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392話 騒動は収束に向かって進む -マルコが居れば大丈夫だね-

カレナリエンが合流しました。

 婚約者達が和気藹々としているのを微笑ましそうに眺めていると、カレナリエンが部屋に入ってきた。


「リョージ様。マルコが謁見の間に来て欲しいとの事です。イオルス神の扱いについて話があるそうですよ。それと、フランソワーズさんについては、私も後で話があります。エレナやメルタ達も一緒にね」


「ああ。分かった。フランの婚約者としての扱いについての話だよね。当然ながら優先的に時間をとるよ。ところでマルコは怒ってなかった? もう落ち着いてる?」


「一通り発散しているように見える……。じゃなかった。話がまとまりましたので、今は安定していますよ。大丈夫なので安心してください」


「今、『発散』って言ったよね? ねぇ! 本当に大丈夫? またマルコに金のハリセンで叩かれない? あれは本気で駄目な攻撃だよ?」


 金のハリセンで叩かれたのがよっぽどトラウマだったらしく、青い顔をした亮二が確認したが、カレナリエンからは曖昧な笑顔で返事が来た。


「大丈夫だと思うような気がしますよ? そうですね。オルランド猊下は落ち着いてますし、ラッチス枢機卿達も安堵の表情を浮かべてましたよ? イオルス神は……。えっと、そうですね……。実際に見て確認してください」


「なに? なんでイオルスだけ言い辛そうにしてるの? 怖いよ!」


 遠い目をしながら状況を説明するカレナリエンに、亮二は叫びながらも覚悟を決めて謁見の間に向かうのだった。


 ◇□◇□◇□


「おう。リョージ。待ってたぞ」


「マルコ? 大丈夫? 怒ってないの?」


「俺がいつまでも怒るわけないだろ? 安心しろよ。イオルス神も落ち着いたみたいだからな」


 亮二が謁見の間に入ると、爽やかな顔のマルコと微妙な笑顔のオルランドやラッチス達が居た。


「そう? 怒っていないならいいや。それでイオルスは?」


「ん? イオルス神だったら、そこにいるぞ?」


 マルコの視線を追って確認すると、神々しいオーラを発しながらイオルスが滔々(とうとう)と語っていた。


「我は最高神にして、セーフィリアを造りし者。可愛い我が子よ。しばらく、我はこの地に留まり汝らを見守る。我が使徒である亮二と共に世界を発展させよ! 神の子等よ! だが! 亮二に頼り切るな! 汝らも自ら考え、悩み、協力し、讃え合え、努力せよ! 一人一人の力が世界を変えていくのだ! 我らはそのための(いしずえ)になろう!」


「よし。完璧だ! それでいこう」


 マルコの言葉にイオルスは破顔すると、嬉しそうに飛び上がった。


「やった! これで解放される! もう一〇〇回連続の復唱をしなくてもいいのよね? スイーツ食べても怒られない? 亮二さんの所に行っても大丈夫?」


「ああ。大丈夫だ。よく耐えた。お前さんも、これで一人前だ!」


「マルコさん! いえ! 師匠! 有り難うございます!」


 イオルスは満面の笑みを浮かべ、マルコの手を握りしめていた。マルコは表面上は悠然と握手に応えていたが、内面は冷や汗どころではなかった。


(なんで俺が幸福の神であるイオルス神を教育をしているんだよ! 神様だぞ! 姿を見るだけでも奇跡なんだぞ! なんでハリセンで叩いた上に、教育までしてるんだよ! それに師匠と言われて崇拝した目で見られているぞ!)


「お、おう。実際に信徒達の前で演説してもらうのは、オルランド猊下と調整をして下さい」


「もう! マルコさんは私の師匠なんですから敬語なんていらないんですよ!」


 腰に手を当ててタメ口で話すようにと、諭しているイオルスに苦笑を浮かべながらマルコは亮二の方を向いて話し出す。


「よし! 後の事はお前さんに任した! 俺は疲れたからドリュグルに戻るわ」


「ちょっ! マルコ! 酷い! 俺に押しつけて逃げるつも……。痛ぃ! なんだよ! 本当の事を言っただ……。痛ぃ!」


「ああ! そうだよ! 逃げてなにが悪い! 俺はな! ドリュグルの街の門番で、Bランクの冒険者なんだよ! ミスリルのハリセンをお前さんに渡されてから、おかしくなったんだろうが!」


 逃げ回っている亮二を、鬼のような形相でマルコは追いかけるのだった。


 ◇□◇□◇□


「いいですね。亮二さんはマルコさんと楽しそうで」


「アレを『楽しそう』と言い切るイオルスはやっぱり凄いわ」


 マルコが居なくなった謁見の間で、亮二に近付いてきてイオルスが羨ましそうに話しかけてきた。時間にして一分ほどマルコと亮二の高次元な戦いは行われていた。


「あれがマルコ殿の真の力か」「ドリュグルの英雄でも一分しか持たないのか」「そもそもイオルス神を従えた御方だぞ?」


「そう言えば、なんでイオルスはマルコから教育を受けていたんだよ?」


 枢機卿達が感心したように、マルコを讃えている事に亮二が首を傾げながら問いかけると、オルランドが近付いてきて理由を教えてくれた。


「最初はマルコさんも丁重に話をしていたのだよ。リョージ君が気絶した後に、話を聞こうとしたのだけど全く通じなくてさ。それでもマルコさんは辛抱強く話していたけど、最後に『マルコさんはツッコミ神と言われてるんですよね? 私と対等なのですから敬語なんて必要ないですよ!』と言ったとたんに……」


「とたんに?」


 それまで饒舌に話していたオルランドが急に無口になった。亮二が話の続きを促すように繰り返すと、身体を震わした後に首を振って話を再開した。


「あ、ああ。ちょっと思い出したら震えてしまったよ。そうそう。続きだよね。イオルス神が言ったとたんに、マルコさんから表情がなくなって、ミスリルと銀のハリセンを両手に持つと『対等なら遠慮する必要な無いな。しばらくこっちに居るのなら、少しは役だってもらおうか』と言い出してさ。思わずマルコ神と言いそうになったよ」


「教皇猊下がなに言ってるんだよ……」


 亮二はそう言いながらも、思い出して青い顔をしているイオルスとオルランドを見ながら、自分は一撃で気絶して幸せだったと思うのだった。

マルコが俺の代わりをしても問題ないんじゃ?

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