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351話 ちょっとした寄り道 -久しぶりにコージモさんに会いますね-

なんだかんだと出発の時間になりました。

「リョージ様! また来てくださいね!」「やっぱり、リョージ様の婚約者達って綺麗な方が多いよな」「エルナン様! あなたのお陰で初級講座の受講資格を得ました!」


 出発する馬車を見送るために、群衆から歓声と共に聞こえてくる声に不穏な台詞が混じっている事に気付いた亮二が叫ぶ。


「おい! 誰だ! 今、初級講座とかいった奴! それと! エルナン! くそ、どこ行った? あいつが主犯じゃないのか?」


「良いじゃないですか。最近、王国で流行しているリョージ様講座の話ですよね? 誰だか確認できませんでしたが、一日で入門講座を終わって初級講座の資格を得るなんて逸材ですよね」


 受講資格を得た人物を群衆の中から探そうとしている亮二をエレナは笑いながら気にしないように伝えると、部下には入門講座を受ける人物の調査を指示しながら婚約者の手を取って馬車に乗り込んだ。


「では、次はシーヴですね。リョージ様と二人きりを楽しんで下さい」


「はい! 有り難うございます! エレナ様!」


 魔道具拡張の部屋に設置されている転移魔法陣に乗ったエレナが笑いながら語りかけると、シーヴは嬉しそうに返事をした。その様子を眺めていた亮二は、婚約者達が問題なく仲良くしている事を嬉しそうに見ながら御者に声をかける。


「よし! 出発するぞ。出してくれ」


 亮二の声に馬車は進み始めた。群衆の歓声に見送られながら小さくなっていく馬車を満足げな表情で見送りながら、町長達は後ろに隠れていたエルナンから講座についての詳細を眼を輝かせながら確認するのだった。


 ◇□◇□◇□


「今度はシーヴと二人きりだね。どうしたい?」


「ではお言葉に甘えて。今日一日はご主人様に対するメイドとしてではなくて、出会った頃のように普通に喋らせて貰ってもよろしいでしょうか?」


 馬車で寛いで表情で聞いてきた亮二に、シーヴが恐る恐るな感じで要望を伝えてきた。婚約者からのあまりにも可愛いお願いに、亮二は微笑ましそうにしながら問題ない事を伝える。


「もちろん。そんな事を気にしていたのか? いつでも前みたいに喋ってくれたらいいんだぞ?」


「そんな事が出来る訳ないじゃない。リョージ君は大公になったんだよ。その前もあっという間に伯爵になったし、私にとっては雲の上の存在になってたんだからね」


 気楽な感じで答えた亮二に、シーヴは口を尖らせながら答えた。自分の躍進っぷりがシーヴに気後れを感じさせていた事に申し訳ない気分になった亮二は、ストレージからスイーツや紅茶グッズを取り出しながら提案する。


「じゃあ、今日は俺がシーヴの執事になってやるよ。お嬢様、準備をしますのでお待ちいただけますか?」


「えっ? ちょ、ちょっと。リョージ君?」


 スキル礼節をフルに使ってもてなし始めた亮二に困惑顔のシーヴを座らせると、アフタヌーンティーの準備を始めた。いつもと違う優雅な動きをする亮二の姿に、頬を染めながらも気分良くお嬢様役になる事を決めるシーヴは嬉しそうに父親の話を始める。


「そう言えば。お父さんがリョージ君から依頼を受けたコージモの剣も、やっと量産体制が取れるようになったんだって。それに、弟子さんにも工房を任せられるようになってきたから、駐屯地とドリュグルの街の工房を任せてリョージ君のところに来るって言ってたよ」


「へぇ! そうなんだ。それは嬉しいかも。腕の立つ鍛冶師を探してたんだよね。色々とコージモさんにお願いできるな」


 いつもの口調に戻ってコージモに任せる案件を考えて込んでいるの亮二を、シーヴは嬉しそうに見ていた。そんな視線に気付いた亮二は軽く咳払いをしながら口調を改める。


「おっと。口調がおかしくなりましたね。失礼いたしましたお嬢様」


「いいよ。リョージ君はいつもの口調で喋ってよ。最初は心地良かったけど、その口調で喋られると照れくさいし、リョージ君を遠く感じるよ」


 いつもと勝手が違う事にシーヴが遠慮しながら伝えると、笑いながらいつもの口調で話し始める。


「じゃあ、コージモさんのところに行こうか」


「えっ? ああ、転移魔法陣があるもんね。でも、なんの話をしに行くの?」


 首を傾げているシーヴの手を取って、亮二は御者の男性に魔道具として作った緊急時用の呼び出し笛を手渡すと、転移魔法陣に乗ると駐屯地に向かって行くのだった。


 ◇□◇□◇□


「お父さん! ただいま!」


「ん? シーヴ? どうしたんだい? 急に帰ってくるなんて。リョージ様と喧嘩でもしたのかい?」


 勢いよく工房に入ってきた愛娘を嬉しそうに出迎えて抱きしめながらからかうと、コージモは弟子達に休憩を伝えた。しばらく親子の対面を楽しんでいると、亮二が遅れて工房に入ってきながらコージもにはなしかける。


「久しぶり! コージモさん。そろそろお義父さんと呼んだ方がいい?」


「やめてください! リョージ様からお義父さんなんて言われたら、周りから付き合いを遠慮されてしまいますよ」


 もうすぐ義理の息子になる亮二から満面の笑みで伝えられたコージモは、苦笑しながら慌てて全力で否定した。あまりの拒絶ぶりに少しガッカリとしながらも気を取り直して笑顔になって話しかける。


「そう? じゃあ、今まで通りにコージモさんで。それで! さっそくお願いがあるんだけど」


 満面の笑みを浮かべながら語りかけてくる亮二の言葉に、コージモは久しぶりの無理難題を出されると感じながら職人として腕と矜持が高まってくるのだった。

さて、コージモさんにお願いをしないと。

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