357話 マデリーネとエレナと帝国訪問 -帝国に行きますね-
うどんは大人気です!
「やっぱり、うどんは美味しいよな」
「そうですね。それにしてもうどんは素晴らしいですね。温めても冷やしても美味しくて、さらに乾燥させると日持ちがするなんて。夢のような食べ物です」
エレナが器用にうどんを食べながら話し掛けてきた。他の婚約者達も美味しそうに食べていたが、住民達は初めて食べるうどんに悪戦苦闘しつつも舌鼓を打っていた。そんな様子を眺めていたマデリーネは微笑ましそうに住民を見ながら小さな声で呟く。
「いいですね。サンドストレム王国の人達は。帝国にもリョージ様のような方が居たら生活に余裕が出るのでしょうね」
「ん? 別に王国だけのつもりはないぞ? 俺の知っている知識で良かったら帝国でも使ってくれていいぞ」
スキルの聞き耳でマデリーネの声を拾った亮二は、うどんが入ったドンブリ片手に近付いてきた。
「えっ? き、聞こえてたのですか?」
「ああ。俺の知識を帝国に入れたいんだろ? すでに膨らみ草の使い方を帝国にも伝えてあるけど、それ以外はなにがいいかな?」
亮二は首を傾げながら考えていたが、軽く手を打つとストレージから次々とアイテムを取り出した。
「これは俺の国で有名な料理を作るための道具だ。名前はたこ焼き器」
「たこやききですか? 丸い穴のような物が沢山ありますね?」
鉄板を受け取りながら使い方が想像できないマデリーネが困惑していると、亮二は笑いながらたこ焼き器を使ってたこ焼きを作り始めた。
「こんな感じで鉄板を温めてるだろ。そして溶いた材料を入れて……」
「こんな丸い食べ物が出来るなんて!」
唖然としているマデリーネにソースやカツオ節を振りかけて手渡した。熱いので注意するように伝えられていたが、鼻をくすぐる美味しそうな匂いに一口で食べてしまった。
「んっ! あ、あふぅい! あふぅいです!」
「だから気を付けてって言ったじゃん!」
苦笑しながら亮二は水の入ったコップを手渡すとマデリーネに渡すのだった。
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「よし。じゃあ、出発するとするか」
亮二による自らの歓迎会は盛況の内に終了した。住民達に見送られながら出発した亮二は馬車の中にいるマデリーネとエレナに向かって話しかける。
「いや。別に文句は無いんだけど。ソフィアとメルタも二人組だったしね。でもエレナは二人きりになるのを楽しみにしてると思ったけど?」
「そうなんですけどね。マデリーネの緊張している様子を見ると可哀想になってきて。お父様とお話をしてスッキリしたのでマデリーネと一緒でもいいかなと。リョージ様も姫二人と一緒なのは嬉しいんじゃないですか?」
対面に座っているエレナとマデリーネに話し掛けると、エレナから爽やかな笑顔で返事がきた。亮二はスッキリとしたとの内容に少し心配そうな顔で問い掛ける。
「マルセル王は元気だよね?」
「ええ。ダイジョウブデスヨ。王家に居る治療魔術師は優秀ですから。レイピアは返してくれませんでしたけどね。もう少し時間とお父様に体力が有れば返却の言質を取れたものを!」
悔しそうに返事をしたエレナに亮二が苦笑していると、マデリーネが恐る恐るな感じで話しかける。
「私の父上とも会ってもらっていいですか?」
「あれ? 会ってなかったっけ? そう言えばクヌート殿下にしか会ってないな。たしか病床で意識がなかったけど回復したんだよね? 執務はクヌート殿下に譲渡して、来年には帝位も譲るんだよな? それに体調が悪くて会えないって聞いていたけど?」
「そうなんです。なんとか持ち直したんですが皇帝をを続けるには無理があるので、クヌート兄様に帝位を譲る準備を始めています。それと最近は元気になってきた父上が『婿殿の都合の良さそうな時に会いたい』と言ってましたので、よろしければ会ってもらえませんか? 非公式ですので私室になりますが」
「むしろ、そっちの方がいいよ。公式に訪問したら盛大に歓迎されるんだろ? 時間ばかり掛かる式典なんて好きじゃないんだよね。じゃあ、さっそく行こう。転移魔法陣は置いてくれてるんだよね?」
「もちろんです! 私の寝室に設置しています!」
寝室に設置していると言い放ったマデリーネに苦笑を浮かべながら、亮二は外にいる護衛に一言告げると転移魔法を使って帝国に移動するのだった。
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「ここがマデリーネの寝室? 姫騎士の寝室にしては……」
「いいんです! 女の子の部屋なんですから!」
若干赤い顔をしながら抗議したマデリーネにエレナが援護する。
「そうですよ。女の子の部屋なんですから可愛いのは当然です! 部屋全体が薄いピンク色で花柄が散りばめられていて、なぜか王国で販売しているアラちゃん騎士団のヌイグルミが全部揃っていてもいいじゃないですか!」
「エレナ! 今度、エレナの部屋も見に行くからね! リョージ様ヌイグルミをいっぱいベットに並べてるの知ってるんだから!」
エレナとマデリーネが互いの寝室を暴露していると、扉をノックする音が聞こえてきた。
「姫? お戻りですか?」
「ええ。リョージ様を連れてきたのだけど、お父様に連絡してくれる?」
入室してきたメイドは突然の主人の帰宅に驚いていたが、亮二が一緒だと気付くと冷静になるように努めながら恭しく頭を下げて答える。
「畏まりました。では、陛下に連絡をしますので、暫くお待ち下さい。すぐにお茶の用意をしますので」
「ちょっと待ってメイドさん! これお土産です。良かったら下働きの皆で食べて。こっちは陛下用なんでよろしくね」
ストレージからクッキーなどが入ったアイテムボックスを二つ取り出すとメイドに手渡した。なんとか冷静な対応をしていたメイドだったが、亮二からアイテムボックスを手渡されると全身真っ赤にしながら受け取ると、部屋から退出した瞬間に廊下を走りながら叫んだ。
「救国の英雄のリョージ様が来たわよ! しかも手渡しでお土産まで貰っちゃった! 誰にも渡さないからね!」
「いや。皆で食べてよ! それと廊下を走ったら駄目だろ!」
歓喜の声がドップラー効果の様に遠ざかっていくメイドの後ろ姿を見ながら亮二が叫んだ。たまたま周りに居た他のメイドや下働きの者達からの熱い視線を感じた亮二が軽く手を振ると、周りは軽いパニック状態になった。
「姫と一緒にいる男の子って事はリョージ様?」「思ったよりも大きい」「誰だよ。五歳児くらいの身長って言ったやつ!」「えっ? 私は二メートルくらいって聞いたわよ?」「姫の横にいる女性も綺麗な方だよな」
徐々に集まってくる人だかりに三人が困惑していると、妙齢の女性がアイテムボックスを持ったメイドの襟首を捕まえて引きずって近付いてきた。
「救国の英雄であるリョージ=ウチノ様。先程はメイドが失礼しました。普段は仕事ができる娘なんですが、リョージ様とお会いして軽く混乱したんでしょう」
謝罪を受けた亮二が鷹揚に頷きながら特に気にしていない事を伝えると、メイド長である妙齢の女性は安堵の表情を浮かべ、身近に居た別のメイドに王の元に案内するように伝える。
「ちなみに、あなたは再教育ですよ。リョージ様や王国の姫君であるエレナ様を前に働いた無礼の重大さを理解しましょうね。では失礼します」
「反省します! 反省してます! もうしません! お願いですから再教育だけわぁぁぁ……」
問題を起こしたメイドを引きずりながら去っていくメイド長を目を輝かせて眺めていた亮二だったが、何事もなかったかのように別のメイドから声を掛けられると、残念そうにしながら王の私室に案内されるのだった。
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「ようこそ。救国の英雄である婿殿。ガムート帝国皇帝ジェルマン=ザイツェフである。病床からの挨拶で申し訳ない」
「サンドストレム王国大公リョージ=ウチノです。挨拶が遅くなって申し訳ありません。体調が戻られたようでなによりです」
ベットの上で身体を起こした状態のジェルマンが挨拶すると、マデリーネが近付いてガウンを着せた。娘の気遣いに嬉しそうな顔をしながら微笑むと、改めて娘婿である亮二を眺める。古龍を相手に圧勝し配下とした戦闘能力。魔族をもしのぐ圧倒的な魔力。未知の料理や魔剣を簡単に作り出す知識。貴族になっても驕らない謙虚さ。
「この一年で世界を変えるような人物がなぜ今まで表舞台に出てこなかった? どうしてサンドストレム王国に現れて。もし帝国だったなら……。いや、仮定の話をしても意味が無いな」
「体調が優れないのなら、これで失礼しますが?」
考え込んでいる姿を見て、体調が悪いと思い込んだ亮二が声をかけると、我に返ったジェルマンは軽く頭を振った。
「婿殿ともっと早く会っていたらどうなっただろうな? と、考えていたのだよ。儂としては結婚する気のなかった娘の重い腰を上げてくれた婿殿に感謝しているがな」
「お父様なにを言っているんですか! 結婚しなかったのは素敵な男性が居なかっただけです!」
ジェルマンの台詞に真っ赤な顔をして抗議するマデリーネを、微笑ましそうに見ながら亮二が話しかける。
「あまり調子が良くないようですが、まだ回復しないのですか?」
「随分と良くなってきたが、もう歩く事は出来ないであろうな」
話を聞きながら亮二はストレージからポーションを取り出すとジェルマンに手渡した。
「ポーション?」
「これを飲めば一番調子が良かった時に戻りますよ」
「王国で噂になっていた秘薬か。今は遠慮させてもらおう」
すぐに飲むものだと思っていた亮二が驚いていると、ジェルマンは笑いながら話しかける。
「意外かね?」
「え、ええ。物凄く」
「儂が元気になると王位を譲る話がややこしくなるからな。クヌートが問題なく統治が出来るようになってから飲ませてもらおう。そうすれば安心して隠居生活が続けられるからな」
ポーションの中身を楽しそうに眺めながらジェルマンは闊達に笑うのだった。
皇帝を譲ってからポーションを飲んで余生を満喫するそうです。




