席”として改装して使わせて頂いている次第です」


 亮二とカレナリエンが周りを見渡すと店内にいた全ての客の視線が2人に集中していた。


「おぉ!この目でプロポーズの再現が見れるとは!」


「やっぱり絵になるわよね。私もあんな風に包容力のある男性に出会いたいわ」


「よし!これを買おう!明日彼女と取りに来るから特別席を使わせてくれ!」


「絶対に噂を広めたのって店主だよね」と店主に問い掛けると、にこやかな笑顔で「さて、どうでしょうか」とはぐらかされた亮二は、苦笑しながら何気にカレナリエンに視線を向けると彼女は当時を思い出して真っ赤な顔で俯いているのだった。


 ◇□◇□◇□


 亮二達はドリュグルの街で関わった主だった住人に挨拶が終わったので屋敷に戻った。


「丁度、準備が終わったところですよ。後30分ほどで出発できますので屋敷の中でお茶でも飲んで待っていて下さい」


「分かった。じゃあメルタ、準備が完全に終わってるなら一緒にお茶を飲もうよ」


 亮二はそう言うとメルタを連れて屋敷の中に入っていった。


「お帰りなさいませ、ご主人様。どう?ちゃんとメイド長出来てるでしょ?」


「え?どう言う事ですか?シーヴ、メイド長は私がリョージ様より仰せつかっているんですよ」


 メルタの問い掛けにシーヴはにっこり笑って、亮二は嬉しそうにしながら代わりに答えた。


「メルタにはメイド長を辞めてもらう。そして王都で生活する俺の専属メイドとして一緒に来てもらう。未来の旦那でありご主人様の命令だから逆らっちゃダメだよ?いいね」


「え?えぇ!はい!でも、そういう事なら早く言ってください!私の準備は何も出来てないですからね!シーヴも黙っているなんて!」


 メルタは怒った声で亮二とシーヴに文句を言いながらも、嬉しそうに自分の部屋に向かって急いで荷物をまとめ始めるのだった。

今度こそ王都に向かってGo!

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