393話 神都での一コマ -イオルスが右往左往してますね-
イオルスが演説をしています。
「あれは詐欺と同じレベルじゃないだろうか? 厳かなイオルスって……」
「おーごーそーかーですー! 私は本来は厳かな創造神なんです! 本気を出した私の演説は素晴らしかったですよね? 私が! この私が信徒に直接! 直接に声を掛けたのですよ! 神話として感涙しか出ないお話しとして語り継がれるのですよ!」
「その通りです! 本当に素晴らしい演説でした。このラッチス、我が命が尽きるまでイオルス神にお仕え致します。それに、あの演説を聴いた信徒達も涙を流しながら力を合わせて頑張る事でしょう。さらにイオルス神がここに鎮座されるのです! 信徒達も街道に感涙の河が来るくらいに涙を流しつつ神都にやって来るでしょう」
亮二がイオルスの演説を聞いた感想を独り言のように呟いていると、イオルスが胸を張って自らの素晴らしい演説を力説してきた。その横でラッチスも首が取れそうな勢いで頷きながら、感情を爆発させたようにイオルスの演説を褒めたたえていた。
「そ、そうか。それなら良かった。結局、オルランドの婚約者を決める話でこっちに来たのに、魔王復活やイオルス顕現騒動で全く別の話しになったよな」
ラッチスの感涙状態に、亮二が若干引きながら話していると、オルランドが満面の笑顔で近付いてきた。オルランドの婚約が決まった事は神都だけでなく各国にも伝えられていたが、それよりも重大事件が発生しており、一同の関心はそちらに向いていた。
「僕としてはそっちの方が良かったけどね。イオルス神やリョージ君達への関心が向いているからこそ、エリーと正式に婚約しても誰も気にしてないからね。お陰で二人っきりの時間がたっぷり取れて嬉しいよ」
「そんなものか? どちらにしても慌ただしくなるだろうけどな」
改めて亮二はここ数日の事を思い出していた。イオルスが顕現した事や、亮二が使徒である事。魔王は復活したが討伐済みなどは各国に報告されており、教皇であるオルランドの婚約話よりも重要な案件が発生しており、緊急会議を行うとの連絡が各国に対して行われていた。
「そろそろ各国の首脳が集まる頃だと思うぞ。イオルスへの挨拶があるらしいからな。オルランドへの挨拶は最後だって。フランとの婚約もどう扱うのか話し合わないと駄目だってさ」
「それにしても魔王すら婚約者にしてしまうなんてね。リョージ君の度量の広さには関心しか出てこないよ。僕はエリーだけしか愛するつもりはないからね」
「また、そんな台詞をリョージさんの前で……。そ、その事は嬉しいのですが、教皇としては、側室を三名は娶ってもらわないと困りますわ」
横にいたエリーザベトが困った顔で全身を真っ赤にしながらオルランドに苦言を呈していた。そんな様子をニヤニヤと笑いながら亮二が話しかける。
「へぇぇぇ。愛されてるね。エリーザベトさん。これは後継者がすぐに産まれそうですなぁ。そしたら……。痛ぃ! ちょっ! まだ、続きが。出産祝いは……。痛ぃ! うぉ! 危ね! それ金のハリセンだろ! 洒落にならないぞ! マルコにしか渡していなかったのに譲って貰ったの?」
「コルトレツィス公爵家の力を甘くみすぎですわ! お父様に連絡して最速便で送ってもらいましたの! それにしても1回しか振れないなんて。耐久力がないのは製造元に連絡して改善させないと駄目ですわね」
亮二に避けられた事で形が崩れてしまった金のハリセンを、舌打ちをしながらアイテムボックスに収納したエリーザベトが再びミスリルのハリセンを装備したのをみて、オルランドが心底恐れたかのように青い顔をして震えながら尋ねた。
「ねえ。エリー? そ、その金のハリセンだけどさ。前は銀のハリセンまでしか持ってなかったよね? 壊れたから、もう使わないよね? 教皇として封印した方がいい?」
「それほど恐れなくても大丈夫ですわよ。オルに対して金のハリセンを使うつもりは毛頭ありませんわ。これは、ドリュグルの英雄に対する最終兵器です。コルトレツィス公爵家の総力を挙げて改良していきますわ! そしてマルコ様の一番弟子になりますのよ!」
目をキラキラさせながら熱く語るエリーザベトに、教皇として使用禁止令を発動させようかと真剣に悩むオルランドだった。
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「ハリセンの開発を頑張って下さいね。エリーさん。それと、先ほどの会話で気になっている点があります。オルランドさんとラッチスさんに質問です。『イオルス神がここに鎮座されるのです!』と、言っていたような気がするのですがなぜですか?」
「そのおつもりですよね? なぜそのような質問を? どうされました? イオルス神?」
微笑みながらエリーザベトに話し掛けていたイオルスが、急に思い出したかのようにオルランドに質問してきた。当然とばかりに返ってきた回答に、理解が追いついてないのか古いロボットのようにぎこちない動きで首を動かすと亮二を見ながら確認してきた。
「えっと……。亮二さんに質問です。私はハーレム要員に入ってますか?」
「え! ちょっと待って下さい! イオルス神はリョージ君のハーレムに入るおつもりですか!」
不安げに確認している神の言葉にラッチスが驚愕の表情を浮かべながら叫ぶと、当然とばかりに頷きながらイオルスが話し始めた。
「当たり前じゃないですか! なぜ一〇体に分かれて争奪戦をしたと思っているのですか! ぷんぷんですよ! 亮二さんには許可をもらって……。ん? もらってましたっけ?」
「え? そうだっけ? 俺とそんな話をしたっけ? 俺の一存では決められないから、カレナリエンとエレナに確認してもらっていい?」
亮二の言葉にイオルスは背中から羽を生やすと、文字通り婚約者達が集まっている部屋に飛んでいくのだった。
そしてイオルスは飛んでいきました。




