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316話 唐突な作戦会議 -決戦に近付いて来ましたね-

魔物を発見したようですね!

「三千匹か。我々の軍より多いな。マルコはすぐにリョージ伯爵に連絡! アマンドゥスに再度聞くが、魔物の群れはこちらに気付いていないんだね?」


「はっ! そうですな。こちらには全く意識を向けずに帝都を目指している感じですな。これからどうされるか指示を頂けますか殿下」


 最初は青い顔をしていたアンデルスだったが、斥候からの詳細な報告を聞くと冷静さを取り戻したようで、マルコに指示を与え、魔物の動きを再確認してしばらく考えこむと、笑顔で全軍に対して休憩をするように伝達を命じた。


「休憩ですか? 近くに魔物がおりますぞ?」


「ああ。だが、食事の準備が整っているなら休憩だ。魔物もこっちに気付いていないのだろう? リョージ伯爵だったら『魔物が近くに居るかなんて関係ないだろ! 準備が整っている食事達をどうするんだよ! 今、食事をしないで、いつすんだよ!』と言うだろう」


 アマンドゥスの面食らった顔を全く気にしない勢いで、アンデルスが手振り身振りをしながら亮二の口調を真似ていると、魔物の多さに暗い雰囲気になっていた一同から笑いが漏れだした。


「そうですな。リョージ伯爵なら、そう言うでしょうな」「では、私も食事の準備をするように伝えてまいります」「ちなみに今日の食事は?」「カレーと聞いていますが?」「おぉ! やっぱり、この食欲をそそる匂いはそうでしたか。部下達に食べ過ぎないように言っておかないと」


 集まっていた一同は笑顔で口々に言いながら解散すると、斥候や警戒する者と交代するために、先に食事を始めるのだった。


 ◇□◇□◇□


「リョージ! お前の予想通り魔物の群れに遭遇したぞ」


『そうか。じゃあ、そのまま魔物に気付かれないように付かず離れずで。俺が合図をしたら後背から突撃をしてくれたらいい』


「どんな合図だよ? それにお前たちはどこから攻撃を始めるんだよ?」


 亮二からの提案にマルコが疑問を投げかけると、魔道具越しに亮二の笑い顔が見えるような声が返ってきた。


『それは楽しみにしておいてよ。間違いなく俺って分かるように派手にするから!』


「そんな、あやふやな作戦が出来るわけ無いだろ! 合図を教えないつもりなら作戦自体をなしだ。こちらで独自に動かしてもらう。じゃあな」


『ちょっ! じょ、冗談だよ! 冗談なんだから本気で怒らないでよ。謝るから! 合図はファイアボールを魔物に向けて連発するからマルコなら分かるでしょ?』


 あまりにも作戦に対する説明が適当するぎるので、マルコが苛立ちながら話を打ち切ろうとすると慌てた亮二から謝罪の声が聞こえてきた。


「よし! 次に会った時に謝罪は受け取ってやろう。ちゃんと形で表わせよ」


「分ったよ。ちゃんと用意して明日渡すから。それに接敵する直前に連絡する。明日の朝一番には攻撃の連絡が行くと思っといて。じゃあな!」


 マルコが冗談めかして亮二に謝罪の言葉と物品を要求すると、明日の朝一番に連絡すると返事の後に通信が切れた。


「おい! 切るなよ! もう少し話がしたかったんだがな。取り敢えずは、これでリョージも無茶しないだろ。後は、あいつから連絡があったら攻撃が出来るように殿下と話を詰めておくか」


 マルコは通話が途切れた魔道具を見ながらため息を吐くと、亮二との話を報告するためにアンデルスの元に向かって行くのだった。


 ◇□◇□◇□


「アラちゃんを呼んできてよ。それと、クロは先行して偵察に出てもらっていいかな」


「分かった。配下も連れて行く。行くよ」


 亮二の言葉にカレナリエンはアラちゃんを呼びに、クロは偵察に出るための準備をしながら突然現れた黒装束達に出発の指示を出し始めた。


「おぉ。俺が普段話しかけても出てこないのに」


「我々はお嬢の言葉と、リョージ様が本当に必要な時にだけ現れる影ですので」


 黒装束の男性が、突然現れた事に驚いている亮二に向かって深く頭を下げながら答えてきた。亮二はストレージから金平糖やサブレが入ったアイテムボックスを取り出すと、黒装束の男性に三人で食べるようにと手渡した。


「はっ! 後で三人で頂きます。唐突ですが、お嬢が楽しそうに表の世界で暮らしていけるのもリョージ様のお陰です。我ら一族はリョージ様の為に身命を賭して仕えさせて頂きます」


「ああ。期待しているよ。でも、俺はクロだけじゃなくてお前達も表の世界に引っ張りだすからな。年を取ったら強制引退させるから覚悟しておけよ」


 亮二からアイテムボックスを恭しく受け取った黒装束の男性が頭を下げたのをみて、亮二が冗談めかして答えると黒装束から覗く目が潤んだようになり、再び頭を深く下げるのだった。


 ◇□◇□◇□


「伯爵! 魔物が帝都に向かっているのを発見したんだって?」


「ああ。マルコから、さっき連絡があった。それで、これからアライグマ騎士団に命令を与える」


 息せき切ってテントに入ってきたアラちゃんに、亮二は大仰に頷くと真剣な目で命令を伝え始めた。


「まずは食事! 食事が終わったら片付けが終わり次第にアイテムボックスに防具や道具を全て収納して、帯剣だけで騎乗して帝都に進軍する!」


「分かりました! 食事が終了後に剣以外は伯爵にもらったアイテムボックスに収納させます。カレナリエンさんとクロさんはどうしますか? 彼女達は馬を持っていませんよね?」


 アラちゃんからの疑問に亮二はニヤリと笑う闊達(かったつ)な表情で言い切った。


「俺は走っていくから大丈夫だ!」

帝都に向けて急いで向かいます!

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