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347話 新たなテンプレの始まり -色々な事が起こりそうですね-

「では、第二五回の婚約者会議を行います。ちなみに未来の旦那様はこの場所にいません」


 亮二の屋敷にある食堂に婚約者一同が集まっており、全員が揃うのは三ヶ月ぶりだった。現在は王国と帝国にある飛び地領地の代官としてエレナとマデリーネが担当しており、メルタとシーヴはメイドとして各地にある亮二の屋敷を切り盛りしていた。

 その他は、諜報部隊の長として国内の貴族や教会の動き、帝国や他国の情勢を調べているクロ、王都にある研究所や工場でソフィアやライラは研究や生産を担当していた。


「では、最初の議題を発表します! 【前から思っていたんだけど、カレナだけずるいよね】です。カレナは自覚していますか!」


 開会の宣言をしたエレナが口を尖らせながら文句を言ってきた。突然の個人攻撃にビックリしながら周りを見渡したカレナリエンだったが、返ってきたのはエレナへの賛同の頷きと拍手だった。


「ちょっと待って。拍手? なんで? 私が責められる事した?」


「だって! カレナだけがリョージ様を独占してるじゃない! 私達は一〇日に一回くらいしか会えないのに、カレナはほぼ毎日会ってるじゃない! 例え筆頭婚約者でもずるいと思うの」


 カレナリエンが一方的に責められている事に抗議すると、エレナは神妙な顔で切実に語り始めた。その表情と内容を聞いて、最近はダンジョンに潜る事が多く独占をしていると言われればその通りだと感じたカレナリエンは言葉に詰まる。バツの悪そうなカレナリエンの表情を見て、エレナは見えないようにニヤリと笑うと勢いよく提案を行った。


「だから、次にリョージ様が行動を起こされる時に一緒に行動するのはカレナが最後って事で! 賛成の方は挙手!」


「ちょっ! それ、ずるいんじゃ……」


 提案を聞いたカレナリエンが慌てて止めようとしたが、一人を除いた全員の手が上がった。発案者であるエレナは満足げな表情を浮かべて頷いていたが、大人の姿に戻ったクロが怒濤のごとく再提案をした。


「普段リョージ様とよく会議しているエレナとマデリーネ! 屋敷で一緒に寛ぐ事もあるメルタとシーヴ! すいーつを楽しんでいるソフィアとライラ! 全員最後って事で!」


「えぇぇ! ちょっと! クロ! 急に大きくなって自分だけが得するような発言しないで!」


「でも私。一番危険な仕事してる」


 思わぬ伏兵の登場に仰天の表情となったエレナ達だったが、子供の姿に戻ったクロの一言に全員がなにも言えなくなるのだった。結局、第二五回婚約者会議のメイン議題である亮二と二人っきりになれる権利はクロが最初となるのだった。


 ◇□◇□◇□


「以上で、貧民対策として行った街道整備の報告となります」


「ほう。ついに街道工事が完了したか」


 報告を満足げな表情で頷いていた唯一の上司であるマルセル王に、亮二はさらなる提案を行った。


「貧民対策としての街道工事は完了ですが、王国全体の街道は整備されていない箇所が多いので、早急に整備する事を進言します」


「確かに街道整備は早急に必要だな。今回の街道整備で教皇領への道が綺麗になり、一定の間隔で宿場町が出来上がっている。それに目を付けた商人達も集り、町全体に人が増えているとの報告も受けておるしの」


 亮二の提案を聞きながら、王の懐刀と言われている公爵のハーロルトが諜報部隊からの報告を追加してきた。また、今回の街道整備は教皇からも感謝の言葉が届いており、教会と王室との蜜月ぶりも国内外にアピール出来ていた。


「ところでリョージよ。教皇のオルランド様とは仲がいいのじゃな?」


「ええ。学院の同級生ですからね。でも、なんです? 急にそんな事を確認されるなんて?」


 唐突に質問された内容に亮二が首を傾げながら答えると、ハーロルトは渋い顔で黙っており、マルセルは心底嬉しそうな顔で頷いた。


「そうであったな。では、大公であるリョージにも結婚式への参加する権利を渡そう。もちろん、エレナ達も連れて行くのだぞ?」


「ん? 誰が結婚する……。あっ! オルランドとエリーザベトさんが結婚するんですか?」


 亮二の驚き顔に満足げな表情を浮かべながら、マルセルは側に控えていた文官に招待状を渡すように伝えるのだった。


 ◇□◇□◇□


「ただいま……。 うぉ! みんなどうしたの?」


 亮二が領都にある屋敷に戻ってくると、食堂に婚約者が全員揃っていた。いつもならスイーツやお茶を楽しみながら談笑をしているのだが、なぜか今日はそれぞれの表情や態度が違っており悲喜こもごもとしていた。


「うぅ……。まさか全敗するとは」「ふふふ。私を貶めようとするから天罰が下ったのよ! エレナ!」「わぁい! 二番!」「ふ、二人きり。それまでに新しいすいーつを開発しないと」「そろそろ首輪を用意しないと。母様に相談を……」「あら。ちょうど真ん中ですかね? 皆さんの分の紅茶も用意しておかないと」「な、なんで最後から三番目なんですか? 新参者に譲るお気持ちは?」「ない。所詮この世は弱肉強食」


 なにが起こっているのか分からない亮二だったが、オルランドとエリーザベトの結婚式に出席するために教皇領に向かうことを伝えると、食堂を奇妙な緊迫感が包み込むのだった。

なんで婚約者達が獲物を狙うような獰猛な眼になってるんだろう?

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